王とサーカス 太刀洗万智シリーズ (創元推理文庫) [Kindle]

  • 東京創元社 (2018年8月31日発売)
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感想・レビュー・書評

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  • 大刀洗万智の短編を読んでから、長編を
    読んだ。
    ネパールのカトマンズを訪れていた万智
    が、たまたま、王制のスキャンダル。
    フリーライターの万智が、ニュースを
    見て、記事にしようと宿の知人である
    軍人に取材を申し込む。
    そこから、ある事件が起き、万智は取材
    で分かった事を記事にしようか迷う。
    万智の推理も面白いが、カトマンズの
    描写もリアルで想像しながら楽しめた。
    ジャーナリストの事実の伝え方が世に
    どのように影響するのかを考えさせら
    れた。
    圧巻の作品であった。
    次は、さよなら妖精を読もうと思う。

  • 大刀洗万智シリーズ2作目。1作目から10年後という設定になっている。1作目は高校生だった大刀洗はフリーのジャーナリストとしてネパールに滞在している。そのときに起こった王宮内の乱射事件とその後の殺人事件に出会う。殺人事件が起こるのが作品の中ほどということで、どちらかというと前半は人間ドラマ、そして後半はサスペンスとジャーナリズムに焦点を当てた社会ドラマと言った内容になっていると感じた。 自分としては、サスペンスの謎解きよりも、前半のネパールの様子や人との交流、後半のジャーナリズムの善悪に葛藤する大刀洗の姿が印象に残った作品だった。サスペンス作品として期待した自分としては少し物足りなくも感じたが、内容の濃い一冊であることは間違いない。

  • 映像が脳裏に浮かぶ上質なドキュメンタリーのような一冊だった。
    安定の米澤穂信さん。面白かった。

    主人公である大刀洗万智さんのシリーズをこれまで読んだことがなかったけれど、全く問題なく読み進められました。
    米澤さんご本人もあとがきで同じことをおっしゃってました。

    私は恥ずかしながら、物語の発端であるネパールの王族殺害事件を知らず…。現実に起こったことがモチーフになっているんですね。

    「信じる」か「信じない」か。
    自分のことも、他人のことも。
    でもそこに都合の良い感情は排除しなくてはいけなくて。
    僧侶の八津田も現地の子供のサガルのことも感情だけで動いてはいけなくて、読んでいて辛かった。

    ただ自分が正しいと思うことは、他所に行けば、特に異国ならばそうとは限らなくて。
    それでも自分で自分を信じなければ、自分が潰れてしまう。
    特に最近はSNSやメディアに対しても、思うところはあって…。なかなか難しいことを問いかけてきたなと感じました。

    本当に、状況の描写のうまさ、感情・心情の表現のうまさに感心して、またまた米澤穂信さんにハマってしまいました。

  • ジャーナリストに対してあまり良い印象を持っていなかった。正義感とかそんなご大層な思想ではない。家族を失い嘆き悲しむ人へ強引にコメントを求めたり、取材に赴いた被災地の貴重な物資を買いあさったりする姿をみて反感を覚えただけだ。

    この考えが揺らいだのが数年前。フリーのジャーナリストの方とお話しする機会があり、その中でご本人が「ジャーナリストはクズですから」と言い切ったのがきっかけだ。もちろん自分がジャーナリストに抱く一方的な印象を伝え、それに話を合わせてくださったわけではない。何気ない会話の中でぽろりと漏れた本音が、彼らも自らの仕事に思うところはあるのだと教えてくれた。

    ではなぜ含むところはあれど彼らは仕事を続けるのか?
    その答えの一つがこの『王とサーカス』の中にある。

    推理小説の体をとってはいるが、むしろ注目すべきは報道の必要性とジャーナリストのあり方だろう。
    主人公の大刀洗はフリーのジャーナリストだが、とある人物に取材を申し込み、断られている。断る側の理由は実に真っ当で、大刀洗の説得は独りよがりで薄っぺらい。交渉の最後に彼女は「お前はサーカスの座長で、書くものはサーカスの演し物だ」とまで言われて対話は終わった。
    それでも諦めず王族殺害事件の取材を続ける中で、彼女はなぜ記者を続けるのか自身に問い続ける。

    彼女の出した結論は、私が長年抱いていたジャーナリストへの不信を和らげるに足るものだった。むしろSNSやYoutubeなど一般人が気軽に情報を発信できるようになった昨今では、皆が心に留めておくべき戒めだろう。

  • 「幾人も、幾百人もがそれぞれの視点で書き伝えることで、この世界はどういう場所なのかがわかっていく。完成に近づくのは、自分はどういう世界で生きているのかという認識だ。」p451


    今まで読んできた米澤穂信さんとは異なるテイスト、かつ、普段も読まない異国の地が舞台のお話だったけど、さすが米澤穂信さん。すらすらと読めた。
    そして今の自分に考えさせられることもあり、読書とは出会いだなあと思うなど。

  • 舞台は王族殺害事件勃発の2001年ネパール・カトマンズ。
    シリーズ前作から10年が経ちフリー記者となっていた太刀洗は早速取材を開始する。
    題材が今でも記憶に鮮やかな史実だけに展開はまるで本物のルポルタージュを読んでいるかのよう。
    報道と真実について考えてみる。

  • 面白かった!!フリージャーナリストの大刀洗さんが主人公で、報道とは何か、というのを命題にしつつもミステリとしても面白い。王とサーカス。サーカスってそういうことねなるほどね。
    米澤穂信はミステリーのネタも良いのだけど、文章も良くて好きです。

