独創はひらめかない―「素人発想、玄人実行」の法則 (日本経済新聞出版) [Kindle]
- 日経BP (2012年11月22日発売)
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感想・レビュー・書評
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隔週で定例雑談会をしている先輩から勧められた一冊.
アメリカの名門,カーネギーメロン大学のロボットや計算機工学の有名な日本人教授である金出先生の著書である.
短く区切られたたくさんの章から構成され,研究者としての視点から問題解決から日本情勢について幅広く触れられている.
一冊を通して強く感じるのが,この人がひたすらに研究活動を楽しんでいる,と言うこと.文を読んでいるだけでその熱意が十分に伝わってくる.研究者を志しているものとしては大成功している研究者であってもいまだにこのように楽しんでいる先人がいるのは非常に嬉しい.
本書のサブタイトルにも入っているが,たくさんの例を用いて,素人的に考えて,玄人のように精密に実行することの重要性が説明されている.
これは簡単に聞こえるが非常に難しいことであるように強く感じる.
自分も専門分野に関して必要としてたくさんの文献を読み知識を増やすが,その結果として自由な楽観的な発想が奪われ,面白そうなアイディアであってもそれを実行に移すことなく,その「失敗しそうな点」を探してしまう.知識が増えれば増えるほどそのような点を見つけることが上手くなる.
そうなると,結局うまくいきそうな誰でも思いつく,つまらない研究に落ち着いてしまうのである.それは論文までまとめたところで,面白いと思ってもらえないので読まれない.読まれない研究は存在しないのと同義である.
そこで本著で金出先生は「素人発想,玄人実行」を提案されているのである.実際にそのような発想で誰もそれまで考えたことがないような,考えたとしても無理だと思い実行に移さなかってであろう研究プロジェクトをいくつも成功に導いている.
この発想は研究者に限らず新しいことに競争的なフィールドで活躍しようとしている人にとって役に立つものであるだろう.
隙間時間に読めて挑戦する勇気とモチベーションをくれる一冊である.詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
初版は20年前、最後の新板あとがきは10年前に執筆されたものであり、その観点から本書を読む必要がある(2021年現在)
各単元が短く、金出先生の経験に基づく様々なトピックが散りばめられているスタイル。日米の社会情勢・事情は当時のものであり、必ずしも現在の考察として当てはめることはできないが、基本的に研究者としての心構えが説かれているのだろうと思う。
最初は、読者ターゲットがいまいち分からなかったが、たぶん駆け出しの研究者(アカデミア)を対象にしているのだろうと思う。
ということで、書かれている「内容は至極真っ当」。たぶん、中堅以上のキャリアの人にはあまり新しい気付きは無いのかもしれない。 -
アイデア発想の本.
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・素人発想、玄人実行が大事
・教育において問題解決学習による問題解決能力の育成と反復練習による知識・スキルの定着はどちらも大切である。前者は素人発想、後者は玄人実行のために必要である。
・説明には、まず簡単な例(自分の説明したいことがなければ解けない最も簡単な例題)を考案し、それらで色々な性質を見たり発展させて一般化すると良い
・プレゼンは一番最初に一番重要なことから話す
・企画のためには記憶が大事。そのために、まず理解し、自分の知っていることと関連づけるとあとで引き出すことができる。
・聞かせる話のためには、アイデア、結果、構成(1つのメッセージに集約)、言葉、聞かせるテクニックが重要
・プロポーザルの戦略:新分野の研究、境界領域の研究、ニッチプレー
・共同研究は互いに競争意識を持つくらい緊張感が強いもの同士が成功する。
・トップの役割:情勢判断、方針決断、戦略策定、実行指導。現役である必要がある。
・「やってみるもんだ」「『できるのだ』というオプティミズムで」
・独創、良いアイデア、良い結果は、(ある人突然現れるものではなく)地道な努力と常に考える姿勢がもたらすもの。
・研究は自然との対話 -
3.7
