ファンベース ──支持され、愛され、長く売れ続けるために (ちくま新書) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • マーケティングの本で、若干仕事からみ。
    全顧客のうち上位2割が売上の8割を占める、という「パレートの法則」というのがあるらしい。本書はマス・マーケティングが効きにくくなった現状で、大事にしなければならないのはその他大勢のお客さんではなく、ファンである、という主張と、ファンを大切に育てる方法について論じた本だ。長くマーケティングの世界に身をおいた著者だけに例示が豊富で、説得力がある。その一方で、面倒で、手間がかかり、そのくせ短期的/単体のマーケティング施策としては目に見える効果が計上しにくいファンベース施策は、予算表を作っているマネージャ層には受けが悪いだろうな、とも思う。実際、そういう可能性のあるプロダクトが企画段階で頓挫したり、中止に追い込まれた例をいくつも見てきた。
    ともあれ、短期的な売上を度外視して、ファンに喜んでもらえる製品/サービスを作るのは楽しいだろうな、と思いつつ読んでいたら、最後のほうで著者で似たようなことを言い出してちょっと笑ってしまった。作っている方も楽しい、買うほうも楽しい、しかも儲かるなら言うこと無いよな。

    成功例は豊富で説得力もあるのだけれど、じゃあなんでみんなそうしないのだろう? 
    本書に限った話ではないが、成功例は数あれど、失敗例が取り上げられることは少ない。マネージャがアホでファンベース施策を理解できず、決断しなかったから、というのが「失敗」の10割を占めているのだろうか? マネージャはGOを出したがやり方がうまくなかった例、そもそもファンベース施策が通用しない/ほかにもっと効果的な施策がある例があるんじゃないだろうか? まあ、そういうことを書くと本としてのインパクトは薄れて売れにくくなるんだろうけど、メリットとリスクの片方だけを天秤にかけて決断するというのも、なかなか難しいことではある。

  • ブログのファンを増やしたいと手に取った本。
    企業のファンづくりから、
    ブログファンづくりへと
    頭の中で変換して読むと
    とても参考になった。

    そして、たどり着いた最終章。
    「ファンベースを楽しむ」

    このラストに胸が熱くなった。
    ブログを、ファンづくりを、
    人生を楽しもう。
    そんな風に思えた。

  • ファンベースとは:
    企業や商品の支持者であるファンを大切にし、中長期を視野に売上や価値の上昇を狙うという考え方

  • 【ファンベース・マーケティング】

    1.今日、ファンベースが必要な理由は、次の3 つである。
    * ファンは売上の大半を支え、伸ばしてくれるから。
    * 人口の急減や高齢者の増加など、時代的・社会的にファンを大切にすることがより重要となってきたから。
    * ファンが新たなファンを作ってくれるから。

    2.ファンの支持を強くするには、ファンの「共感」「愛着」「信頼」の3 つを、地道に強くしていくことが重要である。
    * 共感を強くする:ファン・ミーティングを開いたりして、ファンの言葉を聞き、「共感ポイント」を知る。この共感ポイントを強化し、元々大切にしている価値を高める。
    * 愛着を強くする:企業の創業ストーリーや商品の開発ストーリーなどを、ファンに伝えるようにする。
    * 信頼を強くする:まずは、企業が「信頼されない要素」を1 つずつ消していく。さらに、研究開発や製造工程などの「ちゃんとしている」部分を見せるようにする。

    3.ファンより支持が強い「コアファン」を作るには、「熱狂」「無二」「応援」という3 つのアップグレード施策が必要だ。これは、共感・愛着・信頼をさらに強化するものである。
    * 共感 → 価値自体をもっとアップさせる → 熱狂
    * 愛着 → もっと他に代えがたいものにする → 無二
    * 信頼 → 評価・評判をもっとアップさせる → 応援

    4.検索しても、自分のツボにはまるものなど出てこない。でも、友人が薦めるなら話は別だ。なぜなら、友人とは「価値観が近い人」だからである。価値観が近い友人がツボにはまるコンテンツは、自分もツボにはまる可能性が高い。特に注目したいのが「類友」である。類は友を呼ぶ、の類友だ。人は、類友=「強いつながり」の人( 5~15 人程度)と、そこに準ずる「弱いつながり」の人( 50~500 人程度)とつながって生きている。あなたの周りには必ず類友がいる。彼ら彼女らは同類だから話もしやすく趣味も合う。だから、ある商品を類友が「自分の言葉 」(本音の言葉)で褒めていたら、心を動かされる。

