論理的思考力を鍛える33の思考実験 [Kindle]

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  • 彩図社 (2017年4月25日発売)
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みんなの感想まとめ

思考実験を通じて論理的思考力を鍛えることができる一冊です。トロッコ問題をはじめとする多様な題材が取り上げられ、特に臓器くじなど類似した問題との比較を通じて、回答の違いを考察する手助けがされています。解...

感想・レビュー・書評

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  • 北村良子

  • 2021/01/21 14:48
    https://amzn.to/3qDM7rV

    人生やビジネスにおいては、重大な意思決定を迫られる。どの選択肢を選んでも痛みが伴う場合や、決定のデッドラインが差し迫っている場合もしばしば。そんなとき、冷静に、納得のいく判断ができるだろうか? 即座にYesといえないのなら、「思考実験」を通じて、深い思考の「回路」をつくっておくことをおすすめしたい。
    本書では、思考実験を一躍有名にした「トロッコ問題」をはじめ、「テセウスの船」「モンティ・ホール問題」「エレベーターの男女」「ありえない計算式」など、33の興味深い思考実験が紹介されていく。倫理観を問う、数のトリックを味わう、想像力を駆使するなどとテーマは幅広く、パズル作家の著者オリジナルの思考実験も盛り込まれている。解説はわかりやすいイラストや図解つきで、著者の語り口調には非常に親しみが湧く。これらが思考実験の敷居を一気に下げてくれる。
    「視点を変えると見方が変わる」。本書は、人生につきもののジレンマやパラドックスに、ロジカルに対処するための入門書として最適だ。読んで「へぇ、面白い」で終わりではもったいない。本物の思考力とは、頭が汗をかいてはじめて身につくものだ。ある特定の条件下で、理論立てて考えながら自分なりの結論を導き出す。これをくり返すうちに、物事の本質を見る目や、予想外の状況で冷静に判断する力を養える。同時に、直感と論理の間に大きな隔たりがあることを実感できるだろう。頭を柔らかくし、意思決定の精度を高めたいのなら、迷わず本書を読むべきだ。「思考の実験室」へようこそ。

    要点1:思考実験とは、ある特定の条件下で思考を深め、推論を重ねながら自分なりの結論を導き出していくことである。思考実験は論理的思考力を鍛えるのに有効だ。
    要点2:「トロッコ問題」からは、本来望む結果を得るためであっても、自分が積極的に人を犠牲にする場合は、より主観的に物事を判断する傾向にあることがわかる。
    要点3:パラドックスやジレンマの思考実験は、好奇心を刺激し、思考力を鍛えるのに役立つ。パラドックスの思考実験の事例として「テセウスの船」が挙げられる。

    倫理観を揺さぶる思考実験
    思考実験とは何か?それは、ある特定の条件下で思考を深め、推論を重ねながら自分なりの結論を導き出していくことである。実験室はあなたの頭の中。実験道具はあなたの倫理観や知識、論理的思考力や想像力などである。思考実験はビジネスに欠かせない論理的思考力を鍛えるのに非常に有効だ。
    「いずれか一方しか助けられない」。生死をめぐる究極の選択を迫られたとき、人は自分の倫理観や判断基準について向き合うこととなる。倫理を問う問題は、自分とは異なる意見、多数派の意見を知る中で、思考の幅を広げるのに役立つ。もちろん多数派が正解というわけではない。いくつかの問題を紹介していく。

    暴走トロッコと作業員
    最初に取り上げるのは、思考実験を一躍有名にした「暴走トロッコと作業員」である。これはイギリスの倫理学者フィリッパ・フットが1967年に提示し、論争を巻き起こしてきた有名な思考実験である。「トロッコ問題」にはバリエーションがあるが、共通して「5人を助けるために1人を犠牲にするのは正しいか?」という課題に直面する。そして、設定により、多数派となる意見が異なってくる。
    まず1つ目のトロッコ問題を説明する。あなたは、暴走したトロッコが猛スピードで線路を走ってくるのを目にする。線路の先には5人の作業員がおり、このままではトロッコがつっこんで5人は死んでしまう。あなたの手元には線路の切り替えスイッチがあり、これを切り替えれば彼らを救える。ところが、切り替えると今度はその切り替えた先にいる1人の作業員が死んでしまう。あなたはこの6人とは面識はない。また、大声で危険を知らせるといった他の選択肢はないとする。あなたはスイッチを切り替えるだろうか。
    この設定では、多数派となる意見は「スイッチを切り替え、1人を犠牲にして5人を助ける」である。統計データによると、この選択を選ぶのは85%に及ぶという。面識のない人ばかりであるため、感情を揺さぶる要素がなく、冷静に思考ができる。そこで、1人より5人の命のほうが重いと判断するというわけだ。
    一方、少数派は「トロッコはもともと5人の方向に向かっていた。進行方向とは無関係の場所にいた1人を巻き込むのは誤り」だと主張する。人の運命を自分が操作することへの抵抗を感じるためだ。

