スタートアップ・ウェイ 予測不可能な世界で成長し続けるマネジメント [Kindle]

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  • 新規事業の立上げに関する教科書として有名らしいリーン・スタートアップを書いた著者の2冊目。

    こんな事例から始まるお話です。
    GEでは、ディーゼルと天然ガスのデュアルフュエルエンジンを開発する総予算数億ドルの5年計画が検討されていた。シリーズXと名付けられたこのエンジンは、発電から機関車まで、幅広い用途が考えられる。
    「すみません、何に使うのかもう一度教えて下さい。船に載せるのですか?飛行機ですか?列車ですか?」と問いかけたのが筆者。
    筆者は、幅広い用途で顧客を絞れなければ、“開発ステータス”のまま長い期間が経過してしまうので、MVPを作ることを提案。移動せず、防水を考えない据え置き型のデュアルフュエルエンジン発電機であれば、開発期間を5→2年に縮められることがわかる。さらなるヒヤリングで、試験期間や製造ライン整備も含めた開発期間は2年だが、初号機ができるのは1年で十分とわかる。そして、それを欲しがっている顧客がいることもわかる。そうであれば、開発しなくても、既存の製品の改造でも顧客に納品できることがわかる。この方針ですすめることにより、市場の反応を見ながら、売上を立てながら、開発をすすめることができるようになった。
    *きれいすぎる話なので怪しいが、GEの名前を出して書いているので、完全な嘘ではないと思われます。

    全体としては、スタートアップのような事業立上げの方法(仮説検証を繰り返し、MVPを作りながらビジネスを・業務を進めていく方法)を会社に導入するためにはどうするべきを紹介する本です。
    第一章は、新規事業担当者の仕事の仕方に関するアドバイス(アントレプレナーの仕事の進め方)が書かれています。例えば、
     資金と期間に上限を設けて、その範囲内で実験を繰り返す。スタートアップなら、投資家に約束した期間内に一定の成果をあげてないと“終了=倒産”。大企業でも、プロジェクト単位では同じ考え方でダラダラやらない。
     満足させるべき顧客課題があるときに、資源不足でも仮説検証をすること。それにより、本質に絞った検証ができる(せざるを得なくなる)。
     顧客がいないのは酸素がないようなもの。フィードバックをくれる存在も、資金を出してくれる存在もいなければ、そもそもそんなプロジェクトはやっていけない。(特にスタートアップは。大企業での必要性はそこまでじゃないが、できるだけ顧客を捕まえてから走るべきだと、私は思う)
     MVPの採点表の紹介:要となる仮説と、MVPを並べて、どのMVPが一番効率よくたくさんの仮説を確認できるかを評価する。これで、打ち手の優先順位を決める

    第二章以降は、スタートアップのような事業立上げ方法や考え方を、どうやって企業文化・風土にしていくか?という仕組みづくりの話。

  • 前著『リーン・スタートアップ』で、予測不能な不確実な時代における仮説検証型の事業開発の手法を確立したエリック・リースが、ベンチャーから大企業まで共通に使えるマネジメント手法として、アントレプレナーシップを企業内に埋め込む『スタートアップ・ウェイ』をまとめた。

    新事業などのイノベーションをマネージするには、従来のマネジメントと切り離した「特区」で、やり方も評価も変えてやるというのが定説であるが、『スタートアップ・ウェイ』では、従来型の「総括マネジメント」とスタートアップ型の「起業マネジメント」を共存させるとしているのがユニークである。そのためにアントレプレナーシップによるマネジメントを全マネジャーが理解し、かつ全社員がアントレプレナーのように行動する機会を与えることを提唱している。

    対象としている企業は、GE・トヨタのような大企業、シリコンバレー型の DropBox、AirBnB、インテュイット、さらにはもっと初期のシード段階のベンチャーなど、規模を問わない。ベンチャーでもスケールする時には、総括マネジメントとの両立が求められ、一方、大企業では官僚的になり過ぎた従来型総括マネジメントの中に、どのように起業マネジメントを持ち込むかということで、共通の課題を抱えている。この本では、GE を中心として、さまざまな企業の変革の過程がストーリーとして語られる。いかに「スタートアップ・ウェイ」を採用し、活用していったか、そして会社の文化としてそれを根づかせていったか。

    GE は起業マネジメントを、ファストワークスというプログラムとして全社展開している。その一番最初の時、リーン・スタートアップの説明を初めて受けた時の、従来型マネジメントの経営幹部たち、たとえば技術・財務の役員・マネジャーや、品質管理のシックスシグマ・ブラックベルトの懐疑的な態度はよく理解できる。「ディーゼルエンジンの開発に 5年かかるのは当然。1日に50回改修できるソフトウェアと同じことが、できるものならやってみろってんだ」

    そういう重役・マネジャーたちが、ワークショップを通じて態度を軟化させ、もしかしたら特定の顧客になら、機能を絞り込んだエンジンの MVP(必要最小限の製品)を使ってもらえるかもしれない、一つのプロトタイプだけなら既存エンジンの焼き直しで数ヶ月で MVP が作れるかもしれないと、ポジティブなコミュニケーションに変わっていく様がビビッドに描かれている。ポイントは「5年後の売上・30年後の計画があるが、その『予測』は正しいのか?かつて正しかったのか?」というエリック・リースの問いかけであった。「予測」が正しいかわからない不確実な状況において、仮説・検証で学んでいくことが必要ではないか…。

    スタートアップ・ウェイをささえる 5原則:
    (1) 継続的イノベーション
     組織の上から下までさまざまな人材と創造性を活用し、新たなブレークスルーを見つける方法
    (2) スタートアップを仕事の原子単位とする
     実験の出来るチーム、すなわち社内スタートアップを従来と異なる組織構造で支えなければならない
    (3) 欠けているのはアントレプレナーシップである
     追加したスタートアップは従来の手法とは相いれない新しいやり方で管理する必要がある
    (4) 再創業
     組織の構造をここまで変えるのは、再創業に等しい。
    (5) 継続的変容
     一度変容して、そのやり方を会得すれば何度でも変容できるし、変容を繰り返すべきである。

    全てのチームをスタートアップ原則に基づいて再編しなければならないわけではない。スタートアップチームが機能できるようにすること、どの社員にもアントレプレナーのように考え、行動する機会を与えることである。マネジャーは全員が起業マネジメントに通じていなければならない。他と違う働き方をしている理由・今までと違う基準での評価を理解しなければならない。人事・IT・法務・コンプライアンスといった門番部門が、スタートアップの邪魔をしないようにしなければならない。

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