    5.自社が大切にする価値とは何なのか、今ひとつ明確化されていない企業も多い。そんな企業の場合、ファンの言葉を傾聴することをお薦めしたい。ファンの言葉の中に、企業が気づいていない共感ポイントがたくさん隠されている。ではどうやって聞くかというと、ファンを集めて話し合う、ファン・ミーティングを開くのだ。同好の士が集まると盛り上がる。それは、一般人とはできない「マニアックな話=偏愛な話」ができ、「わかる~! 私もそこが好き!」などと、お互い発見しあうからだ。この「偏愛」と「発見」が重要だ。ここを理解しないと、商品リニューアルなどで、せっかくファンが支持していた偏愛ポイントを改悪し、ファンを失ったりする。

    6.実は、ファンは不安に苛まれている。「この商品を友人に薦めても大丈夫か」など、意外と自信がない。なので、まずファンであることに自信を持ってもらわねばならない。それにはまず「他のファンのオーガニックな言葉を読むこと」だ。そうすると、彼らは「ファンでよかったんだ」と自信を持ち、友人に胸を張って薦めるようになる

    7.生活者の課題を解決するためにどれだけの想いがあったか、どれだけの人がそのプロジェクトに携わったのか。そんなストーリーが、ファンに愛着という感情を起こさせる。つまり、企業の創業ストーリー、商品の開発ストーリーなどは愛着を強くする重要なコンテンツであり、それらにアクセスしやすくしておくことは重要だ。また、ファンが気軽に参加できる場を作り、想いを共有し、企業や商品ブランドの体験を増やしていくことは、確実に愛着を強くする。それは、リアルなファン・イベントなどでもいいが、参加人数に限りがあり、手間もかかる。よって、ネット上にファン・コミュニティを作るとよい。

    8.研究開発や製造工程などを、きちんとわかりやすく臨場感をもって見せている企業は少ない。それは信頼を得る大切な機会を失っているに等しい。研究所の開発現場も工場の製造現場も、「感動ポイントだらけ」である。もっと開示して丁寧に紹介すべきだ。それが「この企業の商品は間違いがない」という信頼に直結する。

  • ゲームを作っていた時に、ビジネススキームとの乖離に苦しみ、ふと目にしたこの本を読むなどした。
    コンシューマゲームとアプリゲームの両方の開発を経験し、さらにその両方のメリデメの狭間で答えが出ないときに、素朴な原点とそれがビジネスとして成り立つ姿を目指しても良いのだと思えた。

  • 技術がコモディティ化し、コンテンツが溢れ、個人のライフステージの変化が減る社会で、いかに差別化戦略・継続的な利益獲得のためにファンが重要化を理解できた

  • 勉強になった、言われてみれば自分が値段やお得とかではなく好きで買っているものは多々あり消費者として理解できる内容だった。生産者としてはもうちょい色々読んだり勉強しないと具体的にイメージできないなと思った。

  • 物を作って売っている会社で働いているが、私自身は作っても売ってもいないのに、なんで買ったのか思い出せない。たぶんkindleセールをしていたから…。

  • 私のようなクラウドサービスを事業に携わっている身としては、骨身にしみるようなコンセプト提示。本書が出版されてから5年が経過しているが、この動きの速い業界で、さらに重みと輝きを増すタイトルだと感じる。
    業界的には設備産業のような規模を追求する事業構造であるが、個々のユーザの支援という相反する活動を如何に効率よく、かつ、温かみを持って実施するかが、肝になる。

  • ファンベース 支持され、愛され、長く続けるために

    ファンベースとは、ファンを大切にし、ファンをベースにして(ベースには、土台、支持母体などの意味がある)、中長期的に売り上げや価値を上げていく考え方だ。

    あなた自身も身の回りでいくつか思い当たるのではないだろうか。日用品でも食料品でもファッションでもスポーツ用品でもアプリでもいい。他のブランドや商品が数多くある中、強く惹かれ、愛用し、思わず友人に勧めたブランドや商品があるはずだ。それは支持だ。ブランドや商品が提供してくれている価値を支持して、購入しているのである。

