羊と鋼の森 (文春文庫) [Kindle]

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  • 文藝春秋
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感想・レビュー・書評

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  • じっくりとこの世界に浸っていたくて、ゆっくりと読みたくなる。一気読みがもったいない、何度も繰り返し読みたい小説のひとつ。

    また、ちゃんと丁寧に生きよう。美しいものを美しいと立ち止まって感じられるようにしようと改めて思った。今の時代簡単なようでそれは難しく、大切なことではと思う。

    宮下奈都さんはこの小説が初めてだったが、今後じっくりと他の作品も読みたいと思えた。
    心の栄養がもらえる1冊。


  • はじめてこの作家さんの作品を読んだ。
    本屋大賞をたとったということもだが、本のタイトルに異様な程惹かれた。

    読み始めると、音も風景を交えた語り口で、なんとも神秘的な印象だった。あまり読んだことがないタイプの文体。

    特に主人公のピアノと職場以外の描写がほとんどない所もこの作品の味だった。

    本の中で、森をはじめとした自然を感じられたのは新鮮だった。

  • いい作品だった。
    本屋大賞に少し偏見を持っていたが、読者賞も合わせて受賞しているとのこと。これから迷ったときは本屋大賞にしようかな。

    高校時代に聞いた音に魅せられてピアノの調律師になった男の子、成長してからの話もあるから青年の話。

    うちでも娘が嫁に行くまでピアノを習っていたので調律してもらうことがあった。息子のバイオリンは途中で止めてしまったが、生徒のコンサートの前は、ずらっと並べられたヴァイオリンを何人かの先生で調律していた。この時、親まで緊張するがいいろんな音が交じり合った雰囲気はとても好きだった。

    コンサートホールの演奏会で指揮者を待つ間に団員の方が持っている楽器を鳴らしてみている、それぞれの音が混じってこれから始まるのがなぁと期待でわくわくする。

    音の世界でも受ける人によって見たり感じたりするところは違うだろうが、この主人公の外村君は初めて体育館で大きなグランドピアノが蓋(彼は翼に見えた)を広げ、調律師がポンとならした音が、育った森の音に聞こえた。深い夜の音、梢を渡る風の音、木のざわめき葉づれ、踏んでいく積もった枯葉の音。彼は調教が終わるまで二時間我を忘れて聞き入ってしまった。

    貧しい山のふもとの家で育ち裏の深い山の音を聞いて育った、そんな記憶が音になって聞こえた。彼は決心して調律の専門学校を出て楽器店に就職する。

    名人というような技で調律をする板鳥の補助を始める。同僚には個性的な面々がいて、それぞれ自分の術を持っている。理解できなかった先輩の技術が分かり始める。

    ピアニストの音が清涼に美しく聞こえるよう。ピアノが持っている音がよりよく響くよう調教したいと思う。
    それぞれ作られた時代もおかれた条件も違う。
    羊の毛をフェルト状にしたハンマーや鋼の弦の張り具合。どうしたら奏者も聴衆も望む音が出るのか。
    どうすればタッチにあうようペダルや鍵盤が整えられるのか。

    演奏する側の話は時々目にするが、調律の技術者が彼らの望む音に対する情熱は、常に裏方のもので、調律の前とあとをピアニスト以外は比べることは出来ない。音を作り演奏すると言う行為や、音の響きを聞き分けて感じる奥深い世界がとても多彩で優しい言葉を使って綴られている。

    古い古いピアノをよみがえらすところ。大きなコンサートホールの名演奏家が弾くピアノ演奏の前に調律し、本番はジット耳を澄ませる調律師という仕事が少し理解できた。


    調律師は呼ばれてなくては行くことが出来ないが、たまたま関わった双子とのエピソードが面白い。
    でも、いわしてもらえば、この当たりから次第に感傷的な記述が増えてはいないだろうか。いい話で感動的だが、著者が感傷的過ぎるとすこし重く感じてしまう。

    でも、でもはじめて読んだ宮下さんという作家が好きになった、これまでにかかれた評判のいい作品を読んでみたい。嬉しい人を見つけた。

  • 初めて経験したグローバリゼーションと貧困、9.11は忘れられない。その後、初めて経験した国際会議でのスティグリッツとフォーリンアフェアーズ、ファイナンシャルタイムズ、どれも忘れられない。

    一度、セールスエンジニアを志して、小さな会社の門を叩いたことがある。その当時は馬鹿にして3ヶ月でやめてしまったが、森に入るのが怖かっただけなのかもしれない。その時にもらったメジャー、どこに行っってしまったのだろうか。

  • Kindle Unlimitedで読みました。

    映画化されていることは、知っていましたが、キャスティングをよく知らないまま、主人公の外村は、嵐の櫻井翔さんだと勝手に思い込み、重ね合わせながら読みました。和音、由仁の双子の姉妹のキャスティングは、読み終わっても思いつきませんでした。とてもかわいらしい双子なんだろうなぁ。

