絶滅の人類史 なぜ「私たち」が生き延びたのか (NHK出版新書) [Kindle]
- NHK出版 (2018年1月11日発売)
- Amazon.co.jp ・電子書籍 (205ページ)
感想・レビュー・書評
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ヒトとチンパンジーが共通祖先から分かれたのが約700万年前。その後の進化の中で20種類ほどの人類が分岐したが、現在はホモ・サピエンスだけを残して他は絶滅してしまった。本書のテーマは他の人類が絶滅した原因を考察するものだが、大半は進化の歴史の解説だ。
直立二足歩行をするのは人類だけだ。それが生存競争に有利なら、なぜ人類以外にそれをする動物が現れないのか。有利でないなら、なぜ人類はそうなったのか。言われてみれば不思議だ。仮説は多数あるが、証明されたものはないようだ。
ヒト(ホモ・サピエンス)以外の人類が絶滅した理由は結局わからない。ヒトによって滅ぼされたり、ヒトとの競争に敗れた場合もあるだろうが、それとは関係ない環境変化などが原因だったかもしれない。最後のネアンデルタール人はどんな気持ちで死んでいったのだろうか(そんな自覚はなかったかもしれないが)。
意外だったのは、ネアンデルタール人の脳はヒトより大きかったという話だ。しかもヒトの脳も何万年か前に比べて小さくなっているという。子供の頃よく雑誌に載っていた未来人の想像図はだいたい頭が大きかったが、コンピュータに頼るようになった人類の脳は逆に小さくなっていくのかもしれない。未来は過去以上に知りようがないのだけれど。 -
人類というと我々のことですが、ホモ・サピエンス以外にも人類という種は存在しました。彼らに対して特に力が大きいわけでも、脳が大きいわけでもない、ホモ・サピエンスが、なぜ現代まで残ったのか。その謎に迫ります。直立2足歩行によって、4足よりも確実に遅くなり、どう考えても不利な状態に。弱い人類の、そしてその中でもさらに華奢なホモ・サピエンス。それが生き残った理由となる数少ない利点とは。この生き残りの法則は、いまの現代生活でもそのまま使える原則論かもしれないと感じました。
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わたしのお気に入りは
「初めてアフリカを出た人類」についての議論!
ここがとにかく気に入った!
定説ではドマニシ原人が比較的早く歩けて
移動能力が高いことなどから有力とされていたそうで、
まんまと「なるほどね〜」と思っちゃったんだけど、
「10 万年でアフリカからジャワ島まで生息域を広げるのに、足の速さは必要だろうか。」
って書いてあって衝撃を受けました。笑
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人類史の本はできる限り新しいのを読んだほうが良い。なぜなら新事実によって、これまで考えられていた定説がひっくり返ることが度々あるからだ。その点この本は2018年に出版されたものなので、今の所いい感じである。
新しさ以外に良い点について語るとすると、なぜその説が主流であるのか、根拠が説明されている点である。例えば、かつては人類は草原に出たことによって直立二足歩行を獲得したのだと考えられていたのだが、現在では疎林で進化したとされている。理由の一つとしては、草原だと逃げ場が無く、移動速度の遅い直立二足歩行では生き延びることができないからだ。
とりあえず最新の人類史をサクッと知りたい人におすすめの本ではないだろうか。 -
ホモ・サピエンスは「頭が良く優れていた」から生き残った、
という固定観念を読書前に私は持っていました。
その固定観念を作者が一つ一つ、ゆっくりと化石から
分かった事実を拾い上げながら崩してくれるたびに
(なるほど!)、(そうだったのか!)と思う事しきりで
読書中は常に快感でした。
特に良いなと思ったのは、「化石からでは分からない事実」について
作者が想像し、言及している点です。
滅んでいった人類たちが、例えば「見たものを瞬間的に覚えることができる」、
という驚異的な記憶力を持っていた可能性がある、などと考えますと、
自然と化石に向かう姿勢が謙虚になると思います。
そんな作者の姿勢にとても共感しました。 -
とても面白い!
人類はホモ・サピエンス(ヒト)を除いて、絶滅してしまっている。なぜ絶滅してしまったのか、そしてホモ・サピエンスはなぜ生き延びることができたのか、をユニークな例えを使いながら、解説してくれる良書。
仮説の立て方とその限界がわかるので、論理的思考のお手本としても参考になる。
【メモ】
・直立二足歩行は欠点だらけ
└敵に見つかりやすい、短距離走が苦手
・人類の犬歯は小さい
└その理由は諸説あるが、争いをしなくなった、食性の変化などが挙げられる
・直立二足歩行をするようになった理由として「食糧運搬仮説」がある。
└自分の子供に食糧を運ぶために、両手を使った
・ヒトに発情期はない→一夫一妻制が発展?
・火の使用→消化に時間がかからない→ヒマになった→コミュニケーションをするようになった
・脳が大きいと維持するのにカロリーもかかる
・脳の大きさ=知能ではない
・恐竜が絶滅していなければ、知的生命体に進化していた可能性がある -
専門家の本は面白い。
先日、三井誠著『人類進化の700万年』に続いて本書を読んだ。三井氏はジャーナリストであり専門家ではない。他方、本書の更科功氏は古生物学者であり、武蔵野美術大学の教授である。更科氏の筆力もあるだろうが、専門家は一重深いところまで考えているために論の立て方が面白い。本書はそのことを教えてくれた。
ホモハイデルベンゲンシスの一部はアフリカを出てヨーロッパに行った。そこで進化したのがネアンデルタール人であり、アフリカに残ったホモハイデルベンゲンシスが進化したのがホモサピエンスである。
しかし、その後、やはりアフリカを出たホモサピエンスはネアンデルタール人と交配していた。アフリカ人以外はDNAの2%がネアンデルタール人由来という。日本人もDNAの2%はネアンデルタール人から受け継いだものなのだ。
本書の原稿は2017年に書かれたもの。現代的な比喩を含めて筆者の説明力には脱帽だ。面白かった。 -
地球レベルの歴史でみれば、人類は一種類ではなかった。でも、今はホモ・サピエンスのみだという。私たちサピエンスは、他の人類を駆逐して今に至っているのだろうか。なんていう、歴史というか考古学ミステリ的な問いかけが愉快だ。ネアンデルタールとサピエンスが一時とはいえ同時に存在し、交雑した過去もあったという話は聞いたことがある。ネアンデルタールは、虐殺されたのか?いや、それはたぶんちがう。その時代の地球の環境が、たまたまサピエンスに都合が良かったので、当時の地球においては燃費の悪かったネアンデルタールは結果的に、生き残ることができなかったのだ。脳容積でいえば1350CCの現生人類に対して、1500CCあったというネアンデルタール人が、どんな認知能力を持っていたのか。ちょっと知りたい気がしたな。
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人類の祖先を巡る仮説の立て方が面白いですね。