    そういう意味において、僕は「ファン=支持者」だと思っている。 もう少し言うと、ファンとは「企業やブランド、商品が大切にしている『価値』を支持している人」と、この本では定義したい。

    ・企業やブランド、商品が大切にしている価値にグッとくる人、その価値にわくわくし喜ぶ人、その価値を支持し友人に勧める人。それが「ファン」である。ファンベースではそういう「支持者」を大切にしていく。

    ■少数のファンが売上の大半を支えている
    ・つまり、今いるファンを大切にして彼らのライフタイムバリューを上げていくことは、収益の安定・成長に直結する。
    ・繰り返し購入してくれるファンこそが、実は売上を支える大黒柱なのだ。
    ・そんな中、今まで売上に効果を上げてきた「キャンペーン」の実効性も薄れてきた。
    ・キャンペーンとは、目的達成のために一定期間かけて行われる宣伝・販促活動のこと。2週間のプレゼントキャンペーンや値下げキャンペーンから、タレントを起用して数ヶ月単位で大々的に展開するものまで色々あり、それを繰り返していくことが売上を伸ばす王道と考える企業も多かった。この本では数年単位の「中長期施策」である「ファンベース」に対して、「短期施策」と位置づけている。その短期キャンペーン施策の力が急速に失われてきているのが今なのである。
    ・世の中に情報も商品もエンターテインメントも溢れかえり過ぎていて、キャンペーンがとても届きにくくなった。
    ・そんな過酷な環境下でたまたまキャンペーンが話題になっても、一過性かつ瞬間風速的で、あっという間に忘れ去られてしまう。
    ・キャンペーンなどの短期施策はもちろん、広報リリースやパブリシティ、バズ狙いのコンテンツ、スポット的なデジタル広告、店頭イベントなどの「単発施策」は特に、話題化するのがどんどん困難になってきている。苦労工夫の末に話題になったとしても、数時間から数日で人々の記憶から消え去ってしまうのだ。

    ■生活者の課題を解決し、生活者に笑顔になってもらうこと
    ・生活者と直接的に取引しない B2B 企業だとしても、相手先企業の様々な課題を解決することで、間接的に生活者の課題を解決し笑顔になってもらう。つまり、企業の本業とは「生活者の課題解決」であり「笑顔を作ること」なのだ。
    ・そういう意味において、商品が長く安定して売れ続けることは、企業ができる「最大の社会貢献」なのである。ファンベースは、その「長く安定して売れ続けること」を可能にする。
    ・いったい世の中に、自分たちが愛している商品の価値を支持してくれる「ファン」を喜ばすことほど、楽しい仕事が他にあるだろうか。

    ■話題になったキャンペーンも、効果が一過性で瞬間風速的
    ・イベントは盛り上がりました。スペシャルサイトにもアクセスが集まりました。ただその効果がすぐ切れちゃうと言うか、あまり長持ちしないんです。他社も同じようなイベントを続々と仕掛けてくるし・・・。
    ・テレビの人気経済番組に好意的に取り上げられ、店舗にお客が押し寄せました。やっぱりこの時代でもテレビは効くんですね。でも一瞬でした。喜んだのもつかの間、みるみる売り上げは元に戻っちゃって・・・。
    ・会員制ビジネスで、新規加入3ヶ月0円キャンペーンを打ったらそれなりに効きました。でも無料期間が終わったら次々退会します。定着してくれません。一体どうすれば・・・。

    ■瞬間的なリーチは意味がない
    ・モノやサービスを売るために、業界全体が『リーチ広告一辺倒』になっていることに危機感を持っています。リーチして認知を獲得した後にどうするのか。どうやってその気持ちを継続させ、ファンにしていくのか。どうやってファンたちのライフタイムバリューを上げていくのか。それらをあらかじめ構築した上でリーチしないと意味がないと思うのです。

    ■キャンペーンは、つなげて「資産化」しないと、もったいない!
    ・予算も潤沢に持っている企業なら、キャンペーンを次から次へと繰り出して、生活者が忘れる暇もない状況にすることが可能かもしれない。でも、予算もそれほどかけられない企業は、なんとか絞り出した予算で年数回のキャンペーンや単発施策を打ち、予算に見合う効果をあげなければならないわけで。
    ・そのキャンペーンや単発施策で興味や好意を持ってくれた人を、「ファン」にして、興味や好意を資産化して行った方が良くないですか?

