早春 デジタル修復版 [DVD]

監督 : 小津安二郎 
出演 : 淡島千景  池部良 
  • 松竹
3.40
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感想 : 7
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Amazon.co.jp ・映画 / ISBN・EAN: 4988105073937

感想・レビュー・書評

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  • 1956年公開作品。小津安二郎監督作品は3本目です。感情を抑えめな台詞のやりとり。岸恵子さんは、違いましたが。舞台は戦後と高度成長期の間の東京。主人公が勤める丸の内の風景と郊外の風景が対照的です。同じ通勤電車に乗り合わせた男女が仲良くなり休日にはハイキングに行く。いい時代だなあと思います。戦友たちが飲みながら歌を歌う。酔っ払って、そのまま友人の家に行って泊まる。「サザエさん」の世界です。もちろんノスタルジックな部分ではなく、サラリーマン生活の辛さ・厳しさも描かれています。多分、熱烈な恋愛の後、結婚した二人が倦怠期を迎え、すったもんだするという物語。私的には今は亡き名優たちを観れたことが嬉しいです。笠智衆さん・浦辺粂子さん、もちろん若いけど、おじいちゃん・おばあちゃんなんですよねえ。

  • 長屋の屋内→長屋の屋外→駅のプラットフォーム→勤め先の建物、と冒頭10分で移り変わる。
    人が数人集まって酒飲むところとか、切り返しのたびにありえない角度で。
    カメラ角度が90度と180度の積み重ねで。
    ポルカの音楽に合わせて。
    またも視聴開始直後には、どうかしてるカメラワークだとくらくらしたが、さすがに小津味として慣れてきた。
    いや、もう全編そうだから。

    で、絶対に書き残したいのは、淡島千景の身体のエロさ!!!
    というか、腰というか……お尻の存在感。うおー!!!
    取り乱して失礼。
    失礼を重ねるようだが、岸惠子演じる金魚も、オキャンでキュートで、でやっぱりエロくて。
    45分くらいで、お好み焼き屋にて、岸惠子から池部良にモーションかけるのだが、卓上のビール瓶をよけておいて、可愛い喋り方で抱っこをせがんで、接吻……この一連の動作に、うおー!!!
    なのに、46分で迎える翌朝、池部良、つまらんというかうんざりというかやっちまったというかな態度で、そっけない。
    不倫セックスの、興奮と、倦怠と、なんと「朝の賢者モード」を想像して、うあー……。
    どれもまざまざと「わかる」ので感情かき乱されたわけだが、悲しいけどこれ、想像なのよね。

    泥酔した戦友ふたりが家に来て二階に寝るし、階下では妻が、明日が亡き子の命日だと言うし。
    ここで結局二階にいくあたりが、わだかまりに直面できない傾向を表していて、わかる……。
    (少し前に仲人の笠智衆も泊まりに来ているシーンがあって伏線というかよくある慣例という脚本だと思うが、「サザエさん」や「ドラえもん」で、酔った来客に妻ウンザリはあっても、さすがに宿泊はなかなか)
    で、会社では転勤の話が持ち上がって。
    劇としていいタイミング。

    後半に入っているが、ワイシャツに紅(べに)ついてるわよ、こないだもハンケチについてたわね、と妻の詰問(詰め甘すぎ夫)、口論には決してならず、別の部屋で無言になって外を見るところで、屋外から祭りの音が。
    いや、夫が帰ってくる前からそういえば祭りの音が聞こえていた。
    寝ながら団扇を扇いでいたくらいだし。
    こういう、画面内の動作と、画面外の情報が、季節や情感を導いているし、それこそ黒澤明「羅生門」での「ボレロ」みたいな効果も出している。
    そういえば、オフィスのタイプライターの音も、やけにリズミカルで。
    と思い思い見ていたら、昨晩見舞いに行った病人が死んだ、その葬式に行ったら、なんとポルカが!!!
    先日見た「風の中の牝雞」に対して、黒沢清が死者が云々と言っていたのが印象的なので、引っ張られているのかもしれないが、この辺でまた黒沢清を連想したりもした。
    というのも、表面的には、確か「カリスマ」で人が殺された直後に、ヒッポコヒッポコみたいな滑稽な音楽を流していたし、死んだ同僚だけでなく、おそらく数年前に疫痢で死んだ子供の影が、夫婦の不和の原因になっている。
    画面に映っていない幽霊が劇に作用している、と。

