終わった人 (講談社文庫) [Kindle]

著者 :
  • 講談社
3.77
  • (31)
  • (63)
  • (43)
  • (6)
  • (3)
本棚登録 : 414
感想 : 65
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (376ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 出世争いに敗れ、子会社で63歳定年を迎えた自意識過剰の元エリート銀行マン。プライドが高くて見栄っ張りの面倒くさいキャラ。不完全燃焼感満載、全く枯れてないからいい歳して地に足のついた生活ができない。優越感と劣等感が入り交じって日々愚痴ばかり、周囲と心通わすこともできない。そして、満たされない心を埋めようとするかのようないい歳こいた火遊び(一方通行の惨めな金時モチに終わったが)。前半は、読んでいてとにかくイライラが募った。

    「俺には何の趣味もない。仕事が一番好きだった」、「今なお仕事がしたい。他のことはやりたくない」、「こんな老人たちと一緒に、めしなど食いたくない」…。

    スポーツジムでベンチャー社長に声をかけられたところから、物語はジェットコースターのように目まぐるしく展開する。顧問就任、社長の突然死と乞われての社長就任、そして会社倒産と負債の弁済、家庭崩壊、卒婚&Uターン。尻上がりに面白くなっていった。

    会社が倒産という時の引き際、責任の取り方は立派だったし、夫婦間に亀裂が入った後の妻への贖罪の仕方も立派だった。主人公はデキル男ではあったんだな。プライドが邪魔して片意地さえ張らなければ、こんなに回り道することなかったのにな。エリートじゃなくて良かった(笑)

  • 東大卒、大手銀行のエリートマンである主人公は63歳で早期退職をする。プライドが高く社内で邪魔者扱いされる前に、「去り際千金」と早期退職を希望したのだ。しかし、仕事一本で趣味もなく、友達もあまりいない。仕事のない生活をどのように生きていくのか向き合う話だ。

    最近では「人生100年時代」と言われるので、自分達の世代が何歳まで働いているか分からないが、自分だったらどうしたいのか考えさせられるきっかけとなった。
    どのような仕事であれば年老いてもできるのか。自分にとっての趣味ややり甲斐は何なのか。働いているうちに考え始めておこうと思えた。

  • 自分で自分のことを終わった人というのはいただけないわ。定年退職ってそんな気分になるものなのかもしれないけれど。どんなことでもいい、自分のやりたいことを見つけ、ガンガン挑戦していけたらいいな。

  • 自分にも当てはまると思ったのは、自分が仕事に打ち込めるのは、妻が色々と我慢してくれているおかげだということだ。

    夫婦仲がずっと良いところは本当にあるのか?と思いたくなるくらい、千草や壮介の両方の気持ちに共感した。
    そして、壮介は我武者羅に頑張って東大の法科を卒業後、大手銀行で活躍した過去があるからこそ、周りの親戚、友人もある程度の尊敬の念を抱いているのかなとも思った。

    自分が一生懸命頑張ろうとすると、何かを犠牲にしなければならないのかなと考えさせられた。犠牲にするのは夫婦仲なのか、友人関係なのか、それとも出世コース、会社内での利害関係?
    全てを上手くいくように立ち回るのはなかなか難しい気がする。

    この本を読んだ後は、やはり夫婦仲(1番身近にいる人)を大切にした方が良さそうだということ。時間は巻き戻らない。「あの時、こうしておけば良かった…!」と思っても後の祭りで、後からどんだけ妻のことを労っても手遅れだということ。

  • 勤め人には遅かれ早かれ「終わる」時が来る。
    肩書がなくなり、給料ももらえなくなる。
    自分の存在価値が揺らぐのは仕方ないかな。
    人生100年。ある年齢になったら「終わった」あとについて真剣に考えないとね。

