文藝春秋 (2018年3月号) (月刊誌)

  • 文藝春秋 (2018年2月10日発売)
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Amazon.co.jp ・雑誌 / ISBN・EAN: 4910077010382

感想・レビュー・書評

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  • 「百年泥」

    村上龍にかぶれていた高校生のころに少しだけ好きだった、いまは好みから大幅にズレてしまって個人的にはもはや老害(龍おまえもな)と思っている山田詠美が芥川賞の講評で「このオバハン年季入っているなー」みたいなことを書いていたが、まさに同意。
    年季が入っている。しぶとい。したたか。食らいついてくる。スマートにガツガツしている。厚顔。面の皮が厚い。そんな読後感、つまりは素敵だった。
     
    「マジリア原理主義者」(共同体内部での価値観の塗り替えという要素を重視したい)としては頷きがたいが、確かにマジリア的なモチーフは多く、読んで面白いし、作品の好さに奏功しているし。
    さらっと飛翔者とか脱翼とかいった造語を登場させるあたり、確かに年季!

    個人的にはマジリア的要素よりも、「人魚姫の母恋い」に移るあたりがぐっときてしまった。
    マジリアが共同体の変容を世界に問いかける「開かれた小説」だとすれば、本作はむしろ読み進むにつれ「閉じていく小説」に変わっていく。もちろんいい意味で。(ずばり谷崎「母を恋うる記」も連想したりして。)
    それでいて陰に籠るのではなく、内側にスカッと風通しのよう晴れた空が見えるような読後感。これは不思議だし稀有だ。

    母恋に落とし込まなければ、もっとぐちゃぐちゃで意味のわからない長ーい小説になったことだろう。
    ネット上には「そうするべきだ、だって作家の手に余るほどしっちゃかめっちゃかにならなければ、混沌に、失礼だ」という感想があって、膝を打った。
    が、個人的には「混沌と品のよさが同居」したという奇跡のようなバランスを、評価したい。

    また広島の豪雨と土砂と冠水といった災害に直面しながら読んで、えもいわれぬ感想を持った。
    えもいわれない感触、考えたけれど詳述できない。

    @@@@@

    「おらおらでひとりいぐも」

    「夫の死を悲しんだ。が、喜んでいる自分もいた」という感じの芥川賞受賞コメントをしていたが、いってみればテーマはそれだけ。
    また描かれるのは、起きて通院して夫の墓に向かう、それだけ。
    それだけなのに豊かな読後感を得られるのは、何よりも文体の勝利だろう。
    一歩退いた視点から著者は桃子さんを見つめる。
    桃子さんは表面的にはクールな人物だが、内面にはあふれかえるほどの声が賑やかに犇めいている。
    (脱線するが、僕のおじさんは広島弁が嫌いで、標準語を喋る。でも心のバランスが崩れて、つまり理性が取り払われてしまったときには、おんどりゃあ何言うとるんじゃ、とバリバリ広島弁になってしまいギョッとする。他者や文化によりインプット、いやインプリントされた言葉遣いというものは、拭い去れないものなのだ。)
    柔毛突起という表現も面白い。

  • 毎年恒例の、芥川賞特集。1冊の雑誌にその年の芥川賞受賞作品が2本入っているので、おトクだし、それ以外の短編や有名作家たちのエッセイも面白い。
    芥川賞「百年泥」。作者の実体験に基づいて書かれた小説。インドの企業で日本語を教える羽目になった日本人女性が、文化の違いや生活に奮闘する話。アパートと会社の間の川が氾濫し、混とんとした泥の中からいろいろなものが浮かび上がる。感想は、芥川賞としてはかなりカジュアルで、シュールで読みやすいところが気に入った。また、日本語を教えるとか、インド人とか、個人的になじみがある題材だったので、興味深かった。さらりとジョークが盛り込まれている一方、リアルな人生を川の流れのように受け流しているクールな主人公のしたたかさも共感できる気がした。
    「おらはおらでひとりでいぐも」も良かった。夫を亡くし、子どもも独立した高齢女性が、日々自由を楽しみつつも孤独と向き合い、生きてきた人生、これからの人生に思いをはせ悶々とする。私も父を亡くしてから、母が孤独でないか気になっていることもあり、また将来自分が夫を亡くした場合どういう気持ちで生きていくのだろうと重ねながら読んだ。興味深かったのは、老いというのは負けることが決まっている戦い、というフレーズと、老いすらも未体験なので、どうなるか興味深いという主人公の思い。早く亡くなった夫は美化され、それでも尽くす人生で良かったのだろうかという疑問も残るようだ。
    芥川賞受賞作は良さが理解できない作品もあるが、今回の2本はどちらも読み甲斐があった。

  • 百年泥 石井遊佳
     この作品結構面白かった。インドで日本語教師をやっている人の話なのだが、ストーリーにどんどん引き込まれていき、一気読みした。さすが芥川賞作品文章が素晴らしい。
    おらおらでひとりいぐも 若竹千佐子
     この作品は自分にはあまりしっくりこなかった。

  • 世界の権力構造はめまぐるしく変化しており、世界史の大店牡蠣に立っている。今や冷戦終結後に確立された国際秩序は、あちこちで摩擦を起こしている。日本社会だけが微温湯。

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