    で、妻は友達のもとに転がり込む。
    その友人は勤めから帰宅すぐに手酌でビールを飲んで、自分も浮気されたよとカラッと相談に応える。
    なんとこの友人、黒澤明「素晴らしき日曜日」の中北千枝子。(いきなり下着姿!)
    あの映画では甲斐甲斐しく貧乏な恋人を励ましていたというのに、結婚したら浮気されたって辛いね……と、作品を横断して想像上の同情をしてしまった。
    ちなみに淡島千景って、1951「麦秋」、1952「お茶漬けの味」では、このカラッと相談する友達ポジションだったが、1956本作では役柄をスライドして主役になったわけだ。
    個人的に、小津映画の中で、こういう女友達との交流が描かれるのは、とても嬉しい。
    まず作品内の人間関係の網から、スポッと抜ける感じがして心地よいし、次に女優を知る機会にもなるから。
    もう少し広げれば、男同士の語らいって小津映画においては戦争や世相やサラリーマンの悲哀やであるのに対し、女同士の語らいは夫のことであったりして内容は決して軽くないにも関わらず、語り口がサッパリしているので、清涼を感じる。

    妻に知らせぬまま転勤話を進めて、逃げないでと責めるのは、金魚。
    往復ビンタ! ……いいですね。
    このへんで思い出したのが、「姦通罪」について。
    確か太宰治だか川端康成だかの文脈で、これこれこの作品で不倫が描かれたのは、1947年の日本国憲法施行で姦通罪がなくなった世相を受けてのことだ、ということだったように思う。曖昧。
    で本作は1956年……しかも姦通罪って基本女性に対してだった……なるほどさすがに無理筋な連想だったな。

    終盤、転勤直前に夫が行ったバーにて、東野英治郎が!
    黒澤明「用心棒」の居酒屋の権爺が一番強烈に記憶に残っているが、そういえば小津「東京物語」でもちょっと、「秋刀魚の味」では風采の上がらない教師として、出ていた。
    こういう、たまたま飲み屋で行き合わせた人の語りを聞いて、何かきっかけになる、わけでも決してなく、といって切り捨てるべきでもない、味わいが、小津映画には時々あるし、小津映画に限らずある。
    パッと思い出したのが相米慎二「風花」にて、温泉宿の親父:柄本明って本筋に全然関係ないのに、彼が座頭市を余興で演じるシーンが強烈。
    こういうところに宿る何かがある。
    転勤直前にさらに、笠智衆が夫の相談を受けて、「いろんなことがあってだんだん本当の夫婦になるんだよ」と、いかにも本作のテーマらしき台詞を吐く。
    単身転勤してしばらく勤めていると、妻が汽車で来て、仲直り。
    笠智衆の仲人パワーも働いていた。
    ラストカットが、煙突からの煙。
    おそらく込められた意味としては、この映画内で描かれたことは、数年かけた亡き子の喪の作業であったし、夫婦の新生を寿ぐものだ、という感じか。

    でも待って。
    不倫セックスって「そうとうイイ」って聞く。
    あんなにキュートな岸惠子と、一晩で(満足通り越して)うんざりって……あり得る?
    むしろこの映画が始まる少し前に、余罪あるんじゃね? 
    と邪推したりして。

