真実の魔術師 (ハヤカワ文庫FT) [Kindle]

  • 早川書房 (2018年3月15日発売)
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  • 三部作の最終巻ではふたつの大きなイベントが進行します。

    ひとつは、シオニーの魔術師試験。
    2年の実習期間を終えて(最短ですね)、いよいよ最終試験に挑むわけです。
    記憶力がチートなシオニーですが、学校も2年、実習も2年……ほんとに最短で魔術師になろうとしています。
    しかしここで問題が!

    どうも、異性の指導者と実習生という組み合わせでは、ふしだらな事が起こりやすいらしく、それが教育委員会で問題になっているのです。
    スキャンダルでさえ新聞で報道されてしまうほど。
    幸い、シオニーとエメリーの仲は、アヴィオスキー先生しか知らないのですが、
    「エメリーはシオニーを愛しているから贔屓しているのだ」
    とは絶対に言われたくない!
    と、エメリーは考えます。
    そこでこれを絶対回避するために何をしたか?
    本来、採取試験は指導者が行うものなのですが、それをあえて別の折り師に頼む事にしました。
    しかも、エメリーを毛嫌いしている魔術師に。
    それは誰あろう、かつて学生の頃、エメリーが苛めた相手。プリットだったのです!

    もうひとつは勿論、切除師の問題です。
    1巻ではライラ、2巻ではグラスを撃破したシオニーですが、もうひとり残っていましたね。
    そうあのインド人です。
    グラスよりある意味では悪のインド人が、死刑にされる直前、脱走した、というニュースをシオニーは耳にしてしまいました。
    これでおとなしくしていられるようなら、まあ、シオニーではないわけです。

    個人的な意見ですが、シオニーのように、約束を守らず、自分のやりたい事に突っ走るような人は、仕事を任せる相手として信頼できるものではない、と思います。
    そういうシオニーの性格を知っているから、自分に黙って勝手なこと(勝手な追跡)はしないとシオニーに約束させますが、実はエメリー自身、同じような性質を持っている。それを知っているシオニーはエメリーにも同じ約束をさせて、プリットの家へ出発するんです。

    あ~あ。
    無理だって。
    無理、無理。
    ……やっぱり無理でした~!

    ふたりともそんな約束まもれっこないですからねえw
    というわけでふたりはまず、独自に相手を追い始め、最終的にはタッグを組んで戦う事になります。
    シオニーはなんと、紙の魔術の他に、精錬師、練り師、可塑師、玻璃師……切除師以外の全ての力を使う事ができるようになっていました!(チートすぎるw)
    これをうまく切り替えながら戦い、一方のエメリーはさすが熟練の折り師です。ラストのラストでは、とんでもない技を見せてくれるのです。
    かっこいいぞ。

    エピローグでは、読者お楽しみの大団円となるのですが、私は少し不満を残しました。

    エピローグで決着がつくのは、シオニーとエメリーの仲「だけ」なんですよ。
    シオニーが全ての魔術を使えるという事をどうするのか!
    これを知っているのは、まだ、エメリーとアヴィオスキー師だけで、決着はついていないんですよねえ。

    そもそも、この魔術の設定は大変面白いものだと思います。
    シリーズとして、もうちょっと続きを書いてほしいなあ、と思います。
    シオニーが最初の最初にエメリーの心臓の中で見た、シオニーとエメリーと子供たち……あれ、実際に見たいですよねえ。

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