無限大ガール (Kindle Single) [Kindle]

著者 :
  • Amazon Publishing
3.20
  • (9)
  • (21)
  • (43)
  • (15)
  • (3)
本棚登録 : 241
レビュー : 39
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (41ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 先日、10年以上愛用してきたウオークマンを落としてしまった。

    警察にもJRや東急の駅にも問い合わせたが出てこない。

    買い換える余裕などどこにもない。

    散歩の友を探していたある日、新聞記事で「AmazonAudible」の「ボイスブック」の存在を知った。

    「歩きながら小説その他いろんなコンテンツが読める、否、聴ける!」

    最初にダウンロードにしたのが「短編文学チャンネル」にあった本作品。


    主人公の相川早奈(あいかわ・さな)は、「日替わり派遣部員」の高校2年生。

    レギュラーが捻挫してしまったバレー部の友達に泣きつかれたのがきっかけ。

    テニス部、水泳部、ソフトボール部、園芸部、写真部。

    なんでもこなせてしまう器用さが彼女にはあった。

    次なる「日替わり」は演劇部。しかも主役の座。

    気軽に引き受けた早奈は、すぐに後悔する。

    その脚本を書いたのが、先輩・藤見だったからだ。

    「早奈には自分がないんだよ」

    中学生の頃から、好きで好きで大好きで、遂に告白を受け入れてくれた憧れの先輩。

    脚本家志望で、早奈には難しい話ばかり。

    デートしても話にうなずいているだけ。

    ファミレスでメニュー一つ自分で決められない早奈は、わずか4カ月で振られてしまう。


    「こんな依頼うけるんじゃなかった」

    後悔する早奈だが、自分の奥底にある本当の心に気が付く。

    「先輩とやり直せるかもしれない」


    「キャッツ」ならぬ「ラッツ」という作品。

    先輩らいし、ちょっと小難しい設定。

    人間の支配から逃げ出したいねずみの5人組のリーダー「ねず美」役に没頭し、なりきっていく中で、自分でも思いも寄らぬことに気がつく早奈。


    自分に自信がないこと。

    それでも何かに没頭できること。

    その中で、大事な何かを見つけていくこと。

    今の自分のままで、一生懸命に努力していくこと。

    痛快で、心の奥にあるちょっとしたコンプレックスに優しく語りかける、清々しい短編。

  • "自分がない"ことで大好きだった彼氏にフラれた女子高生の早奈が、頼まれた演劇部のミュージカル代役を引き受け、稽古を積んでいくうちに、自分の「虚無」との向き合い方を見つけていく…そんなお話。

    現代に生きる人の中で、自分が無くて苦しんでいる人って結構多いと思います。

    特に現代って色んな革新が日常的に起こっていて、そんな時代を生きる為に「受け身じゃダメだ。主体性を向上して〜」とか「働きかける力が大切で〜」みたいなことを言われて、その度に周りに流されて生きている自分が嫌になる…そんな息苦しさを感じている人も少なくないはず。私自身その一人です。

    でもこの作品は、自分がないって事を必死に正当化する事もしなければ、卑下して自虐的に語る事もしません。

    流れるように軽々と言葉が紡がれており、なんだか「自分がない事って、そんな深刻な事ではないんじゃないか…!?」と思えてきます。展開が超弩級の早さですが、それも読んでいて心地良い。

    「もはや自分なんてどうでもいい。あってもなくてもいい。今このときがあたしのすべてだ。一瞬一瞬を輝くことであたしは無限大ガールになる。」

    演劇で役にのめり込むうちに、彼女はこのような結論を出します。
    例え自分自身が空っぽでも、今この瞬間に"何か"を心の中に詰め込んでいきさえすれば、可能性は無限に拡がっているんだなぁと、非常に勇気付けられました。

    短くて読みやすいですし、読後感も非常に爽快。個人的に(この作品の)文体も好みです。

    森絵都さんの本は初めてでしたが、他の作品も読んでみたいと思わされました。



    ちなみに個人的に好きな部分↓
    「ぽっちゃり系が好きだと言われたら、三日で三キロ太った」

    「シェイクスピアが好きだと言われたら、親に借金をして本を買いまくった(まだ一冊も読んでない)」

    「モーツァルトが好きだと言われたら、朝から晩まで『運命』を聴いて、それがベートーヴェンの作と知ったときには泡を吹いて倒れそうになった」

    「巨乳が好きだと言われたら、ブラに詰められるだけパッドを詰めこんだだろうし、阿波踊りが好きだと言われたら足がつるまで踊ってみせただろう」

    この明るい軽さがイイんですよねぇ…

  • 本の整理をして、
    「次は何を読もうかな、、、」と思ってたところ、
    森絵都さんの図書がkindleのprimeに追加されているところを発見・・・!
    森絵都さんの本が好きなので速攻借りました。

    短文ならではの流れるような文のつながり、すっと心に入ってくる言葉選びが好きです。うん、言葉選びと言葉のつなげ方がととても好き・・・!