    もうただのメモだが、何だったかの落語だったか、夫婦関係がうまくいかない、何らかの夢幻的経験を経て、倦怠していた嫁と向き合って和解する、みたいな話があって、その不和の根本には実は子の死があったのだ、和解の後には次の子を設ける可能性がある、という話を、確かサンキュータツオのポッドキャストか何かで聞いて、それが「芝浜」だと思い込んでいたが、いま検索してみたら全然勘違いだったとわかった。
    それを聞いた当時の自分がビビッドに感じて、大事に思っていたので、いつか探し当てたいのだが、本作を見てそれを思い出した、からといって、本当にある話なのかどうかもわからないので、まあメモしておく。

    翌日追記。
    やっぱり芝浜だった。
    TBSラジオ 東京ポッド許可局 2016年1月10日①「芝浜論」
    https://kamadarai.seesaa.net/article/2016-02-15.html
    https://memushiri.hatenablog.com/entry/20170103
    ちなみにサンキュータツオの相方である居島一平も出ているYouTube
    【早春】居島一平・坂本頼光の暗黒迷画座 第68回【映画紹介】
    https://www.youtube.com/watch?v=-Cu7cj2gzq4
    も面白い。
    踏み込んだブログ
    https://ameblo.jp/kusumimorikage/entry-12075084516.html
    も。
    一日経っていろいろ思ったので箇条書きでメモ。
    ・ラスト、突き立った煙突と、電車ピストン音の象徴って……(くそっ、しめつけてきやがるぜ)。
    ・淡島千景のお隣さん(杉村春子)が、うちの亭主だって浮気してたけど、今じゃ鰹節といでるわよ、という夫が、宮口精二! 「七人の侍」の久蔵が、しょぼんとして刀を研ぐのではなく鰹節をと考えると笑える。
    ・しかもそういえば泥酔した友達だって、加東大介。七郎次。この人は実際に戦争帰りらしい。
    ・その戦友会もまた、おじいさんばかりではなくて、若手が集まっているので、戦後10年ってこういう感覚だったのだな。
    ・にしてもサラリーマンの同僚が集まってうどん会を開いたり、交流が密だね。終盤の送別会で眼帯をした娘がいたが、妙に記憶に残る。
    ・あとお好み焼き屋さんって、個室だったな。
    ・音楽については、黒澤明「野良犬」からの影響があるらしい。音楽担当の斎藤高順の証言。

  • 小津安二郎監督初鑑賞。
    浮気のあった夫婦の機微を描く。舞台が蒲田、京浜東北線沿いで、奥さんの実家も五反田と、ものすごく親近感があった。昔こんな風景だったんだな…と地元民として鑑賞していた。
    なんにしろ交流範囲が密というか、夫婦もよく相手の会社の人や知人、通勤仲間のことまで知っているなあ。というか通勤仲間となって遊びに行けちゃうサークルがあった、という文化が驚きでした。今は無き昭和っていう時代が覗けて面白かった。

  • 小津の映画には珍しく少しシリアスな感じ。池辺良はイケメン、岸恵子はかわいい。都心の丸の内で働くサラリーマンの生活だが、自宅に風呂がないところなど,時代を表す。単身赴任は今も昔も。最後は安心できる、やっぱり小津映画、いいなぁ。

  • 淡島千景も岸恵子も、笠智衆だって若いのに、浦辺粂子はこの頃からずっとおばあさんなのか?
    八百比丘尼か?

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著者プロフィール

日本の映画監督(1903~1963)。日本映画を代表する監督の一人。サイレント映画時代から戦後までの約35年にわたるキャリアの中で、原節子主演の『晩春』(1949年)、『麦秋』(1951年)、『東京物語』(1953年)など54本の作品を監督した。ロー・ポジションによる撮影や厳密な構図などが特徴的な「小津調」と呼ばれる独特の映像世界で知られる。親子関係や家族の解体をテーマとする作品を撮り続けた。黒澤明や溝口健二と並んで国際的に高く評価されている。

「2024年 『小津安二郎発言クロニクル 1903~1963』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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