  • この人の作品は初めてだったので展開が読めなかった。
    ミステリー、サスペンスだと聞いていたけれど、自分との対話がメインなの?あれっ?て感じで話を読み進めていたところ。どんでん返しでしたねー。
    なかなか考え、疲れる作品とはいえ、疾走感も強いかな。
    いわゆる登場人物の一挙手一投足を無駄なく使っている感じがあるので、鋭い人は途中で全部が繋がるのかもしれない。
    現代文の問題になりそうな感じ笑

    内容的に、考えさせられるトピックではありました。
    わたしのやりがい、使命感のために人の犠牲はつきものなのでしょうか

  • ジャーナリズムの在り方(読者を含む。)というテーマがありながら、サスペンス小説としても十分楽しめる内容であった。

    トーキョーロッジの住民たち一人ひとりが魅力的であるが、彼等との交流のそれぞれに事件の伏線が張り巡らされていたことに気づく。

    ラジェスワルの「自分に降りかかることのない惨劇は、この上なく刺激的な娯楽だ」という言葉が表題のもととなっており、深く印象に残った。

  • 異国で、新しい感覚であった。土地が違うだけでも雰囲気も違う。ちょっとした設定でいろんな切り口があるのだと感心した。

  • キャラクターが魅力的で、読み始めた冒頭から引き込まれる。
    海外旅行特集の取材でネパールを訪れた太刀洗万智、現地で知り合った少年サガル、仏僧の八津田、アメリカ人の学生ロブ。どのキャラも魅力的。
    そして皇太子による王・王妃・王子・王女の射殺というセンセーショナルな事件。
    引き込まれて、一気に読めた。

  • ジャーナリズムとネパールでの殺人事件という特異な状況下、おもしろかったです。

  • なかなか良かった。ジャーナリズムについて興味出た。サガルとの最後のシーン泣けた。仏像に大麻入ってるのは予想できたけど犯人はサガルだと思ってた。予想外れた。

  • 題名の意味は割と早くから明かされてそれが物語のテーマになっている。報道の役割はなんなのか?万智の葛藤する姿とネパールの市中の様子がまざまざと浮かぶ。面白かった。

  • なんか深い話しでしたね。
    太刀洗万智が 雑誌の記者として ネパールに向かう。
    周りに出てくる人たちは 皆んないい人なのだが
    抱えてる背景が みんなある。
    実際にあったことを 繋ぎ合わせて考える。
    あちこち案内してくれたサガルという少年の抱えていた強い思い
    宿のチャメリさんが 長く泊まってくれたお客様にと
    渡してくれた トンボ玉の髪飾り
    僧侶の八津田さん
    みんな いい人なんだけどなあ!
    いい人がそれぞれの思いで動くと こんなことになるんだ!
    太刀洗万智が肝を定めて 捕まえた真実
    うーん という感じでした。

  • この男は、わたしのために殺されたのか?
    ミステリベスト3冠達成!
    絶賛を浴びた『満願』を超える、現在最注目の著者の最高傑作長編

    2001年、新聞社を辞めたばかりの太刀洗万智は、知人の雑誌編集者から海外旅行特集の仕事を受け、事前取材のためネパールに向かった。現地で知り合った少年にガイドを頼み、穏やかな時間を過ごそうとしていた矢先、王宮で国王をはじめとする王族殺害事件が勃発する。太刀洗はジャーナリストとして早速取材を開始したが、そんな彼女を嘲笑うかのように、彼女の前にはひとつの死体が転がり……。「この男は、わたしのために殺されたのか? あるいは――」疑問と苦悩の果てに太刀洗が辿り着いた痛切な真実とは? 『さよなら妖精』の出来事から十年の時を経て、太刀洗万智は異邦でふたたび、自らの人生を左右する大事件に遭遇する。

  • 久しぶりの米澤穂信。
    久しぶり過ぎて忘れていた。米澤穂信の小説のテーマが作中で主人公を突き刺して、そして主人公を貫通して自分に突き刺さってくること。
    謎解きの直前からはワクワクして、ページをめくる時間すら惜しかった。謎解きを終えて、太刀洗が犯人(達)から真実や本音をぶつけられるシーンが続いた時はには呆然通り越して怒りが湧くくらい感情が乱された。

  • たんたんと進んでいく物語。
    すごく読みやすいのは文章力なんでしょうか。

  • ネパールで国王殺人事件が起きた。
    たまたまそこにいたフリーのジャーナリストの太刀洗がそれを記事にするため取材をする。
    そんな中、太刀洗の目の前に、以前取材をした1人の国軍の死体が「INFORMER(密告者)」と書かれた状態で現れる。
    この謎を解明していく中で、太刀洗はこの一連の出来事ををどう記事にすれば良いのだろうか考え、そして自分はなぜ記事を書くのかと自分を見つめ直す。

    案内人の子供であるサガルが可愛い。頭が良さそうなのが良い。
    ミステリーとしては、「大どんでん返し!」という感じではなくて、着実に真実に近づいていく感じが安心しながら読み進められる。
    ただ、個人的にジャーナリストという職業に興味を持てなかったためあまり感情移入できなかった

  • これまで読んだ米澤さんの小説の中で一番良いかも

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著者プロフィール

1978年岐阜県生まれ。2001年『氷菓』で「角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞」(ヤングミステリー&ホラー部門)を受賞し、デビュー。11年『折れた竜骨』で「日本推理作家協会賞」(長編及び連作短編集部門)、14年『満願』で「山本周五郎賞」を受賞。21年『黒牢城』で「山田風太郎賞」、22年に「直木賞」を受賞する。23年『可燃物』で、「ミステリが読みたい!」「週刊文春ミステリーベスト10」「このミステリーがすごい!」でそれぞれ国内部門1位を獲得し、ミステリーランキング三冠を達成する。

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