「気づく」とはどういうことか ──こころと神経の科学 (ちくま新書) [Kindle]

  • 筑摩書房 (2018年4月10日発売)
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  • 気づくということについて、こころの動きを主に神経に関連するものとして述べた本。
    こころを感情、心象、意志と分けることから始まり、神経ではどのような動きがあるのか、こころと神経から知覚することと認識することについて患者の事例や哲学とも織り交ぜながら論じていくという構成である。

    神経の構造の章はひたすら仕組みの説明だったので軽く読み飛ばしてしまった(著者もここは読み飛ばしても理解できると書いている)が、他のところはもう少し概念的な部分が入る。
    ヒトは認識していないことに存在を認めることはできない。そこに対象があるだけではダメなのだ。これは、脳に欠陥のある患者等の事例からわかることである。認識する、五感等身体の器官で察知し、それが自分の過去の知識や経験等に結びついて、対象に気づくということである。
    過去の経験や知識は、自覚して覚えていることの他、意識を向けていない身体の動き、例えば呼吸をする、手を開く、脚を前に出す等を含む(こうしよう、とは思うが、そのために指の関節を開いて…とは意識しないというような神経過程のこと)。どんな作業、どんな動き、どんな経験もヒトは無意識に記憶しているという。気づきを得るためのものと経験や知識と言うのは、そのような無意識的なものや言語化できないものも該当する。スポーツや器楽の習得を考えればわかる気はする。

    そう考えると、大きく捉えれば、人生どんな経験も無駄ではないということ。現代は殊更すぐに答えが求められる時代で、ネットやAIですぐさま回答が得られる。会社の仕事だって、昔は先輩の仕事を見て盗めだとか、失敗も含めて自分の力で経験して身に着けろ、というのが当たり前だった。しかし少なくともホワイトカラーは、後輩指導においてはリスクヘッジのためマニュアルを整備し手順はきちんと教えて正解にすぐにたどり着けるようにするというのがよいとされてきている。これは世間のスピードについていくための適応とも言えるが、同時に余計な動作や作業を省くということになる。その作業の目的を達成するということだけ見れば確かにそのやり方が有効である。だが、その人の「気づき」を得るための経験としては、量的に減るため領域が狭くなる。無意識の経験を積まなくなるということになるからだ。作業により動かす体の動作だけでなく、その時の空気、感情等、言語化できないような空間まるごとの経験をする機会が減ることで、その人の意識に入る世界、気づく領域、生きる領域も減るのではないか。視野狭窄を超えたことに陥るのではないかと感じている。


    実際、電車の中で異常な強さで身体を押し付けてくる人がいるという経験を何回もしていて、その人は大抵スマホを見つめている。押すほうも痛いだろうに、その姿勢から動くことはない。こちらが身体を動かすと初めてその事実に気づいたように座りなおしたりするのだ。スマホに集中しすぎることで気づくための経験どころか、五感も鈍って気づくこと自体ができなくなっているのかなと思わざるを得ない。
    それとも集中力とスマホを使い、身体の外側と内側を一体化してコア感情のみで脳内を満たしている状態・・・なわけないか。

  • 「気づく」とはなにかについて考察をしたもの。第一章:こころは神経過程から創発されると考えられる。第二章:こころは、感情、心像、意思という心理過程から成り立っている。第四章:記憶には、意識化されない記憶、意識化される記憶、意味の記憶に分けられるのではないか。第六章:こころは、神経過程から創発する独特の現象で、自己回帰性という性質を持っている。現象が現象を経験するという円環の関係になっている。第七章:こころは、瞬間的にその時その場で立ち上がる過程だ。分離脳患者では二つのこころが発現し、お互い自身を知ることはできないという。神経回路のネットワークが複雑になれば自然にこころが発現するのだろうか?そしてその臨界条件とはなんだろうか?と想像してしまう。

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著者プロフィール

現在、神戸学院大学人文学部教授。
1939年兵庫県生まれ。神戸大学大学院医学研究科修了。医学博士。ボストン大学神経内科、神戸大学医学部神経科助教授、東北大学医学系教授を歴任。専門は神経心理学。失語症、記憶障害など高次機能障害を研究。
著書:『脳からみた心』(NHKブックス)『神経心理学入門』(医学書院)『ヒトはなぜことばを使えるか』(講談社現代新書)『「わかる」とはどういうことか』(ちくま新書)『記憶の神経心理学』(医学書院)

「2008年 『知・情・意の神経心理学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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