折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ) [Kindle]
- 早川書房 (2018年2月25日発売)


- Amazon.co.jp ・電子書籍 (450ページ)
感想・レビュー・書評
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粒揃いの短編集だったけれど表題作がとてもおもしろかった。
何かの比喩かと思ったら…。
すごい発想だなぁ。
お化け屋敷のお話や、龍のお話も良かったし
「円」はスケールがとてつもなくて、
ひー!と、なりました。
やっぱり中国SF
もう少し読んでみた方が良さそう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
中国SFのバラエティ豊かさを味わえる短編集です。
最近になってケン・リュウの「紙の動物園」に触れて、中国作家のSF面白いじゃないか、と遅まきながら気づき、作者さん自ら編者をされているこの短編集を読むことにしたのですが、作家ごと、作品ごとにイマジネーションの活かしかたがまるで違ったかたちで楽しめて、贅沢な一冊でした。
表題作の「折りたたみ北京」は三重構造の都市の話ですが、折りたたみという訳語のユニークさ、世界設定のそのものの創造性が楽しいのですが、実は現代社会の問題がかかわっていてまるで絵空事でなく、もの悲しい後味が余韻を残しました。
また「円」の爽快なストーリーテリングはとても心地良かったです。映像になるとただ悲惨ではある、けれどエウレカと叫ぶ科学者たちの姿を思い出すような、思考がひとつ拓けたような瞬間が短いセンテンスに描かれていて、巧いなと感じました。
あと短く列挙すると、「麗江の魚」「童童の夏」の物悲しさ(「もののあはれ」のごとく)、「沈黙都市」のそこはかとなく忍び寄ってくるようなリアリティ、「見えない惑星」の豊かな多様性のアイディアの面白さと『物語の方向性を決めるのは聞く耳だ』というフレーズの奥深さが印象的でした。
総じて哀しめの要素を持った話が多いのに、けして引きずるような重さでなく、どこかからりとしているようにも思いました。それがこのアンソロジーの特色なのか、作家さんたちのカラーなのかは、まだこれからいろいろと読んでみて考えたいなと思いました。 -
「折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー」(編者 ケン・リュウ :訳 中原尚哉 他)を読んだ。
ちょっとこれはもしかして凄いぞ。
この先SF小説は中国からの発信が主流になっていきそうだよ。
あー面白かった。
そろそろ「三体3:死神永生」に備えて1、2の復習しとかないとな。
「折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー」(編者 ケン・リュウ :訳 中原尚哉 他)に収録されている、「中国SFを中国たらしめて いるものは何か?」( 夏笳 : 鳴庭真人訳)というエッセイが良い。
SF小説好きなら読んでおくべきかと。 -
編集者が初めに述べているように「中国が作ったSF」というカテゴライズには全く意味がない。多種多様で、かつ万国共通の面白さとメッセージ性があった。ただ最近の中国の急速な技術進化と政治の極端な介入が中国が優れたSFを生むきっかけになったという話、本当にそうなんじゃないかと思う(そうやって考えるのは控えるようにと書いていたけど)。
読んだ人全員が言っているように、劉慈欣の「円」は圧倒的な面白さ。秦の300万人の軍で巨大人間計算機を作り上げるという、なんとも「SFはこうでなければ!」と思わせてくれるSFのロマンがそこにあった。意外で、余韻を残させるオチも最高。そしてこれがある小説からの抜粋なのだから驚き、著者の他の作品を即購入した。
チョン・ジンボーの「蛍の墓」も結構好き。テーマ自体はとても人間的だけども、暗闇と光、生と死、宇宙と小さい惑星といった極端な対比が多用されているおかげで、話全体のスケールがものすごく大きく、素敵な世界観だった(『インターステラー』のオチが「宇宙ですら敵わない“愛”という存在」だったけどそれに近いものを感じた)。 -
中国のSF小説のオムニバス。
あまりおもしろいと感じなかった。 -
お気に入りは、巨大鼠を狩る「鼠年」、老年の希望を描く「童童の夏」、物語ることと惑星を重ね合わせ語る「見えない惑星」。他の人の感想を見ても、お気に入り短編がバラけているのが、良作アンソロジーの証か。どれも面白い。全体を通して見ると、SF的な設定を語ることよりも、雰囲気やメッセージに重点が置かれている作品が多い印象を受ける。それが最近の流行なのか、中国SFらしさなのか、ケン・リュウの趣味なのか(思えばケン・リュウ作品もそういうものが多い)私には分からないけれど、とてもツボで良かった。
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当局への批判めいた作品が多かったように思う。
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まだ伸びる。良くも悪くも作品、作家ともにまだまだ伸びる余地があると思わせてくれるアンソロジーだった
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中国っぽい作品が面白かった
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中国の、scienceというよりspeculative小説のアンソロジー。冒頭、陳楸帆の3作品がいきなりティプトリーかよな鬱小説で脳みそをぶん殴られる感じ。『荒潮』も読んでみよう。続く夏笳の3作品は打って変わった幻想小説で視覚的イメージが美しい。特に「童童の夏」は少し未来のテクノロジーを背景として子供の目から見た祖父の介護の話で、老いた親族を介護した経験があると涙なしには読めないかもしれない。馬伯庸の「沈黙都市」は「1984年」の堅実な語り直し。他の作品も読んでみたい。郝景芳の「見えない惑星」はいかにもカルヴィーノだけど惑星アミヤチの生態系がS(ここはサイエンス)F的美しさに満ちて好き。「折りたたみ北京」はさすが表題作の完成度。で、程婧波の「蛍火の墓」が美しく寓話的な語り口で素晴らしい。「天界の城」あたりの佐藤史生を連想した。劉慈欣は端正な「円」とユーモアのある「神様の介護係」どちらも良い。
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