    ■短期キャンペーン施策や単発施策と、中長期ファンベース施策をつなげて資産化していく
    ・「必要な短期・単発施策」を上手に活かすことが重要だ。どうせやることになるのなら、一過性かつ瞬間風速的に終わらせるのではなく、その効果を資産化していくべきである。


    ■ファンベースが必然な三つの理由
    1.ファンは売上の大半を支え、伸ばしてくれるから
    2.時代的・社会的にファンを大切することがより重要になってきたから
    3.ファンが新たなファンを作ってくれるから

    ■今いるファンを大切にし、LTVを上げていくこと
    ・コアファンと濃密に付き合うことによって。彼らの気持ちが離れるのを防ぎ、収益を安定させようとしている。

    ■LTVを5.34倍増やしたソニーデジタル一眼カメラ「α」
    ・ソニーが一番大切なプロセスと位置付けているのが「商品購入後」だそうである。つまり、買った後にいかにLTVを上げるかを重視しているということだ。
    ・彼らは、顧客が「α」を購入した後に「P3」と呼ばれる CRM アクション(購入者に3ヶ月に3回以上コンタクトする顧客施策)をして、購入した商品を使いこなすための情報やサポートを提供している。
    ・ソニーマーケティング代表取締役の河野弘さんは、こう語っている。「商品の使用頻度を上げることが、周辺商品購入というクロスセル、上位機種購入というアップセルにつながると考えている。例えば「α」では、高度なユーザーから初心者ユーザーまでレベルに応じた多様なコンテンツをメールで配信しており、 Web サイトへの誘引実は、一般的なメルマガが1.3%程度なのに対し、 P3メールは32%を示している。」
    ・ソニーは、「すでに購入してくれた既存顧客」とのコミュニケーションをとるために、コンテンツを提供して、まずは購入後の接触を増やしているのである。
    ・その上で、既存顧客同士のコミュニケーションも促進している。写真の投稿や共有、コミュニティの運営、イベントやコンテストの案内、テクニックの指導など、丁寧に顧客との付き合いを深めていっているのである。
    ・また、ソニーはリアル拠点(ソニーストア)を大事にし、使い方講座、テーマ別撮影講座、お出かけ撮影体験会、新商品先行体験会などを開いている。オンラインでの繋がりをきっかけに、体験会で実際に会って交流するファンも多いという。
    ・担当の松本さんはこう言う。「オンラインのコミュニケーションに力点が置かれる中で、わざわざソニーストアに足を運んで来てくださるファンは、 SONY にとって一番熱いファンであり、特に大事にしています」
    ・このような施策によって、顧客はファンとなりコアファンとなっていく。写真の投稿ができる「α Cafe」には、ファンから毎月1000枚を超える投稿があり、累計127万枚の写真がアップされているそうである。その結果として好感度もアップし、LTVが上がっていく。
    ・ファンが購入後に使った金額は、購入時点を1として、 P3試作の段階で3.85。「α Cafe」に誘引した段階で5.24。そしてリアルな体験会に来るところまでコミュニケーションを深めるとLTVは5.34まで上がったそうである。カメラが高額商品であることを考えると凄い効果だ。

    ■類友は最強メディア
    ・「ウェブはグループで進化する(ポールアダムス著)」では「類は友を呼ぶ」についてこう書いている。「ソーシャルウェブの登場により、多種多様な人々と交流することが可能になった」という考え方を抱いてしまうかもしれない。しかし実際は、私たちは自分に似た人々としか交流していない。これは「ホモフィリー(同類を好む傾向)」と呼ばれ、様々な角度から研究されてきた現象であり、ソーシャルネットワークにおける基本的な構造の一つである。
    ・類友の体験や意見は、自分にとって役に立つ確率がとても高いからだ。だから、ある商品を類友が「自分の言葉」で)言わされたのではない本音の言葉で)褒めていたら、全く関心ない商品だとしても、「へー、それ良さそうかも」と心を動かされる。自分が顧客になると思っていなかった商品でも、ちょっと気になっていたけど手を伸ばさなかった商品でも、すっとその存在がここに入ってくる。
    ・価値観が近い類友は、テレビやネットを凌ぐ最強メディアと言っていいし、類友の実体験による「自分の言葉」は、この過酷な情報環境において、超貴重な情報源なのである。