    恋愛をひずってしまうところ、「自分を持っていない」ことに落ち込むところ、悩みごとから逃げるためにわざと忙しくして考えないようにするところ、身に覚えのある事ばかりでした。「そうだよね、そう悩むよね、、、」と共感していましたが、自分と一つ異なるのは、最後には主人公が自分の足でしっかり立っていたことでした。
    安直に自分を褒めるほうにたなびくのでなく、自分の意志で、自分が一番輝けるところを選択して物語が終わったところがとても好きです。
    読んだ後の爽快な気持ちと、最後に主人公が自分の個性を認めて前向きな発想をしていたところがよい・・・!!!

  • テンポがいいので、さらっと読めるが総ページ数も少ないので、もう終わり?という感じ。テンポいいので、もう少しネズコになりきるところを詳しく書いて欲しかった。
    他人に合わせるのが得意で何でも器用にこなすので各部活に派遣でテンポラリー参加してた主人公。ずっと好きだった先輩と付き合うも4カ月で、君には自分がない。自分がない子と付き合うのは虚無と付き合ってるのと同じ。とふられてしまう。振られたショックから派遣部活を始めたが演劇部に支援を行った際に先輩が演出のミュージカルで才能を開花する。何にでも合わせられるのは無限の可能性を持ってる無限大ガール。
    虚無と付き合うっていう表現は好き。

  • こうと決めたら猪突猛進! 眩しいぐらいまっすぐな高校生女子が大活躍する、爽やかで甘酸っぱい青春小説の短編。

    高校二年生の相川早奈(あいかわ・さな)は「日替わりハケン部員」。きょうはテニス部、あすは水泳部、ソフトボール部、園芸部に写真部……。頼まれれば、臨時の助っ人として参加する。去秋、重要な試合を翌日に控え、レギュラーが捻挫したバレー部の友達に泣きつかれたのがきっかけだった。父親の長身と母親の器用さを受け継ぎ、運動神経に恵まれた早奈は以来、ひっきりなしにくる依頼に喜んでこたえ、〝ハケン〟を楽しんでいた。

    次に早奈に舞い込んだのは、演劇部部長からのSOS。10月末の文化祭でミュージカルを上演するのに、主演女優が演出家ともめて急遽降板し、代役をと懇願する。その演出家こそ、昨夏、早奈がたった4カ月だけの交際でフラれた元カレの先輩・藤見(ふじみ)だった! 失恋の痛みを引きずる早奈は引き受けるか、悩むが……。



    「自分がない」からこそ、誰にでもなれる。かつての恋人に批判された短所が、実は女優としての才能を開花させるものだったと気付き、自信をつける早奈。
    先輩の視線を釘付けにするために、さらに練習に打ち込み、最後はまさかの展開に。
    ジェットコースターのような展開の速さで、一気読みした。

  • 青春小説のようだけどなんとなく星新一のテイストを感じる内容で面白かった。

  • 続きどうなったのかな

  • あっという間に読み終わってしまうくらいの
    短い話。
    日替わりのハケン部員として、いろいろな部活の助っ人をしている高校生早奈。
    4年も片想いして、やっと付き合えた大好きな先輩に、
    「早奈には自分ってものがない」と振られた。
    ある日演劇部の助っ人に行くと自分を振った先輩と再会してしまうが、演劇を通じて自分を見つけていく。
    とっても爽やかで、若いっていいね!という話だった。

  • 自分の特技を見つけるまでの素敵なお話。テンポ良くて読みやすい。

  • 面白さももちろんあったけど、主人公の特技に辛さを感じた。相当厚かましい人間でなければ、空気を読まなければいけない状況や気持ちは共感できるものだと思う。空気を読みすぎるあまり、文字通りの演技(演劇)に目覚め、自分自身も役にのまれる主人公が印象に残った。

全39件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

森 絵都(もり えと)
1968年、東京都生まれの小説家、翻訳家。早稲田大学第二文学部文学言語系専修卒業。
1990年、『リズム』で第31回講談社児童文学新人賞を受賞しデビュー。2003年『DIVE!!』で小学館児童出版文化賞を受賞し、同作は2008年に映画化もされた。2006年、短編集『風に舞いあがるビニールシート』で、第135回直木賞を受賞。
その後も活躍を続けており、2017年『みかづき』で第12回中央公論文芸賞を受賞、2017年本屋大賞2位。同作は2019年にNHKでドラマ化された。それ以外にも、多数の文学賞を受賞している。

無限大ガール (Kindle Single)のその他の作品

無限大ガール Audible版 無限大ガール 森絵都

森絵都の作品

外部サイトの商品情報・レビュー

ツイートする