ポピュリズムとは何か - 民主主義の敵か、改革の希望か (中公新書) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 桜井誠の党のことかと思った。

  •  日米欧の昨今の政治情勢に共通しての疑問があった。選挙の結果をポピュリズムと批判するならば、民主主義の意義とはなんなのだろうかと。

     本書では、上記の疑問になるべく中立的(思想ではなく制度と意義の解説に徹する)な立場から上記の疑問に見事に回答している。

     たまたま「なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか アメリカから世界に拡散する格差と分断の構図」を直近によんでいたため、共通しての理解が深まった。おもしろいのは、本書で解説するポピュリズムはどうやら米国流リベラルと保守の両方の側面を併せ持つものなのである。

     リベラルとしてはエリートと非エリートという階級的分断を強調することで、「忘れられた」「見捨てられた」と感じている民衆を惹きつけ、保守としては「自国の価値観」を押し出すことで反EU、反移民を政策とし、これまた「逼塞している」労働者たちからの指示を得る。さらに欧州では、反イスラムという保守的主張でさえも、「選択の自由を奪う」とリベラル的な価値観から正当化さえされている。

     これらに気づいたとき、これがなぜ日本のリベラル政党が躍進できないかの一つの答えなのではと思いいたった。ポピュリズム系の政党もしくはリーダーにより、元来は庶民の味方として振舞ってきたリベラル系ジャーナリズムとそれらが支持するリベラル政党こそが、真の敵エリートであるという役割を与えられてしまったからである。かれらの言葉は最早民衆に届かないであろう。

     ここで危惧されるのは、ポピュリズム政党(もしくは派閥)が民主主義にとって益をなすか害をなすかである。本書の事例では、デモクラシーが貧弱な国ではポピュリズム政党が政権を取ると権威主義化して害をなす。一方デモクラシーが発展した国では、既存の政党の革新を促す薬となりうるとしている。

     日本の既存の政党(保守もリベラル)もポピュリズムという口先の批判に終始するのではなく、成熟した民主主義国家として、自らの改革による民衆からの支持回復をはかることを期待したい。 

  • ポピュリズムの起源から、現代の広がりについて書かれています。世界的に聞くようになった言葉ですが、その定義が曖昧なままの状態でしたので、本書でそれを整理できたのはよかったです。ラテンアメリカからヨーロッパ、そしてアメリカへと。そこで起きたポピュリズム勢力による事件の背景に何があったのかを理解することができました。民衆を背後に持つことで、既成の権力に対抗する、その道具として使われるならば不幸です。しかし、それを既成の権力に軌道修正を迫る声として使うならば、民主主義に力を与えることになります。結局、どんな武器も使う人間次第なのだと思いました。

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著者プロフィール

千葉大学教授。
著書等に、
『政治学入門 学問へのファーストステップ 1』
(永井史男、水島治郎、品田裕 編著、ミネルヴァ書房、2019年)、
『反転する福祉国家 オランダモデルの光と影 岩波現代文庫』
(水島治郎 著、岩波書店、2019年)ほか。



「2019年 『社会のためのデモクラシー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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