「砲兵」から見た世界大戦: ――機動戦は戦いを変えたか (WW2セレクト) [Kindle]

  • パンダ・パブリッシング (2018年1月31日発売)
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みんなの感想まとめ

戦争における砲兵の役割を深く掘り下げた本書は、特に第一次世界大戦から第二次世界大戦にかけての戦闘の変遷を詳細に分析しています。著者は、戦車と自走砲の機能や運用の曖昧さに焦点を当て、設計思想と実際の戦場...

感想・レビュー・書評

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  • 古代からWWIIまでの砲兵に焦点をあてた良作。特に第一次世界大戦前後の戦いのありようがよくわかる。結局、火力と物量なのよね。できれば現代戦まで踏み込んで欲しかった。

  •  著者の経歴があまりよくわかりませんが、本書はややマニアックな人向けのようで、「言うまでもなく~~だ」と書かれてるけど全然言うまでもなくないだろという部分が頻出する。自分の勉強不足かと思ったら、割と特殊な人々向けに書いた本だと明言されている箇所があったので納得した。

     機動戦とは要するに戦車による進撃で、大砲+歩兵という旧来の進軍に比べて高速であるため、相手の対処が間に合わず一気呵成に攻め込む作戦だ。第一次世界大戦でイギリスが初めて実戦投入して以降各国に普及し、陸戦の主役になった戦車だが、実際はどのくらい戦争の姿を変えたかを検証している。

     戦車とよく似た兵器に自走砲がある。一般的に戦車の仕事は敵の防衛戦を突破して殴り込みをかけることで、自走砲の仕事は自陣内から遠方の敵陣に大砲を撃ち込むことだと考えられる。そのため戦車の特徴は分厚い装甲で、自走砲の特徴は長射程の大砲だ。

     しかし本書の分析によると、実際の戦場で両者の区別は意外と曖昧になっていたことが分かる。戦車が砲兵の代わりを務めたり、自走砲が突撃砲となることも珍しくなかったようだ。こういう、設計思想と運用がずれていることは兵器以外でもしばしばあるだろう。

     時は変わって第2次大戦終結から半世紀以上を経た現在、今度はミサイルという新兵器が生まれている。昔ながらの砲兵の役割は恐らくミサイルに取って代わられていると思う。しかし、戦訓に学んで戦略を進歩させていく姿勢は常に見習うべきものがあると感じられた。

  • マニアしかわからない本。
    「ツィタデレ作戦」っていきなり出てきても普通の人はわからないよねえ。

  • ロシアによるウクライナ侵攻で砲兵の役割があまり報道されないため、この分野の知識の空白を埋めるために購読。

    やはり砲兵について知らないと戦争の知識は大きな抜けが生じる。

    改めて認識したのは、戦車はPAK(対戦車砲)にかなり多く撃破される。戦車が活躍できるのは砲兵がPAKを潰す段取りができているから。これは今回の戦争でキーウ近郊に迫ったロシアの戦車が携帯型対戦車ミサイルに撃破されたことにも通じる。

    ロシアとウクライナの大砲の数的な差異はウクライナにとってのこの戦争を困難にしている。長距離精密砲撃が可能なHIMERSの意義は大きい。しかしそれだけでは勝てない。今の時点で大砲を、戦車をとウクライナが求めるのも軍事的な合理性による。

    もちろんこういった情報は日本の防衛にも有用。

  • 砲兵の視点から第一次大戦と第二次大戦における各国の取組を分析。筆者の言う通り、砲兵はドラマでは見えない存在であり、陸戦だと戦車、白兵主義、航空戦力と一体となった電撃戦などに目が行きがちで砲兵の役割がイマイチ理解出来てなかったが、本書はそこに光を当てている。

    ナポレオンの時代には陸戦の王者だった砲兵は、小銃・機関銃の発展と機動力のなさから19世紀後半には陸戦の主役では無くなるが、第一次大戦の塹壕戦において、敵の防御を突破する手段として弾幕射撃の様々な方策が発展(リフティングバラージ、パイルアップバラージ、クリーピングバラージ)し、航空偵察と連携して、精度も向上し、縦深制圧の手法がドイツを皮切りに編み出されて頂点に。

    しかし、欧州諸国は敗戦や予算減で、米は知見を会得する前に戦争が終結し、戦後はそのノウハウが廃れ、逆に少ない火力を柔軟に運用する機動戦の発想に行き着く。火力重視を唯一維持したのがソ連。

    第二次大戦では、ドイツが電撃戦で初戦を制したが、それを止めるための火力重視が英国で見直され、機動運用のための柔軟な組織編成も装備も整って行った。ドイツも追随。東部戦線では、最初の電撃戦から立ち直ったソ連は圧倒的な砲兵火力により、ドイツ軍を着実に撃破して行った。アメリカは第一次大戦の立ち遅れからこの波に乗り遅れており、寧ろ航空戦力を近接支援に最大限活用することで砲兵の代替とした。ソ連とアメリカの砲兵の戦力やドクトリンには格段の差があった。