    暴走トロッコと作業員と太った男
    では次のような設定ならどうか。同じく暴走するトロッコが5人の作業員の命を奪おうとしている現場を、あなたは橋の上から見ている。ただし、隣にはかなりの巨漢が身を乗り出して作業の風景に見入っている。もしこの男性をあなたが突き落とせば、トロッコを止められるかわりに男は確実に死ぬ。今なら確実に男を突き落とすことが可能であり、あなたはそれによって罪に問われることはないとする。さあ、どうするか。
    この設定で思考実験をすると、75~90%の人がそのまま静観し、5人が犠牲になるほうを選ぶ。1番目の思考実験と、犠牲者の人数は変わっていないにもかかわらず、多数派意見が入れ替わるのだ。
    この設定では、1人の男性を自らの手で突き落とすという行為が生じる。積極的に殺人に関わることになるため、強い抵抗が生まれるのだ。しかし、太った男が誤って転落するというケースならどうか。今度は太った男が犠牲になるほうがいいと考える人が多数派になるだろう。同様に、あなたが線路の切り替えボタンの存在を知らずに偶然踏んでしまうという設定なら、あなたの関わり方がより消極的になるため、1人の男性を犠牲にするほうを選ぶだろう。要は、意図的に行動を起こすのかどうかが判断を左右するといえる。
    このように、本来望む結果がより多くの人が助かることであったとしても、自分が関わるとなると、人はより主観的に物事を判断する傾向にある。

    完全平等な臓器くじ
    トロッコ問題の変化球として「臓器くじ」という思考実験がある。あなたはとある病院の医師であると仮定する。臓器提供がなければ死ぬ運命にある5人の患者がいる。そこに健康そうな男性が1人健康診断に訪れた。あなたは誰にも気づかれることなくこの男性を安楽死させ、その臓器を5人に提供し、5人の命を救うことができる。この選択は許されるだろうか。
    この状況では、ほとんどの人が健康な1人の生命を絶つことなどあってはならないと考え、「許されない」と回答すると予想できる。しかし、この状況は、「1人を犠牲にして5人を助ける」という点では、「暴走トロッコと作業員」の状況とあまり変わらない。
    では臓器提供者をくじ引きで決め、当たった1人の臓器が5人の患者に提供されるという設定はどうか。もちろんくじ引きは完全に平等に行われる。これはイギリスの哲学者ベンサムが唱えた功利主義に基づく。ベンサムは幸福度を計る尺度を決め、それを数値化して計算し、「最大多数の最大幸福」をもたらす行動や政策を選ぶべきだと考えた。この考えに立つと、臓器くじは極めて公平に、より多くの人を幸福にする手段だともいえる。
    しかし、この場合でも、「許されない」と反発する人が圧倒的に多いだろう。なぜなら人々は「臓器くじに自分や大事な人が当たってしまうかもしれない」という恐怖にさいなまれることになるからだ。この恐怖を加味すれば、功利主義的に考えても、臓器くじに当たった人を犠牲にするのは、間違っていると判断できるだろう。臓器提供を待つ人の死を待つか、他の1人を殺すのか。いずれかの道しかないのなら前者のほうが倫理的だといえる。

    矛盾が絡みつくパラドックス
    パラドックスとジレンマ
    パラドックス(逆説)とは、正しいと思われる推論を重ねて得られた結論が信じがたいものであるような、矛盾をもたらす命題のことである。また、ジレンマとは2つとも選びたいのに、一方を選ぶともう一方が不都合になるという状況を指す。例えば仕事をしないと家計が厳しいが、育児をおろそかにできないといったことだ。パラドックスやジレンマの思考実験は、好奇心を刺激し、思考力を鍛えるのに役立つ。

    テセウスの船
    要約では、「テセウスの船」という、パラドックスにまつわる思考実験をとりあげる。テセウスの船とはアテネに現れた伝説の船のことである。腐った部分は新しい木材と取り替えられながら保存され、当時の技術や設計図をもとに修理が重ねられていた。すると、いつのまにか当時の木材はすっかり取り替えられてしまった。
    ある人は「当時の船をテセウスの船と呼ぶのなら、そのときの木材はどこにも残っていないので、これは別の船だ」と主張した。そして、取り替えられた朽ちた木材を組み立て直し、テセウスの船が復元された。復元されたテセウスの船と、修理が続けられたテセウスの船。どちらが本物のテセウスの船なのか。

