- Amazon.co.jp ・電子書籍 (32ページ)
感想・レビュー・書評
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中国は雲南省に、人生のすべてをVRヘッドセットを付けてバーチャル世界で過ごす少数民族がいる。
生まれて間もなく新生児用のヘッドセットを付ける彼らは、成長に合わせて付け替えるときも決して現実世界を目に入れることはない。
さて、そんなバーチャル世界の住人たる彼等の世界と我々の現実世界と、実存性においてどう違いがあるのか?
併録、長年プロデューサーとして活躍する著者がVRヘッドセットを付けてアイドルマスターシンデレラガールズのライブを体験する話。
アイマスからこのスー族の話が出てくるっていう。
最近SFでは(ハヤカワでは?)Kindle短編バラ売りが流行っているのか、大変手軽に手を出せてしまって困る。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
書いてあること滅茶苦茶なんだけど、えも言われぬ説得力があって、体験が出来ました。
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このお話の面白いところは、VRを装着する民族ではなく、『自分の認識している世界』についての基盤が、VRが現実と感じるスー族の研究内容を聞いてるうち、ぐらぐらさせられてくるって事じゃないのかと思う。
スー族の死者の世界の実存の話と、停電の時の話。個人的には、特に凄く深く突き刺さっています。
目の前の世界が、このお話を読んでから、妙に不気味に感じられはじめて困りました。
さらに、平野啓一郎さんの『本心』を読んだ後のせいもあり、VRについて感じるイメージが少し怖いものにも思えてきてて……避けがたい変化になってくんだろう将来に、さらに考えこんでしまった。
Amazonでは着想に加点されつつも、構想が練れていないという評もあったようですが、素直に楽しめました。現実に可能かどうかとかいう話をしだしたら、SFのすべてを許容する事がまずできないようにも思います。
2010年代SF傑作選で読んだので、一緒におさめられているアイドルマスターの方はまだ未読。熱量スゴイらしい……愉しみではあります。
015 -
うまれてから死ぬまで、一生VRをつけて暮らす民族の報告論文。もちろん架空なのだけど、こういう形式だと実在感があっていい。
個々の認識・実存とは…と考えさせられて面白かった。
だけど、併録の”シンデレラガールズVR体験レポート”の迫力が強すぎて、読後に作者的にはそっちの方が本編なのかと思ってしまうほど。 -
点と線だけで表現される仮想世界を奇異に感じさせながら、味も匂いもしない文字から物語を楽しむこととなにが違うのか?と着地する。掌編。
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短編だが、幻想と現実が同じレイヤーに重なるかのような感覚がオーラルヒストリーを思わせる、よく練られてる印象があった。何がその社会集団にとっての現実なのか、という考え方をすれば、それがVRだろうがリアル空間だろうが、大差はないのかもしれない。
後半との落差に笑ったけど、こちらが我々のリアル。リアルがSFを侵食していく事例。 -
環境問題、エネルギー問題、食料問題、差別問題…。近い将来、人類がこれらの問題に対処するためにVR世界に拠点に移すことは必至だと思っているのだが、それにより世界のレイヤーが分断し決定的な相違を生み出し、共通概念すら喪失することを想像するのは面白かった。自分とは価値観の異なる他者への尊重がより大切になっていくんだろうなと思った。
同時収録のアイマスVR体験ルポ『星の光の向こう側』、その熱量にあてられ、ぼくもアイマスPデビューしたくなった。 -
雲南省スー族におけるVR技術の使用例 (早川書房)