    恋愛小説ではなかったけど、随所で泣けました。
    夢を追い求める人、夢をあきらめた人、新しい夢を見つけた人。

    我が家にもピアノがあり、定期的に調律してもらっています。
    調律師は、女性。
    どんな経緯や、思いで調律師になられたのか。
    調律の作業は見たことはありませんが、こんな風に音作りをしていただけているのだと思って、ありがたく思いました。

    子供のころ、学校の近くに文化ホールができて、そこで開かれたクラシックコンサートによく行きました。音楽の成績が良かったわけでなく、クラシックに詳しかったわけでもなく、むしろ、クラシック音楽は、時代遅れの退屈なものと思っていたのに、人と違うことをしてみたいという思いだけで、コンサート会場に足を運んでいました。でも、当時、まだ新人だった清水和音さんのピアノリサイタルを聞きに行ったときには、クラシック音楽とはなんと激しく、情熱的で、エキサイティングなんだろうと感動したことを思い出しました。

    また、クラシックのコンサートに行ってみたいと思いました。
    ピアノや楽器の音の聞こえ方、聞き方が変わるのだろうなと思います。

  • 穏やかな話であるが、読み進めていくと引き込まれてくる。調律師という馴染みのない職業についても興味が湧いた

  •  ピアノはハンマー(フェルトが付いている)が弦(鋼)を打ち、弦についている駒がその振動を響板に伝えて音を鳴らす。それが羊(フェルト)と鋼の正体。つまりは憧れてピアノの調律師になった男の子が、自分の才能のなさに苦しみながらコツコツと努力を積み、演奏者の信頼を得ていく過程を、手探りで森を歩くこととなぞらえて付けられたタイトル。双子の女の子が奏でる美しいピアノの音色と、森の中で聞こえる鳥や水、風の音がリンクして、映像と音がリアルに入ってくる。「蜂蜜と遠雷」にしろ、「船に乗れ!」にしろ良質の小説は文字から音楽が聞こえてくる。
     プロフェッショナルはいい加減な気持ちで仕事に向き合ってはいけないと、背筋が伸びるお話です。

  • 中学生になった息子に読ませようかと思って再読。やっぱりいい小説だ。主人公外村の成長物語を通して、生きていく上で肩肘張りすぎずに、無骨に頑張ることの大切さを知って欲しい。外村が調律師という職に、ピアノという存在に出合ったように、息子にもある日、想像もしない、出来ない出合いがあって欲しいし、その出合いを見逃さないで欲しい。才能なんか大事じゃないんだと知って欲しい。ぼくを含めて、世の中のほとんどの人が、才能とは関係なく、それでも一生懸命なのだから。

  • 情景がうかぶ、音もうかぶ

    出逢いとはなんて大切なんだろう

  • ピアノの調律師の小説。成長の物語。
    とても心洗われる美しい物語。
    題名からファンタスティックな印象で入っていった。
    あれっ違うかなって進んでいったけど
    やっぱりピュアなロマンティックなファンタスティックな小説だった。
    鍵盤が88あって星座の数と同じとか。「才能ってのはさ、ものすごく好きだって気持ちなんじゃないかな。どんなことがあっても、そこから離れられない執念とか、闘志とか、そういうものと似ている何か。」この言葉はものすごく納得。
    「才能とか、素質とか、考えないよな。考えたってしかたないんだから。ただやるだけ」深く心に残った。

    この物語のキーパーソンの双子の姉妹の1人(主人公の外村さんが勤める江藤楽器のお得意様である)がピアニストになると決意したときの言葉も心に響いた。「ピアニストで食べていくのはたいへんよ」といわれて返す言葉が「大丈夫。私はピアノを食べて生きていくから」ピアノが私の栄養、エネルギー源。ピアノを弾かずに生きていけないという覚悟の言葉なんだろうと思った。

    主人公の外村さんを解説にこう記してあった。
    『物静かで地味だが、他者とのコミュニケーションに困る性格ではない。知りたいことはきちんと聞き、自分の考えは曲げずに話す。わからないことは、わからないと言える。自分の心が感じたことを、素直に頑固に信じ通せる。無彩色に見えるのに、柔軟で強烈な自我の持ち主だ。』
    と。

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著者プロフィール

宮下 奈都(みやした なつ)
1967年福井県生まれ。上智大学卒業。2004年、「静かな雨」で文學界新人賞に入選し、デビュー。日常に起こる感情の揺れを繊細で瑞々しい筆致で描きだす作品で知られる。『スコーレNO.4』が書店員から熱烈な支持を集め、注目を浴びる。代表作に、2016年本屋大賞、ブランチブックアワード2015大賞、「キノベス!2016」などを受賞した『羊と鋼の森』があり、2018年6月映画化。『静かな雨』が2020年新春映画化が決まり、2019年6月6日文庫化される。ほか、福井からトムラウシに移り住んでいた頃の日々を描いた『神さまたちの遊ぶ庭』や、福井での身辺雑記や本屋大賞受賞前後のエピソードなどを描いた『緑の庭で寝ころんで』がある。

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