ガイトナー回顧録 ―金融危機の真相 (日本経済新聞出版) [Kindle]

  • 日経BP (2015年8月21日発売)
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感想・レビュー・書評

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  • 余りにも長い。ですので、官僚、政治関連の方、あるいは金融関連の方以外にはあまりお勧めはできない。ハードカバーで厚さ4cmはあろうかという大作。正直言うと、もっとコンパクトにできると思います。


     当方は金融業界に従事しており、為政者の考えを知ることは業界の方向性を考える上で役に立つと考え購入しました。この夏休みに読んでみようかと積読の山を取り崩して読み始めたものの、読み終わるのに一か月ほどかかりました。回顧録なのでフィクションほどの起伏もなく、眠気を覚えることしばしば。妻はこの本を『聖書』と呼んでいた程です(ビジネスホテルに備え付けてある聖書だってこんなに厚くはないが)。

     さて内容ですが、上に記した通り金融関連の方には参考になると思います。作品の中心はリーマンショック前後の米国であり、リーマンの破綻やAIGの息切れと共にクレジットシュリンクが起き、金が流れなくなった米国金融市場の話です。ガイトナーは財務長官としてFRBや議会と協力・対峙しつつ、金融機関に金を注入し、取り付け騒ぎやインフラとしての金融システムの破綻を防いだ。

     政策の賛否はさておき、リーマンショック時のこうした流動性の枯渇を見るにつけ、手元資金をしっかり持っておかなければ金融機関でもあっという間につぶれてしまうということを実感します。レバレッジの怖さはFXや信用取引で相場を張っているときにマーケットが逆に動けば容易に体験できますが、取引主体が金融機関で連鎖反応を起こしたら、それはもう恐怖です。システムとして破綻しますし、国の信用も落ちます。自己資本規制やバーゼル3がなぜ大切なのかちょっとわかった気がします。

     次に注目したいのは、自由の国アメリカの困難さです。
     本を読む限りはガイトナーが念頭に置いたのはあくまで金融システムの維持(連鎖倒産や過剰反応および取り付け騒ぎ)であり、金という血流を流すことです。ところが当時議会は共和党主導であり、一般的に減税志向の保守ですので、大切な血税使って強欲金融業者を手助けする(かのような)ガイトナーの政策は攻撃の的になってしまいました。
     一旦炎上すると、マスコミも含めてあることないこと報道されるし、家族もそれに巻き込まれる。個人的な印象ですが、米国って案外息苦しいのだなあと感じてしまいました。国や正義のために業務に従事していても多くの誤った報道によってイメージが固定化されてゆく怖さを感じてしまいました。
     同様に民主党のオバマ政権と共和党の議会とのねじれ状態から、オバマ政権としても『取引』として不本意な政策を一部余儀なくされたことが書いてありました。このあたりのガイトナーのフラストレーションは非常に良く描けており、私自身読むだけで疲れてきてしまった(社内政治もこうやってとんがった政策が凡庸なものになりますね。民主政治の欠点でしょうか)。

    ・・・

     あらためて述べますが、決してつまらない本ではありません。それなりに面白いです。ただ、内容が政治と金融に偏っていますので、それに関連した方であればこの長さに耐えて読書してみても良いのではないでしょうか。それ以外の方には、、、、たぶんもっと素敵な本があると思います笑

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