どうで死ぬ身の一踊り (講談社文庫) [Kindle]

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  • 講談社 (2009年1月15日発売)
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感想・レビュー・書評

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  • 西村ファンの間で「貫多シリーズの最高傑作」との呼び声が高い表題作「どうで死ぬ身の一踊り」と「墓前生活」「一夜」の3作品を収録。
    「どうで死ぬ身の-」は、たしかにおもしろかったです。
    西村さんが「歿後弟子」と呼ぶほど心酔した大正時代の作家藤澤淸造への愛が、最もよく分かる作品ではないでしょうか。
    ただ、個人的には、「一夜」がいい。
    藤澤の「根津権現裏」を飾る額ができあがり、同棲する女の好物であるカニを買って帰る主人公の「私」(貫多)。
    ところが、例によって女と揉めてしまい、暴力をふるってしまいます。
    女が出て行って、心配になる「私」。
    居ても立ってもいられず、外へ探しに行くことになります。
    その時の「私」の不様さといったらありません。
    私にはもちろん、そんな経験はありませんが、この時の「私」と同じような心境になったことは、若かった時分にはある気がします。
    そんなふうに読者に想起させる小説が、つまりいい小説だということです。
    こうなったら、西村作品をすべて読むつもりです。

  • 読みながら、西村さん敬愛の藤澤清造の言葉なのだとわかりつつ、タイトルかっこいいなあとなる。
    墓標がほしいとか法事を催すとかファンとしても度が過ぎる、というかもうすきになったときには亡くなっているのにこんなにすきになれるのがすごい。
    そして秋恵に対してクズすぎる。

  • 面白さが分からなかった

  • 西村賢太の私小説は、いつか読もうと思ってた。
    無頼たる人生を駆け抜けた半生を赤裸々に紡いだ小説群は、中毒性があって、辟易しながらもまた舞い戻らざるを得ないとされる。本作はいわゆるデビュー作であり、傾倒していた藤澤清造の歿後弟子としての執着と、同居女性との小競り合いからのDV、ののしり合いが入れ替わりのように続く。これを面白い小説とは到底言えないが、妙な吸引力があってそれが中毒性なのかもしれないと思った。
    読書の間の清涼剤での1冊には程遠い毒薬とも言えるが、毒を食らわば〇までもの気持ちで、10冊大人買いしたのでした。

  • 角川文庫版読了

  • 初西村。私小説が三編だがどれも藤澤清造推し活と元同棲相手との生活模様(主にDV)が描かれていた。生き様は好き嫌いの類ではなく、とにかく心情描写が面白くスラスラ読めた。

  • どうで死ぬ身の一踊り

    西村賢太
    発行:2009年1月15日
    講談社
    *2006年1月単行本発行(講談社)
    ・墓前生活(短編、46p)
    ・どうで死ぬ身の一踊り(中編、138p)
    ・一夜(短編、25p)

    今年2月に急逝した著者は、明治後半~昭和初期まで生きた無頼派作家・藤澤淸造に私淑していた。代表作は大正11(1922)年の「根津権現裏」で、その後3年をピークに作品に恵まれることなく、42歳の時に東京の芝公園で凍死。警察による拘留、内妻への暴力などあって、常人扱いはされずに最期を迎えたようだ。

    本書に収録された3編はいずれもこの藤澤淸造に心酔する男(同一人物)の物語であり、西村賢太自身の私小説でもある。男は中学卒でいろいろな職をしながら東京で暮らす。警察のお世話になった経験もありつつ、定職もないがなんとか生活している状況。貧しいが異常なまでに藤澤やその周辺人(徳田秋声、横川巴人、室生犀星ら同郷文化人)に関する資料を集める。お金も惜しまない。出版社を探し、自身の手により藤澤淸造全輯(集)の出版を目指していた。

    「墓前生活」は、そんな主人公が石川県七尾市にある藤澤淸造の菩提寺を訪ね、墓参りをするところから始まる。そして、月命日と命日には自身で墓参りを行う。ほとんど知られていない作家に熱心な彼の姿を見て、あまり相手にしていなかった寺の副住職も彼の要求に応じて古い淸造の墓標を縁の下から探し出す。傷んで来たので石の墓標に換えられた木製の墓標だったが、主人公の男はそれをもらう(預かる)ことに成功した。彼は20数万円もの費用をかけて美術品梱包で東京の自宅アパートへと運搬する。この作品は、西村賢太のデビュー作である。

