日本教の社会学 [Kindle]

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  • ビジネス社 (2016年12月1日発売)
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  • 日本は不思議な国で、
    学校教育で宗教を教えることは、あまりしない。
    一種タブー化している。
    また、宗教に対して、複雑な感情を持っている。
    学校教育に、戦前国家神道を組み込んで、
    その結果、大失敗したと思っているからだ。

    ただ、宗教と教育というのは、
    切っても切り離せないモノだということを、
    学んでいない。というか、意図的にやっている。

    ここら辺が、現在の日本の教育の
    「根本的なちぐはぐさ」を生んでいるかもしれない。もちろん私も小室直樹も、今こそ戦前の国家神道を教えよ!とは一欠片も思っていない。

    少なくない日本人は、宗教なんて、よくわからない。宗教なんて、恐ろしい。
    それが「普通」だと思っている。

    宗教は個人に規範と道徳を与えるが、
    多くの日本人にはそんなものはない。
    小室氏は、それをアノミー、無連帯と呼び、
    戦後、日本人が、バラバラになった有様の病巣を、
    そこに求めている。

    個人、個人が繋がりたくても、その手段が、
    多くの日本人にはない。
    ただ、「バカ騒ぎする」ことだけが、繋がれる道具だと思っている。

    じゃあ、「宗教」を持てばいいかというと、問題はそれほど単純じゃない、
    日本人は、みな「日本教」の信徒であるからだ。
    これが一種、より深刻な問題として、日本人にのしかかっている。

    じゃあ、いったい日本人は、何を基準に行動しているかというと、
    明確なものはない。
    日本人の若い人が、世界的に見て、
    異常な不安を抱えているのは、誰でも知っているが、
    その原因にあるものが、
    行動規範というものが、日本にはないからだ。

    何が良くて、悪いのか、そんな当たり前なことも、
    多くの日本人からすれば、「わからない」のである。
    これは、考えてみれば、非常に恐ろしい。

    もっと恐ろしいのは、
    何が良いのか、悪いのか、その時の「空気」で決める。
    日本型の集団犯罪の動機を見ると、個人の動機が見えにくい場合が多々ある。
    その時、その場のノリでヤリマシタという場合がかなり多い。
    この意味で言えば、誰だって、犯罪者になりえる。

    「あの人もやっていたから、私もやりました」
    「あの空気に逆らえず、ずるずると、やってしまいました」

    空気が日本を支配し、日本人は、空気を読むことを、24時間行わないといけない。

    山本氏は、日本人は皆、空気を読むことを根本教義とする「日本教」の信徒という。

    つまり、「空気」を読めることが、日本人の日本人たるゆえんで、
    読めない人は、日本人とは言えなくなる。

    その空気を読むことを、コミュニケーション能力と言い、
    その能力の高い低いが、学校や企業の集団、組織で「うまくやる」、
    最も重要な能力の一つとなっている。また、日本における就職も、
    専門知識を重視されるわけでなく、組織、集団の中でのコミットメントを、
    重視される。

    当たり前だが、集団や組織を活性化・発展させる上で、
    集団や組織が目指す「目的」は非常に大事になる。
    その目的は、広い意味で、集団や組織を形成する個人へ「利益」として、
    還元されるべきものだろう。

    しかし、日本では個人の「利益」よりも大事なのは、
    「空気」を読むことで、個人の利益よりも、
    集団、組織の維持を「目的」としている所に、
    数々の悲劇の種が隠されている。

    少なくない人が、日本社会に違和感を持つときに、
    この「空気」を読むことへの嫌悪感を持つ。
    なぜなら、それは、全く論理的ではないからだ。
    合理的な思考をしていれば、少なくない人が疑問を持つ。

    日本での人間関係は常に緊張状態を強いられ、
    多くの理不尽を生んでいる。
    緊張したくなければ、徹底的に空気を読んで、
    組織、集団に染まらなければいけない。

    個人の意見や論理的整合性は、あまり必要とされていない。
    あくまでも、個人に求められるのは、組織・集団を維持する
    ための「空気を読む」能力である。

    今、日本を滅ぼそうとしているのは、
    この日本教かもしれない。
    日本は、歴史上、外部からの圧力によって変化したが、
    変化の仕方は、全く変わらず、その時の「空気」によるものだった。

    現在、起こっている社会的変化は、
    おそらは、多くの日本人を破滅と導くだろう。
    その兆候は、噴出している。その問題を外に求めるのは、
    やはり、日本人らしい行動様式かもしれない。

    先の大戦で、空気を多分に読んだ国民は、合理的な行動をして、
    結果、世界の文脈では、破滅的な不合理な行動をした。
    そして、取り返しのつかない犠牲を生んだ。
    戦後も、その’文脈と根本的には変わっていない。

    今も、その時の空気と同じことが日本で発生している。
    ばつが悪いのは、国民自身が、率先して、空気を読んで、
    破滅に行こうとしていることだ。
    これだけ、クレージーな国は、
    世界にはあまりないだろうと思う。

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著者プロフィール

1921年、東京都に生まれる。1942年、青山学院高等商業学部を卒業。野砲少尉としてマニラで戦い、捕虜となる。戦後、山本書店を創設し、聖書学関係の出版に携わる。1970年、イザヤ・ベンダサン名で出版した『日本人とユダヤ人』が300万部のベストセラーに。
著書には『「空気」の研究』(文藝春秋)、『帝王学』(日本経済新聞社)、『論語の読み方』(祥伝社)、『なぜ日本は変われないのか』『日本人には何が欠けているのか』『日本はなぜ外交で負けるのか』『戦争責任と靖国問題』(以上、さくら舎)などがある。

「2020年 『日本型組織 存続の条件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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