    ■ファンは周りの類友をファンにしてくれる
    ・ 誰かに言わされたのではない、自分の中から出てきた言葉、心からの本音みたいなことだ。で、その「自分の言葉」が周りの類友や友人に届くことを「オーガニックリーチ」と呼ぶ。
    ・このオーガニックリーチこそが、情報や広告に飽き飽きしている生活者に「最強に届く(リーチする)方法」だ。 普通だったらスルーされがちな「企業からの都合のいい一方的な情報」も、類友のオーガニックリーチとしてなら、スルーされずに受け取ってもらえる確率が高い。短期キャンペーンや単発施策も、類友から「こんなのやってるよ!」と伝わってくると、目や耳に入ってくるのである。そして、その類友がファンとして熱く語ってくれたら、それは熱量を伴う分、脳みそに深く刻み込まれる。
    ・特に、家、車、大型家電など、購入する機会がなかなかやってこない&高額な商品には、類友からの言葉が効く。めったに買うことがないものなので慎重になるし、決めるのに躊躇するくらい高いからである。価値観の近い人の言葉こそ必要だ。
    ・しかも、人は大好きなモノ、コトを、近しい類友に言いたくてたまらない。 要するに「ファンは周りの類友をファンにしてくれる」のである。
    ・ファンがオーガニックなオススメをするきっかけを作る。言いたくなるような状況を作る。言いやすくなるような環境を作る。ファンベースにおいてそこがとても大切になってくる。

    ■少数のファンでも「類友や友人の繋がりの連鎖」で広がっていく
    ・例えば中心に100人のファンが居るとして、彼ら彼女らは類友に商品の事を言いたくて仕方がない。それぞれが10人び類友にお勧めするとすると、それは1000人に強いオーガニックリーチとして伝わる。それがまたそれぞれ10人の類友に伝えるとすると、すぐ1万人に達する。非常に影響力の強いオーガニックな言葉が、100人からあっという間に1万人に広がるのである。これはリアルでも SNS でも一緒である。
    ・これを友人まで広げると、中心にいるファンからのオーガニックな投稿は、例えば実名登録が多い Facebookなら130人の友人に伝わる。つまり100人×130人=13,000人である。仮にその3%の人がオーガニックにシェアしたなら、理論上は63,700人にオーガニックリーチすることになる。






    ■B2Bでもファンからのオススメが効く
    ・B2B の場合、決裁者や担当者がキーパーソンになるわけだから、彼らは既に導入している企業からその評判を聞いて大きく影響を受けている。しかも、B2B業界はパレートの法則がかなり当てはまる業界でもある。

    ■ファンの支持を強くするための三か条
    ・1.その価値自体を、アップさせること →「共感」を強くする
    ・2.その価値を、他に代え難いものにすること →「愛着」を強くする 
    ・3.その価値の提供元の評価・評判を、アップさせること →「信頼」を強くする

    ■ファンの言葉を傾聴し、フォーカスする
    ・あなたの企業やブランド等店商品が大切にしている価値の「支持されているポイントはどこか」「共感されているポイントはどこか」「愛されているポイントはどこか」を、まずちゃんと知ろうということである。
    ・では、どうやって知っていくかと言うと、「ファン同士であってもらい、盛り上がってもらい、そのポイントを改めて発見してもらう」のである。つまり、ファンを一定数集めて話し合うファンミーティングが最適だ。