    というような内容。ややマニアックな分野なるも目からウロコの読後感。著者が最後に載せている参考文献はほぼ英語で、国内で研究されていない分野ということがわかる。

    ※ 2026.4.26再読。どこかで読んだことあると思えばすでに読んでおり、過去のコメントに本書の内容としては追加は無い。しかし、その後、ウクライナ戦争によって砲兵の役割がハイライトされる。第一次大戦の昔から、平和になると真っ先に縮減されるが、戦時になると光を取り戻す。本書にもある通り、両大戦において砲兵の集中運用こそが戦場の死命を制した。敗色濃厚な硫黄島戦や沖縄戦でも砲兵の活躍が目立つ。一旦失われた知見は中々戻らないし、第一次大戦から十分な学びを得る暇がなかったアメリカは第二次大戦での運用に苦労する。ドローンやAIの時代ではあるが、それらと砲兵戦力の組み合わせが重要なのだろう。

  • ハイライト部分

    ・19 世紀前半まで、野戦の戦死傷者の約半分は砲兵の射撃によって発生していたと言われていますから、まさに砲兵は陸戦の王者です。
    ・十分に築城された要塞の攻防戦でもない限り、歩兵は大砲より強かったということです。
    ・当時の戦術家たちが頭を悩ませていたのは強力な武器である大砲をどうやって決戦場の最重要地点に持ち込むか、という問題です。
    ・1.馬匹牽引で機動力を得るために軽量小口径砲となる 2 小口径のために威力が不足し、大量集中が求められる 3 射撃精度の低さから、集中砲撃は近距離で行われる 4 直接照準の視界確保のためにも近距離射撃傾向が増進する 5 その結果、長射程ライフル式歩兵銃の一斉射撃が野砲の脅威となる
    ・間接射撃とは敵が見渡せる位置からの情報を得て、直接に敵を狙えない位置にある砲兵が砲撃を行うことです。
    ・第一次世界大戦で生まれた「敵の肉迫攻撃に対して防衛線前方に無照準で全火力を注ぎ込む」というイギリス陸軍の通称SOS射撃は、一般的には「Final Protect Fire(最終防護射撃)」と呼ばれています。    
    ・それは第一次世界大戦とはいえ、航空部隊が関与しなければ、陸戦であまり精密な戦術を組み立てることができず、移動弾幕射撃もろくに実施できないことです。
    ・塹壕陣地を突破する本来の目的は「歩兵を機動戦に復帰させること」にあります。塹壕陣地による膠着状況は当時の歩兵戦術が生んだものではなく、歩兵火力だけが他の兵科を追い抜いて急速に強大になったことで生まれた予想外の事態です。
    ・カンブレで突破が成功しかけたのは戦車があったからではなく、砲兵戦術が縦深制圧主体に改革されたからで、戦車の存在はその枠組みの一部でしかありません。本当に注目すべきは、この戦いで初めて砲兵が歩兵の直接支援を離れて「縦深制圧に独自に動く、独立した存在」へと踏み出したことなのです。
    ・それまでの前線防御施設への破壊主義から、「敵軍の指揮統制通信能力を喪失させたうえで、濃密な集中射撃によって敵前線を無力化する」というブルフミュラーの打ち立てた概念は毒ガスの使用が禁じられた第一次大戦後においても大いに参考とされたのです。
    ・砲兵集中による大規模火力戦という「大殺戮を伴う汚い手段」に頼らずとも、装甲機動戦という新しい戦争のやり方で「より早く、きれいに勝つ」ことができるという願望に近い観測が野戦砲兵とその支援組織を滅ぼしてしまったのです。
    ・アフリカ軍団の精鋭部隊がエルアラメインを突破できなかった最大の理由は、言うまでもなく火力の欠落です。補給線が伸びきったとか、ロンメルが兵站を無視したとか、いろいろな説明がなされますが、どんなに補給が順調でも火力に劣れば陣地線は突破できないのです。
    ・アメリカ軍に近代的砲兵戦術を教えたのはフランス軍で、その装備もほとんどがフランス製です。
    ・この頃は連合軍でもドイツ軍でも電撃戦時代とは「機動」と「火力」の地位が逆転し、すぐれた機動が火力の優位を覆すという軍人にとってロマンチックな発想は過去のものとして捨て去られています。

  • 火力戦について論じた陸戦書(2018/03/01発行、1700E)。

    書かれている内容にかなり疑問や怪しさが感じられる本です。 本書、著者の主張を裏付ける引用文献や参考文献が全く示されておらず、機動戦について少しでも知識が有る或いは関心のある方であれば、どうかと思う内容です。
    著者が主張している説の根拠と成る戦例すら殆ど示されていないので、著者の誤認や思い込みの多いかなり怪しい内容のように感じました。

    興味深い内容を期待していましたが、個人的には大外れの本だったのは残念です。

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著者プロフィール

古峰文三(こみね・ぶんぞう)

学研プラス「歴史群像」、潮書房光人新社「丸」、イカロス出版「ミリタリー・クラシックス」などで兵器開発史について執筆、原資料の探索をもとに工業的視点から従来にない解説を行う。

「2018年 『「砲兵」から見た世界大戦』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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