なぜ大国は衰退するのか ―古代ローマから現代まで (日本経済新聞出版) [Kindle]
- 日経BP (2014年10月24日発売)
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みんなの感想まとめ
過去の大国の衰退を分析し、現代の米国に警告を発する本書は、経済政策や制度の内部要因が衰退を招くことを示しています。ローマ帝国や大英帝国、日本などの例を挙げ、著者は「政治的疲労」が経済力を低下させる要因...
感想・レビュー・書評
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過去の大国(ローマ、オスマン、スペイン、中国、英国、日本)をサンプルとして、なぜこれらの国が衰退(英国、日本については同時代の他国と比しての成長率の鈍化)を分析する。本書の目的は得られた考察から、現代に盛隆を極める米国へ警告と提言をすることである。
筆者の分析の結果を一言でまとめると「政治的疲労により経済力が低下した」。特に、レントシーキングによる非効率な資源配分と、時間に対する割引率の錯覚によって財政規律を失うことで社会インフラに投資できなくなったことが原因となって経済圏が衰退したと結論付けている。
目的である米国については、カリフォルニア州を例に挙げながら「他人ごとではない」と警鐘を鳴らし、財政規律をいかに保つかという方法論を憲法の修正にまで踏み込んで分析・提案している。
マクロ経済への影響(金利とインフレ率)と恒常的な社会インフラの維持のために中長期での財政規律が大切なことは自明であるが、それに充てることのできる方策は地味で堅実なものしかない。日本の各自治体の取り組みをみても、選挙と財政改善がいかに相性が悪いかが見て取れる。
筆者は憲法改正により、選挙を通すと放漫になっていく人の心理に制度的たがをはめようとしているが、結局のところ憲法修正さえも選挙を通さなければならないので鶏と卵の議論になってしまうのではないだろうか。
米国でも日本でもMMT理論というトンデモ理論を唱える人々が財政改善議論をややこしくしている現状から、次はMMT理論を正統派マクロ経済学で解説している本を読みたい。 -
栄枯盛衰、華々しく繁栄した大国もいずれ衰退や滅亡に向かうことが多い。しかし衰退の原因はよく言われる外敵の侵略やライバルの台頭など外部要因ではなく、主に経済政策や制度の問題で内部から崩壊していくものである、というのが著者らの主張だ。
例として取り上げられているのは、ローマ帝国、中国の明、スペイン帝国、日本、大英帝国、カリフォルニア。それらを踏まえて米国の状況を考察し、米国が衰退を防ぐための制度改善を提言している。最初の二つ以外は滅亡した訳ではなく、衰退したかどうかもまだ明確でなかったりするが、ピークを過ぎている点で同列に扱われている。
本書の主題は結局、米国の経済政策と民主制のあり方に対する著者らの主張であって、過去の大国の衰退ストーリーはそれを裏付けるものとして例示されているに過ぎない。残念なことに日本も衰退した国のひとつに挙げられているが、改善提案はあくまでも米国向けのものだ。米国の歴史と現行制度に細かく立ち入りすぎており、他国の参考にはならないと思われる。
著者らがどの程度著名な経済学者なのか知らないが、対立する主張を唱える学者も多数取り上げられていることから、本書の主張がそのまま現在の定説というわけではなさそうだ(そもそも経済学に定説があるのかどうかも疑問だが)。こういう考え方もあるという程度に理解しておくのが妥当だろう。
