「青のフラッグ」の第4巻は、夏休みを舞台に、キャラクターたちの人間関係と心の動きが繊細に進展する、次へのステップを踏むための助走のような巻だ。
この巻では、太一、トーマ、二葉、真澄の4人の高校生が抱える、親友以上の気持ち、片想い、憧れといった複雑な感情が描かれる。
特に深く描かれるのは、太一へのトーマの親友以上の気持ち、太一に気持ちが向き始めた二葉、二葉が気になり始めた太一、そして二葉の幸せを望みながらもそれだけでは満たされなくなった真澄、それぞれの複雑な「好き」の形だ。
4巻のハイライトとしては、トーマと真澄の苦しみが挙げられる。
トーマは、誠也兄から進路について聞き出すよう言われた太一に対し、やりたいことは「自由に生きること」だと、内容をぼかしつつも本音と弱音を吐く。トーマが望むのは、好きなことを好きなだけ好きと言えて、誰からも否定されないで生きること。
彼の不自由さは、「みんなに好かれる自分」(周りからの期待)と「太一を好きな自分」(本当の姿)を同時に抱えていることに起因している。さらに、本当の姿を晒すことで「愛する人を傷つけるかもしれない」という葛藤も抱えている。「自由に生きたい」。これが、重要なキーワードだ。
一方、真澄もまた、自身の指向に関わる深い悩みをトーマに吐露しており、トーマと同じく「自分らしく生きることの難しさ」を激しく訴える。真澄は「私がなりたい自分はどうしてこんなに人の目を恐れなければいけないの?」とトーマに問う。
彼女の切ない感情も詳細に描かれ、二葉の幸せを誰よりも望む気持ち、すなわち「あの子(二葉)が笑っている時に隣で笑っていたかった」という思いと、それだけでは満たされない自分自身の気持ちの間で葛藤する。好きな人の幸せを願うだけで良かったはずなのに、自分の幸せも捨てられないという感情。
「普通」であれば当たり前であるにもかかわらず、「普通と違う」ことで、自由に生きることがいかに難しいかという苦しみが描かれた。
そして、これらの複雑な感情が、太一の誕生日を祝う花火大会という一夏の夜のクライマックスで切なく交錯する様子が、この巻の大きな見どころとなっている。トーマや真澄の苦しみに焦点を当てた、内面掘り下げの一冊。