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感想・レビュー・書評
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紙の本への愛情と遊び心と、間と余白と静けさと。
京都の出版社、合同会社文鳥社さんの初めての本。
大きさは広げた手のサイズ。
墨色の函に銀色のタイトルと著者名が記され、長方形に切り抜かれた窓から本の装丁が覗いている。
表紙をめくると透ける紙の奥にタイトルバック。
『100年後あなたもわたしもいない日に』
何の本だって?
この本は短歌とイラストで出来た本なのです。
土門蘭さんの短歌と、寺田マユミさんのイラストで構成されている。
まるでサイレント映画のような静けさがここちよく、言葉と言葉の「間」、イラストとイラストの「余白」が、美しい。
時折ページがくり抜かれて、次のページの文字やイラストが見えたり、一首の短歌を四ページにわたって展開したりと、遊び心に満ちている。
土門さんの短歌は、さびしくも、あたたかく。
寺田さんのイラストは、あたたかくも、クール。
とにかく手にとって欲しい本です。
こだわりのセレクト本屋さんに置いてありそう。
<拓けども拓けどもまだ日光も 言葉も届かぬ 密林を持つ>土門蘭
100年後。
私は、誰の記憶の中にも、存在も、生まれたことすら無かったことになって、過去の歴史という海の中の藻屑となって沈んでいるのでしょう。
ときおり、風変わりな誰かの頭の中に、名前も顔も溶けて混じり合ってあやふやになった「過去の人」の中のひとりとして、不思議な感慨をもたらすのかもしれません。
無理な話だけれど、100年後、自分のいなくなった世界の、静かな海辺の、寄せては返す波の音を聴いてみたいものです。
そういえば、100年後、短歌という詩は、生き残っているのでしょうか。
……そんな妄想もふくらむ素敵な本。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
とても丁寧に作られた素敵な本でした。
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こんなに純度の高い、綺麗な言葉と絵の本に出会えてよかった
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出会えてよかった。
気軽に、ひとにすすめられない。
なんて表現したらいいかわからないから。
まだ、いい形容詞が見つからないけど
この作品(本とも画集とも言えない、生活を独特の目線で切り取ってかたちづくった)と出会えてよかったと
すごくそう思えた。
出会いが本当に好きなんだ。
本との出会いも。口コミでも本屋さんの新刊のポップでもなく、
くじらのお腹の中みたいな
暗くて、しずかな図書館で
古本屋さんで
のんびり本を探すのが好きだ。
その中で、
1冊の本に
じぶんにぴったりのタイミングで出会える、
と思うことがよくある。奇跡なんじゃないかと感じることが、よくある。
空港に向かう電車の中。
思わず流れる景色をみつめて、
かつてじぶんのなかを走り抜けていった感情たちのことを考えてしまいました
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静かで居心地のいい喫茶店の本棚から選んだ本
この場所で出会えてよかったな
しみじみと、やさしく沁みる
きみの吐く 言葉を固めて 飴にして
ときどき舐める 悲しいときとか -
装丁ももちろん素晴らしいのだけど、
儚くて消えてしまいそうな感情を確実に切り取る土門先生の腕を感じられた。
余白とさびしさが心地よくて、でもどこか前向きにさせてくれる、遠い国の絵本みたいな1冊。
出会えてよかった。 -
とても美しい歌集。
こんなに凝った作りでこの値段でいいのか!?
