自動人形の城 [Kindle]

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  • 東京大学出版会
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感想・レビュー・書評

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  • 先日、初めて自分でVBAを組んでみた。
    その経験があったうえでこれを読んだからか、頷くことしきり。
    そしてストーリー後の解説も読み物として面白い。
    仕事のできる人の行動をコピーしたら、仕事のできるロボットができるか?仕事のできる人はむしろ状況に即してその時々で違った行動が取れるからできる人なのであってその行動原理はコピーできないのでは?という身も蓋もない現実。

  • 魔法使いの弟子が呪文を学ぶ、という形でコンピュータの概念を語るシリーズの続編的作品。
    ある王国のわがままな王子。魔法使いの策略で、家臣団が「なんでも言うことを聞いてくれる」人形に置き換えられてしまう。ということで、「自然言語による命令を受け、それを実行する機械を実現しようとするならば、多かれ少なかれ、避けては通れない問題」(P268)に直面することになる。

    「おなかがすいたんだけど」と言えばすべてしつらえてもらえていた勉強嫌いの王子が、「食べ物を作れ」という命令の伝わらなさにさんざん苦労する。過去にプログラミングで遊んだ人ならわかる「あるある」的失敗談が結構笑える。そして城の混乱を知った謀反の動き。衛兵たちに「敵」を定義して「守らせる」こと。こうしたプログラミング技術的な話から始まって、「勉強」とは何か、人はいかにお互いの知識や信頼関係を前提に言葉をはぶいているかなどを説明していく。

    キッチンからテーブルにスープを運ばせるときに「この皿をテーブルへ」というだけでは、こぼさないようにそっと動かすことをしないのが機械。「あとでこのスープをおいしく食べるため」という目的・本質への理解なくしては、指示は狙い通りの効果を生まない。こうしたことから王子がいつしか、「共感」「感謝」、さらには「自己と他者」の関係を知っていくプロセスは感動的。

    過去の著作に比べると断トツの読みやすさ。

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著者プロフィール

川添 愛(かわぞえ・あい):1973年生まれ。九州大学文学部卒業、同大大学院にて博士号(文学)取得。2008年、津田塾大学女性研究者支援センター特任准教授、12年から16年まで国立情報学研究所社会共有知研究センター特任准教授。専門は言語学、自然言語処理。現在は大学に所属せずに、言語学者、作家として活躍する。 実績 著書に『白と黒のとびら』『自動人形の城』『言語学バーリ・トゥード』(東京大学出版会)、『働きたくないイタチと言葉がわかるロボット』朝日出版社、『コンピュータ、どうやってつくったんですか?』(東京書籍)『ふだん使いの言語学』(新潮選書)など。

「2023年 『世にもあいまいなことばの秘密』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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