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Amazon.co.jp ・電子書籍 (1205ページ)
感想・レビュー・書評
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800年前に書かれた、琵琶法師の語りで伝えられた物語を、42歳になってやっと読了した。
あとがきや解説も含めて900ページ超えの「黄色い鈍器」のようなこの本、一体いつ読み終えることになるのだろうと思いながら、1ページ目、訳者古川日出男の前語り。
「私は、平家が語り物だったという一点に賭けた。
その時代、琵琶法師たちがこの物語を語り広めていたのだ、という史実に、賭けた。
つまり読者とは聴衆だったのだ。
そして、だとしたら-誰が今、この時代に語るのだ?
その妥当性を、何者(たち)が持つのだ?」
ここを読んで、スッと入っていけた。私は聴衆である。書かれたものを読むのではなく、聞くのだ。
それに足りる古川日出男のリズミカルな文体。改行、倒置、句読点、繰り返しを駆使した、耳と目から入るような文体、見事としか言えない。読んでいて気持ちが良くて、こんなに古い物語なのに、全く新しい読書体験だった。
素晴らしいアニメ化作品と並行して読んでいたことも大きい。最後、「灌頂の巻」で語られる建礼門院が身を寄せる寂光院とその周りの風景描写の美しさと哀しさが、アニメでもしっかり描かれていて、より一層涙が溢れた。
祈りの物語として私は読んだ、聞いた。
訳者、古川は、供養の意味合いを込めて、原稿は全て手書きしたという。原稿用紙1800枚の、祈りの歌だった。
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