    ■ファンミーティングは、ファン同士が「愛してる理由」を発見しあう場
    ・ファンミーティングは宝の山なのだ。企業にとって有益なヒントがたくさん埋まっている。買ってくれた人の中の20%のファンが、どういう傾向があり、どんな話題で盛り上がり、何を望んでいるか。これを知らずにファンベース施策は始まらない。企業はすべからくファンミーティングを行い、ファンに愛されている理由をしっかり知った上で、今後の具体的なファンベース施策の企画に役立てるべきなのである。
    ・ポイントは、ファンミーティングに来るタイプの人は、20%の少数であると意識することである。その20%をちゃんと探し出すことを心がけよう。参加人数は20人から、多くて50人くらいまでがアットホームに盛り上がり、意見もよく出る。それより多いと個人個人の意見が割れてしまう上に、単なるパーティーに終わってしまうことが多い。

    ■ファンミーティングの典型的な進行例
    ・最初に企業側(商品担当者)からの挨拶と感謝の言葉
    ・商品に関するクイズ大会やトリビア大会
    ・知られざる商品開発ストーリーや開発者の本音の話
    ・ファン会議と発表
    ・開発者や現場の社員へのメッセージ
    ・ファン認定書を受け取ってもらう
    ・思い出に残る記念撮影

    ■ファンミーティングの結果を活かす  ファンは実は自信が無い
    ・「この商品が好きな自分でいけてるのか」「この商品のファンって言って笑われないか」「この商品を友人に薦めても大丈夫か」など、意外と自信がないのである。
    ・例えばレタスクラブのファンは、「褒めていいのかどうか、友人に勧めていいのかどうか、自信がなかった」のだ。メディアが取り上げたり、友人が褒め出したりして、一気に「あ、褒めていいんだ」「レタスクラブを好きな自分っていけてるんだ」「友人に薦めてもバカにされないんだ」とわかり、今まで閉じていた口を開き始めたのである。

    ■商品にストーリーやドラマをまとわせる
    ・モノ溢れるこの時代、モノ自体に感動することは少なくなった。では、何に感動するのだろう。 プレゼントしようと自分のことを考えてくれた「想い」が嬉しいのである。プレゼントを選ぶために使ってくれた「時間」が嬉しいのである。プレゼントを探すために動いてくれた「努力」が嬉しいのである。それらこそが、単なる「モノ」を、他に代え難い「コト」に変えてくれる。
    ・生活者の課題を解決するためにどれだけの「想い」があったか。どれだけの人がそのプロジェクトに携わり、どのくらい「時間」をかけたのか。そして、どのくらい生活の為に試行錯誤し「努力」したのか。そういうストーリーがドラマが、ファンに愛着という感情を起こさせる。
    ・つまり、企業の創業ストーリー、企業の苦難のストーリー、企業の開発ストーリーなどは愛着を強くする重要なコンテンツであるし、それらにアクセスしやすくしておくことはとても基本的なことなのである。

    ■ファン・コミュニティで稼ごうとしない
    ・ファンには売るな、ファンを通して外に売れ。
    ・コミュニティに喜んでもらって、コミュニティの外にその喜びがオーガニックに染み出していくようにする、ということだ。
    ・詳しい内容については「商品はファンには売るな AWS マーケティング担当者が語った、最強のコミュニティ運営術」という記事を参照する。B2Bでもコミュニティ運営が可能だという好事例でもある。


    ■少数のコアファンを先につくる
    ・まずは、数十人でもいいから、価値を強く支持してくれるコアファン、つまり「身内」を作り、傾聴し、改善し、巻き込んでいくことだ。
    ・そして、傾聴した中で、「特にとんがった偏愛ポイント」に絞って訴求し、オーガニックなオススメがより広がりやすいようにする。
    ・大切なのは「偏愛ポイントを前面に押し出すこと」だ。コアファンを作るなら、とんがった偏愛ポイントに絞った方がいい。短期施策や単発施策をしないので、その商品を周りの人が知るのは、この、コアファンからのオーガニックリーチのみになる。だからこそ、それが強めに起こるよう、初期は偏愛に絞る、ということである。

    ■ファンの入り口に立った人をどうするか
    ・話題になったコンセプトを元にファンベース施策をする。
    ・「受け皿」「ツール」「イベント」などを用意する。
    └例えば「お母さん大好き」というコンセプトであるならば、短期・単発施策などで好意を持った人のための「受け皿」として、「お母さん大好き」という声が集まり、みんなが参加できるスペシャルサイトをつくり中長期に繋げていく。また「お母さん大好きツール」や「大好きなお母さん大募集イベント」など、色々とそのキャンペーンを受けた施策を打つことも、共感や愛着を作っていくことに繋がっていくだろう。
    ・デジタルに偏らず、繋げる施策を打っていく。