    「どうで死ぬ身の一踊り」は、前作とダブる中編小説。七尾にある藤澤の菩提寺に誰がどのような理由で墓標を建てたのかなどが少し詳しく説明された上で、主人公の男が「淸造忌」を復活させる展開となる。副住職とは藤澤に対する思い入れの違いをベースに、酒席で些細なことで口論寸前となったり、また、それが収まったり。その辺りの微妙なやりとりと心理描写は素晴らしくうまい。相変わらず、月命日への墓参も欠かさない。そして、淸造の横に自分の墓をつくることを許される。50センチほどしかスペースがないため、台座を淸造と一体で造るという望外の許可も。

    有頂天となり、さらに地元で、文人画家で藤澤と親しかった横川巴人の実家から、貴重な資料の数々を無料で入手することにも成功する。全集に出版に向けて張り切るが、この小説では後半から同棲している女との関係がメインとなってくる。彼女は東北出身の大卒だが、中華料理店でアルバイトをしているときに男と知り合った。今はスーパーで働きながら2人で暮らしている。藤澤に関する文章を不定期で書いたり、人前で喋ったりすることがある程度の仕事の男は、その女性に食べさせてもらっている要素が強かった。しかも、全集出版準備金は彼女の両親からの借金だった。そのお金も、墓標を買ったり、自分の墓を造ったりというお金に化けてしまっている。

    酒を飲み、心酔する藤澤のことばかりを考える男。彼女のことは愛おしく大事だが、藤澤命で生きる自分の生き様から外れるようなことを言われると、たとえ些細なことにも腹を立ててしまう。そして、暴力。彼女はとうとう出て行ってしまう。実家から帰ってこないし、両親も帰さないと言っている。大いに反省し、実家へ行って説得。最初はかたくなだった彼女も、最後にもう一度彼にチャンスを与えた。そして、東京での生活。すごく優しくなった男だったが、すぐに元の木阿弥。またDV、今度は救急車を呼ばなければいけないような状況だが、呼ばない。一晩、耐える女性。その後は、物語では描かれていない。

    「一夜」は、彼女へのDVをしてしまう一夜の物語。同じ男。

    全般的に、なんと恐ろしい小説だろうと感じてしまう。他人事ではない、主人公のような行動は、誰もがやってしまいそう。決して女性に手を上げるような人ではない、そんな男でも、逆に、そう見えれば見えるほど、普段、大人しければ大人しいほど、ある日突然、やってしまいそうな恐怖感を抱かせる小説だった。僕の場合、母方の祖父がそうだったらしい。普段は極めて大人しいが、酒が入ると暴力的に。血筋は争えないので、余計に恐ろしい。一生、暴力だけは女房に対してはもちろん、誰にも振るいたくない。

    西村賢太氏も、淸造忌を復活させ、月命日の墓参をかかさず、淸造の横に自らの墓を建てている。そして今年の夏に自らの手による藤澤淸造全集の出版を予定していた。中学卒業後のすさまじい生活や飲んで暴れて警察の世話になっている経験なども、小説の主人公と一致する。同棲相手の女性は、どこまでが一致するのかは分からないが、かなり事実に近い私小説だと想像できる。藤澤は42歳で公園にて凍死、西村は54歳でタクシー乗車中に急逝した。

    「どうで死ぬ身の一踊り」は芥川賞候補作となり、4年後に出版された「苦役列車」は2010年後期芥川賞受賞作となった。
    どちらも素晴らしい作品。

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著者プロフィール

西村賢太(1967・7・12~2022・2・5)
小説家。東京都江戸川区生まれ。中卒。『暗渠の宿』で野間新人文芸賞、『苦役列車』で芥川賞を受賞。著書に『どうで死ぬ身の一踊り』『二度はゆけぬ町の地図』『小銭をかぞえる』『随筆集一私小説書きの弁』『人もいない春』『寒灯・腐泥の果実』『西村賢太対話集』『随筆集一私小説書きの日乗』『棺に跨がる』『形影相弔・歪んだ忌日』『けがれなき酒のへど 西村賢太自選短篇集』『薄明鬼語 西村賢太対談集』『随筆集一私小説書きの独語』『やまいだれの歌』『下手に居丈高』『無銭横町』『夢魔去りぬ』『風来鬼語 西村賢太対談集3』『蠕動で渉れ、汚泥の川を』『芝公園六角堂跡』『夜更けの川に落葉は流れて』『藤澤清造追影』『小説集 羅針盤は壊れても』など。新潮文庫版『根津権現裏』『藤澤清造短篇集』角川文庫版『田中英光傑作選 オリンポスの果実/さようなら他』を編集、校訂し解題を執筆。



「2022年 『根津権現前より 藤澤清造随筆集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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