- Amazon.co.jp ・電子書籍 (287ページ)
感想・レビュー・書評
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※間違えて電子図書で登録してしまいましたーー。
ネットで話題になっていた筒井康隆の実験的小説。
主人公は作家の佐治勝夫。だが佐治を含める登場人物たちは自分が小説の登場人物だと知っている。
佐治は、評論家の津田得治から日本語を一音ずつ消してどこまで小説が成り立つかを試してみようと提案される。
すでに一音消えているんだよ。気がついたかい?
章ごとに「世界から『あ』『ば』『せ』が消えている」など、使えない文字が表記される。章を重ねるごとに使える言葉はなくなってゆく。
「あ」がなくなれば「朝起きて、朝ご飯を食べて、あなたに愛を伝える」なんてこともできなくなるし、「つ」がなくなれば「津田得治」という人物は消えてしまう。
「ご」がなくなれば「ご飯」を食べられずに「米から炊いたもの」を食べることになる。
このように置き換えられた言葉から元の言葉を想像しながら読んでゆくのがなかなか楽しい。
途中では「随分音が消えたので、できる限りの表現で情欲場面を書いてみよう」「自伝を書いてみよう」「小説の書き方を解説してみよう」などお題が出てくる。
この「小説の書き方スピーチ」は、「で」「す」が使えなくなった後なので語尾が「〇〇なのじゃ」「〇〇だがの」という喋り方になっている。この場面はもう爆笑しながら読んでしまった。小説の書き方自体は真面目なことを言っているはずなんだけど、喋り口調がや置き換え言葉が面白くて面白くて内容が頭に入らなかったわ(笑)
情欲場面は…かなり長いんだがここも笑えた。たしかに性行為描写ってもともと仄めかし表現や置き換え言葉を使って曖昧に、想像力を掻き立てさせる方法を使いますからね。ある意味遠回しに遠回しに言っても一番無理がないのが情交場面なのかも知れない。
実験小説のため作者も試しながら話を勧めたのだろう。日本語表現はどこまでのことができるのだろう?言葉を言い換えることによりものの存在や、人間のアイデンティティが変わるのか?というような考察が行われている。
現代語と古語って使われている音が違うこと、「行為」など書くと「こうい」だけど発音は「こおい」に近い言葉が結構あるんだとか、物の名前というのはものを表すだけでなくものの状態をあらわしてもいるということ。
人物が消えるのは、その人の名前の文字が消えたときだ。だから名前を知らない人は消えずに残る。すると名前を知っている人は名前と同時に消えるけれど、名前を知らないどうでもいい人はいつまでも残ってしまうのではないかという矛盾。
章ごとに音が減ってゆくのだが、小説として成り立っているのは59章で残っている言葉が「い/か/が/た/だ/の/ん」のみになったところまでかな。
<快感。良い高台だ。眼科の医院。花壇の開花>まあこのくらいなら主人公が見ている光景として成り立つ。日本語は7音あれば小説として通じる言葉ができるんだろうか。
なお、タイトルの意味だが、主人公の娘が消えた時に「たしか娘は高校生だったがもう残像しか残っていない。せめて化粧をしなかった娘の残像に口紅をひいてみよう」と考える場面。人は好きなものが消える時にそれを美しく飾ろうとする。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
言葉が消えていく世界のお話。「あ」が消えると「愛」という言葉も「あなた」という言葉も消えていく。物語自体は淡々と進んでいくんですが、これは最初にあの言葉が消えているから?逆に淡々としていなかったらこりゃかなり恐ろしい世界だなあ。読みやすかったです。
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作家の挑戦と自己満で、読んでる方はストーリーがどう進んでいるのかわからないし読むのが苦痛。
残された文字だけで文章を構成するから大変なのは分かるけど、残った文字で表現出来る内容を書いただけでストーリー性が全く無い。 -
最終的にはどうなるんだろうと想像しながら読んだ。30くらいの音でも文章らしくなっていたので驚いた。最後ルールミスについて触れられていたので、思わず探してしまった。
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The 筒井ワールドって感じでしょうかね。音が少しづつ消えて言ってもちゃんと文章にできるのはすごいとは思いましたし、最後のほうは読んでいてとても不思議なふわふわした気分にはなりました。ただ、実は話の内容はなく得るものはあまりないんじゃないかとも思いました。新しい知識や考え方を得ることや感動があるというのがなかったので、この本はなんのために読んだんだろうかという気にもなってきました。。
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そろそろ手に取らねばと読み始めたらノンストップで一気読み。ビックリ!魔法!?なにこの面白さ!冒頭から唸りっぱなしの感心しっぱなし。文字が消えていくとしか知らずに読んだから驚いた。内容の部分でも実験小説なんだ。虚構と文字遊び。文字の消える順番とタイミングがニクらしい鮮やかさで、しかもそれすらもメタ視点に落とし込んで面白味にしている。使える文字が減り、表現しづらくなってくると読み手の興味を刺激する展開へと進み、だからこそ文字の少ない中での言葉選び、言葉遊びが可笑しくて映える。この計算されっぷり。面白かった。
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合わなかった。