    ■あとがき
    ・人間関係に関して、3つの大きな教訓がありました。第一に周りとのつながりは健康に本当に良いということ。家族・友達・コミュニティとよく繋がっている人ほど幸せで、身体的に健康で、繋がりの少ない人より長生きするということが分かりました。
    ・第二に、50歳で最も幸せな人間関係にいた人が80歳になっても一番健康だったということ。
    ・第三に、良い関係は、身体の健康だけでなく脳を守ってくれるということ。
    ・75年間にわたる研究で、定年退職後一番幸福な人は、仕事仲間に代わる新しい仲間を自ら進んで作った人たちです。

    ■巻末URL集

    超好関与消費のマーケットインパクト
    https://slideshowjp.com/doc/928217/%E8%B6%85%E9%AB%98%E9%96%A2%E4%B8%8E%E6%B6%88%E8%B2%BB%E3%81%AE%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%82%B1%E3%83%83%E3%83%88%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%91%E3%82%AF%E3%83%88

    上位2.5%の客対象のコミュニティ「&KAGOME」、コアファン向けサービスで上得意の離脱阻止
    https://xtrend.nikkei.com/atcl/case/nmg/18/082500041/

    「ライフタイムバリュー」とは、「一人の顧客がその取引期間を通じて企業にもたらすトータルの価値」
    https://www.advertimes.com/20141222/article178465/

    ソニーのデジタル一眼カメラ「α」に学ぶ、なぜ購入後のマーケティングを重視すべきか
    https://www.sbbit.jp/article/cont1/30229

    顧客に愛される、カルビーのクレーム対応
    https://bizgate.nikkei.co.jp/article/DGXMZO3110303029052018000000

    99.5%が個人株主、カゴメに学ぶファン株主の育て方
    https://mag.sendenkaigi.com/kouhou/201311/cat597/000686.php#:~:text=%E6%A0%AA%E4%B8%BB10%E4%B8%87%E4%BA%BA%E6%A7%8B%E6%83%B3%E3%81%A7%E6%9C%AC%E6%A0%BCIR%E3%82%92&text=%E5%BD%93%E6%99%82%E7%B4%846500%E4%BA%BA%E3%81%AB,%E6%A0%AA%E4%B8%BB%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E8%BA%8D%E9%80%B2%E3%81%B6%E3%82%8A%E3%81%A0%E3%80%82

    通常の10倍買うファン株主はなぜ生まれるのか?カゴメ式ファンづくりの極意
    https://www.recruit.co.jp/talks/meet_recruit/2020/01/kagomefan.html

    商品はファンには売るな!?AWSマーケティング担当者が語った、最強のコミュニティ運営術
    https://logmi.jp/business/articles/21744

    スティーブ・ジョブズがApple社内で“Think Different”について社員に向けて語ったこと
    https://web-academia.org/1181/

    広島カープファンの輪が広がり続ける理由、ユニーク施策の原点は「感謝の気持ち」
    https://sports.yahoo.co.jp/column/detail/201407090001-spnavi

    100人のお客より1人の熱烈なファン 営業の担当世帯を大きく減らした理由
    https://business.nikkei.com/atcl/report/15/244460/092600026/

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著者プロフィール

◉──株式会社ファンベースカンパニー創業者、取締役会長。大阪芸術大学客
員教授。助けあいジャパン代表。花火師。1961年東京都生まれ。
◉──㈱電通入社後、コピーライター、CM プランナー、ウェブ・ディレクタ
ーを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築す
る仕事に従事。2011年に独立し、㈱ツナグ設立。19年、㈱ファンベースカンパ
ニー設立。
◉──著書に『明日の広告』『明日のコミュニケーション』(アスキー新書)、
『明日のプランニング』(講談社現代新書)、『ファンベース』(ちくま新書)な
ど。最新刊は『ファンベースなひとたち ファンと共に歩んだ企業10の成功ス
トーリー』(津田匡保氏と共著、日経BP)。

「2022年 『ファンに愛され、売れ続ける秘訣』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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