バーコードがついてないところも個人的に嬉しい。
タイトルを見たときマオの「百年たったら」が脳内で鳴って手に取る。
最初に寺田さんのイラストに惹かれた。シンプルな線のイラストは素朴で凛としていてあたたかみがある、とにかく絶妙で美しい!私はまだ短歌を読むのに慣れていない(し、そもそも感性が乏しい)ので言葉が像を結ばないことも多い。絵と短歌の取り合わせが有り難かった。
短歌とエッセイを読んで土門さんの言葉にはっとした。私も「教えられたことは覚えられるけど感覚がつかめない恐ろしさ」をよくよく感じていたし、いまも感じる。それを言葉にしてくださったありがたさ。
また、お母さんとの言語の違いからコミュニケーションが上手くとれなくて生まれた感情についても(語弊があるかもしれないけど)心を掴まれた。
だからこそ言葉についてよく考えたんだろうと思う、そして土門さんの幼心の悩みや切なさみたいなものが、言葉とかちりとかみ合ったのだろうと思った。
好きな歌は
「半分の大きさなのに わたしより 大きな愛を 君は持ってる」
「魂は まだあのシーンの 中にある 映画館から たなびく葬列」
「奪われた 心の一部は 今きみの もとで元気に やっていますか」
「容量を 食う感情は 圧縮を 繰り返されて もう開けない」 -
何年か前に買った。再読。あのとき買っておいてよかったなと改めて思った。余白がささる本。「どこまでも ひとりであるのは知っている 時々うっかり 忘れるだけで」「君の吐く 言葉を固めて 飴にして ときどき舐める 悲しいときとか」あたりが特にすき。
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短歌とトリミング技法のイラスト。どちらもすてきで、心にじんわりくる感じです。
ふとしたときにパラパラしたい作品。
四角く窓みたいに切り取られ、次のページのイラストがのぞいているページがあったり、本としても実験的。 -
タイトルと著者名が銀字で書かれ、穴から本体表紙が少し見えている、紺色の函。それだけでも何だか素敵だ。そして本を開くと、イラストと短歌が合わせられていて、時々ページに穴が空いているなど、面白い工夫が施されている。実際その工夫はとても効果的だ。イラストと短歌をゆっくり味わいながらページをめくっていく。知っていて共感してしまうような感情、そして昔を思い出し戻ってしまうような感情、知らないけれど強く伝わってくる感情。様々な感情がここには詰まっていて、それが私の中に入ってくる。本当に美しく綺麗に整った作品で、惚れ惚れとしてしまう。出会えて良かった。
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死ぬまで生きる日記を読んだ後に読んだ
土門蘭という人に出会えることができてよかった
寺田さんとのイラストもすごく素敵でハイパーマッチ
朝陽のところよかった -
第3回ビブリオバトル全国大会inいこま予選会テーマ「かがみ」で紹介された本です。
2018.1.28 -
寺田さんのイラストと土門さんの言葉が混ざり合って、ふわふわ心に舞い降りてくる、そんな短歌集でした。
想いが読み取りづらい歌がいくつかあったけど、
もっと色々な経験をしたら咀嚼できるようになったらいいなと思う。
時を経て読み返したい一冊。 -
箱入りの手のひらサイズの短歌集。
特別感のある1冊で、紙ならではの面白い仕掛けが施されている。
ものすごく痛烈に刺さった1句があったとか、自分の経験と重なって辛い気持ちを励まされたとか、
そういう劇的な感情の揺さぶられ方はしなかったのだけど、
読み終えたあと、じんわりあったかくなって、少し涙が出た。
不安も寂しさも虚しさも、しょっぱいまま愛していきたい。
手に取って見て欲しいので多くは書かないが、特に気に入ったものをふたつだけ。
敗北のあとも 歩いていかなくちゃ
負傷兵が 香水くぐる
脊髄を 祈りの回路がつらぬいて
ときどきそこを 光が流れる
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内容と直接関係ないが、この本、ものすごく知っている紙の匂いがする。
懐かしい匂い。なんとなく高校生か大学生くらいの時の、勉強していた頃の自分を思い出す匂い。なんだろう、なんの記憶と紐づいてるんだろう、思い出したい。 -
日常を切り抜いていて、想像しやすい。
難しい言葉を使わず、場面で伝えてくる。
明日はどんな風景が見えるかな〜。と思える一冊 -
どこかの書店さんのSNSで見つけ。
体裁としての試みが面白く、仕掛け絵本を読んでいるように。 -
尾道の本屋さんで自分へのお土産にジャケ買いした本。広い世界をトリミングして眺めたくなる時あるよね。見たい所だけ、見せたいけどちょっと隠してみたり、本屋さんでぼんやりタイトル読みながら「100年経ってもあなたより長生きしちゃってたらどうしよう…」って思っちゃった。
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2019.11月。
土門さんの見る世界、土門さんの紡ぐ言葉。とても瑞々しく綺麗で、好きなのです。きゅんとする。 -
日常をくり抜き言葉を紡ぎ出す
素敵な本に出会えた週末
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