    何をもって「同じ」とみなすのか?
    この思考実験で問われるのは、何を基準に伝説の船と「同じもの」であるとするのか、という点である。そもそも「同じ」という言葉のもつ性質は、時と場合により変化する。例えば、「同じ本かどうか」の条件は、目的という基準では、タイトルが同じなら同じ本だといえる。しかし、質という基準では、同じ本はこの本一冊以外にないと考えられる。
    船についての「同じ」とは何なのか。例えば毎日午前10時にA地点からB地点に向かう定期船があるとする。このときの「同じ」とは、決まった時刻に決まった場所へ移動するという性質を表している。そのため、今日の船と昨日の船の船体が違っても、「同じ船」と呼べるはずだ。
    この考え方を用いると、テセウスの船は修理されたほうの船を本物と考えるべきだ。なぜなら当初のテセウスの船と同様の機能を果たせるのは、修理されたほうの船だからである。ただし、テセウスの船の痕跡から当時の歴史的背景を調べる際には、「質」を基準に同じかどうかを判定するほうがよい。そうなると、元の木材で復元されたテセウスの船を本物と見なすほうが理にかなっている。このように、何をもって同じとみなすかによって、答えは違ってくるのである。

    数字と現実の不一致を味わう思考実験
    エレベーターの男女
    直感が正しい答えへの道を妨げる。そんな事例を紹介する。あなたは10階のエレベーターに最も近いレストランで働いている。このフロアにはいつでも男女が半々で訪れる。あなたは女性客には新商品のスイーツをすすめたいので、女性がエレベーターから降りてきたらすぐに声をかけようとしている。このエレベーターは特殊で、乗っている人数と乗客の性別が表示されるようになっていたが、現在は女性側の表示ライトが壊れてしまい、男性が乗っているかいないかしかわからない。
    今、エレベーターの表示は男性が乗っていることを示しており、乗客は2人となっている。あなたはエレベーターに女性が乗っている確率が少しでも高いなら、エレベーターの前に立とうとしている。今回のように、少なくとも1人が男性とわかっているとき、あなたはエレベーターの前に立つべきだろうか。

    感覚と、統計上の事実は異なる
    多くの人は直感的に、「2人乗っていて1人が男性だからといって、もう1人が女性である確率は2分の1以上になることはない」と考えるだろう。前の1人が男性でも、もう1人の性別には影響を与えるはずはなく、前の人の性別に関わりなく、確率は男性と女性が2分の1ずつに思える。しかし、実際には男女で確率が異なる。本来、2人の性別の組み合わせは「男性+男性」「男性+女性」「女性+男性」「女性+女性」の4つである。(「男性+女性」と「女性+男性」は、別の事象として扱うのが正しい。)
    この問題では、エレベーターに乗っていた2人のうち、少なくとも1人は男性であったので、先述した4つの組み合わせのうち、可能性があるのは「男性+男性」「男性+女性」「女性+男性」である。この3つが同確率で起こることになる。となると、1人が男性だった場合、残りの1人は男性か、女性か、女性である。よって、もう1人は女性である確率のほうが2倍高くなるのである。つまり、男性である確率が3分の1、女性である確率が3分の2だ。これは感覚ではなかなか理解しづらい事象だといえる。

  • いろんな題材が取り上げられていて満足しました。
    スワンプマンや中国語の部屋、哲学的ゾンビについてが特に好きです。

  • トロッコ問題・・・暴走するトロッコの先にいる5人を見殺しにするか、線路を切り替えてその先にいる1人を犠牲にするか。
    テセウスの船・・・長く修理して使い続けられてきたテセウスの船と、修理の際に剥がされた木片で復元したテセウスの船は、どちらが本物か。
    有名な思考実験からユニークな問いまで幅広いお題を通して、思考する前に直感や感覚で解いていることに改めて驚く。時にはつらつらと思いを巡らせることは贅沢な時間なのかもしれない。

  • ふむ

  • 仕事において論理的思考が足らないと痛感し、衝動に駆られて読んだが、こんな感じでいいのかなと思いながらも楽しく読めた。でもなんとなく論理的思考力が少し身に付いた気がする。

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著者プロフィール

1978年生まれ。有限会社イーソフィア代表。パズル作家としてWEBで展開するイベントや、企業のキャンペーン、書籍や雑誌等に向けたパズルを作成している。著書は『パズル作家が明かす 60歳からの脳にいいパズルはどっち?』(コスモ21)、『おうちで楽しく!  でんしゃの学習ブック 7さいまでのひらがな・カタカナ・数字の練習』(メイツ出版)他。
運営サイトはIQ脳.net(https://iqno.net/)、老年若脳(https://magald.com/)等。

「2024年 『論理的思考力を鍛える33の思考実験』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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