  • まさに人生いろいろ。
    定年すぎて自分探しを始めるのは厳しいなあ。
    自分はまだまだやれる、っていう気持ちはよくわかる
    「あなたはまだちゃんとサラリーマン人生を死んでないんだよ」って言われてたけど、なかなかあきらめられないですよね。
    いろいろ身につまされます。
    しかし「終わった人」って、ほんとに身も蓋もないタイトル…

  • 私もいずれ終わる人だ。
    みんないずれは終わる。
    出来るだけ働きたい気持ちと、もう少し自由な時間が欲しい気持ちの両方本当の気持ちだけど、コレを読んでなんとなくだけど働けるだけ働く方が良いと思えた。
    ただ設定の夫婦がそれぞれお金持ち過ぎてちょっと現実的では無いなと思えてしまった。

  • 最近読んだ中で、6月の中では一番面白かった話!かなり引き込まれてもっと読み勧めたくなった。

    ちょっとこの主人公のだめおじさん感というか、仕事をしだすといきなりオラオラ系になるのに家に帰るとかなり猫被ったひ弱になる感じにムカついたりもしたけど。
    そして、妻のかなりドライな感じにも驚き。まぁそうなるよねもはや私もこのドライにすでになってるけど、、卒婚か~。やっぱり仕事を持って独立までして生きていく妻はかっこいいな!見習おう。

  • 面白いとかではなく、示唆に富んでいるという意味で星5

    「思い出と戦っても勝てない」という言葉が印象的だった。
    過去に縋ってしまうかもしれないけど、過去と今を比較して悲しくなるのは馬鹿馬鹿しい。
    過去は美化されるもの。

    結婚生活は、楽しいばかりでは無い、夫婦も人間だから。悲しいけど。
    夫婦は一切のことで依存するべきでは無いと再認識した。結婚は独立した人間が共同生活を送ることで、助け合いではあっても、頼り合いであってはならない。

    良い時もあれば、悪い時もあるのが人生で、その良し悪しは運で決まることが多い。
    いい方向に進むためにできることは、良い人間関係を作ることなんだろうと思う。
    調子が良くても「今はそういう時」と思って謙虚でいたい。

    人が何かに辛く当たるのは、それとは別のことでうまく行ってない時みたい。
    何かがうまく行ってる時は、他のことに寛容になれる。

    多分、この本が一番伝えたいのは、人の価値を肩書とか収入で測ろうとするのは、そういう社会に毒されているだけで、基準としてどうなの?ってところな気がする。
    その肩書を「定年」という形で失った時に横並びになる基準って何の意味があるんだろう、そんな何も残らない虚像を追った人生にどれだけ価値があるのかとも思うし、それでも当時は満足感を得られたのも事実だろうとも思う。
    価値の基準に答えは無いけど、最後に満足したら正解だろうか?

    他人の基準を盲目的に取り入れるのは止めたい。

    人は60くらいで死んだ方が皆ハッピーなんじゃないか

  • 定年退職した元銀行エリートマンが、その後の人生を悩みながら進んでいく物語。リアルさが凄くて面白かった。

全65件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1948年秋田市生まれの東京育ち。武蔵野美術大学卒業。1988年脚本家としてデビュー。テレビドラマの脚本に「ひらり」(1993年第1回橋田壽賀子賞)、「毛利元就」(1997年NHK大河ドラマ)、「塀の中の中学校」(2011年第51回モンテカルロテレビ祭テレビフィルム部門最優秀作品賞およびモナコ赤十字賞)、「小さな神たちの祭り」(2021年アジアテレビジョンアワード最優秀作品賞)など多数。1995年には日本作詩大賞(唄:小林旭/腕に虹だけ)に入賞するなど幅広く活躍し、著書に映画化された小説『終わった人』や『すぐ死ぬんだから』『老害の人』、エッセイ『別れてよかった』など多数がある。元横綱審議委員で、2003年に大相撲研究のため東北大学大学院入学、2006年修了。その後も研究を続けている。2019年、旭日双光章受章。

「2023年 『今度生まれたら』 で使われていた紹介文から引用しています。」

内館牧子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×