ホモ・デウス 上下合本版 テクノロジーとサピエンスの未来 [Kindle]

  • 河出書房新社
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  • 人類の歴史を総括して捉え直しつつ、インフォメーションテクノロジーとバイオテクノロジーが高度に発展して人類をAIが凌駕する未来を予測する。歴史の捉え方の段階から目が鱗で、作者は天才だと思いました。これからの未来をどう生き抜いていくのか、子どものどんな力を伸ばしてあげたいのか、先を見据えるための必読本と思います。

  • サピエンス全史の最後の方で、サピエンスは自然選択の法則を打ち破り、生物学的に定められた限界を突破し始めているため、サピエンスはいずれシンギュラリティ(特異点)に至るとハラリ自身が言及していました。
    ホモ・デウスはその内容の延長線上が中心という感じで、人類が将来的に進化していく可能性についてまとめられています。
    将来起こりうる可能性があり、その影響を受けてしまいかねない世代だからそう感じたのかもしれませんが、サピエンス全史とジャレドダイアモンドの銃・病原菌・鉄を事前に読んで面白いと思った人にはとくに勧めたい本だという印象です。

  • 【要約】
    人類の未来に対する予測を書いた本。
    過去、人類は飢餓・疫病・戦争を徐々に克服してきた。
    今後、人類は不死・幸福・神性を目標にするかもしれない。そして人類は自らをアップデートし、一部の人類がホモデウスとなるかもしれない。そしてテクノロジーの進歩とともに馬が車に取って代わられたように、ホモデウスにとって多くの人類は無用の長物となるかもしれない。

    【感想】
    AIが作成した音楽の存在は全く知らなかった。人間の情動的側面はAIでは代替できないと思っていたが、人間をアルゴリズムと考えれば代替しうるのだというのは、衝撃的だった。
    本筋とは関係ないが、本書のあとがきで書かれている「歴史を学んでも、何を選ぶべきかはわからないだろうが、少なくとも、選択肢は増える」という言葉が印象的だった。歴史は興味を持って勉強している分野の一つなので、更なる動機づけになった。

  • 「サピエンス全史」のユヴァル・ノア・ハラリ氏が書いた続編。サピエンス(人類)がこれから進むであろう未来を予測している。
     サピエンスは自らをアップグレードしていき、神性を獲得した存在「ホモ・デウス」を目指すだろう。未来のサピエンスは、人間至上主義に代わりデータ至上主義を信じるようになる。これまでの人間個人としての価値は下がり、AIといった外部アルゴリズムに幸福を求めていく。しかし、それは自ら問題を抱える事態に発展する。

     未来のサピエンスが抱える問題は次の3つ
    1.生命はデータ処理を行う存在で、生き物はアルゴリズムで動いている?
    2.生命の意識とAIの知能はどちらの価値が高い?
    3.AIに意思決定を全てゆだねると、サピエンスの生き方はどうなる?

    1.生命はデータ処理を行う存在で、生き物はアルゴリズムで動いている?
     データ至上主義によれば、生命は全体としてデータ処理する存在で、昆虫、動物、人間などの集団はデータ処理システムと見なせる。そして、生き物の意思決定はアルゴリズムによって行われているという。
     生命科学的に生き物は子孫繁栄というアルゴリズムに沿って活動している。人間が感覚や情動と感じているものは全てアルゴリズムで、その計算結果として感情という出力になっているだけと解釈している。

    問)もし完璧に人間の様に振る舞えるAIができたとしたら、それは生命と言えるのか?AIが人間に代わることが本当に良いことなのか?

    2.人間の意識とAIの知能はどちらの価値が高い?
     コンピューターの知能は進歩したが、意識は一歩も進歩していない。これまで、高い知能を必要とする仕事は意識を持った人間にしかできなかった。現在では、パターン認識に基づくアルゴリズムを持ったAIの方がうまくこなす。人間は、意識を持たないスーパーインテリジェンス(人間の能力を超えるAI)を実現しようとしている。
     
    問)資本主義は意識を持った人間よりも効率的に作業するAIを選択する。もはや人間は必要なくなってしまうのか?そうならないために、人間は自らをアップグレードしサピエンスではなくなるのか?
     
    3.AIに全ての意思決定をゆだねると、サピエンスの生き方はどうなる?
     AIは私自身より私のことを良く知っている。なので、全ての意思決定をAIに任せるようになる。アップルのsiri、Google Now、Amazonなどすでに導入されているものもある。
     AIを用い自分の望む目標を達成できるとしたら、AIが人間の自由意志を操作でき、人間の自由意志をも製品として販売されるようになる。
     AIが市場に拡大すれば、富と権力はAIを所有するエリート層に集中し、空前の社会的、政治的不平等を生み出す。また、AI自体が所有者という事態も考えられる(現在でも法人という概念が認められている)。更にエリート層はアップグレードされた人間になり、アップグレードできない人間との格差は広がる。

    問)アップグレードされたエリート層がAIを使い、世の中の人々を支配する世界になるのか?多くの人々はなんの労働力も必要とされない支配されるだけの無用な存在となるのか?人類の願いである「すべてのモノのインターネット」が構築されれば、人間は単なるデータフローの一部になってしまうのか?

     これらは全て予想であり、著者のハラリ氏はこの予想が外れることを願っている。大事なのは、自分達の未来をしっかり考えつづけていくこと。そして、未来のため今考えられる最善の選択をしていくことだ。

     この本はとてもボリュームがあった。そして第8章からがおもしろい。1~7章までは8章以降を理解してもらうための前説。7章までを読んでおくと11章のとんでもない予想も理解できると感じた。
     人間が取り残されないためには、常に学び続け、自分を作り変えていける能力が必要だと語られていた。データ至上主義も、これまでの宗教やイデオロギーと同様に多くの人が信じる「虚構」になる。データ至上主義以外に信じるものを創り出せれば、最悪の未来は回避できる。自分はなにを信じるか?はとても大事だと思った。

  • ホモデウス

    まとめ
    サピエンス全史に次ぐハラリ氏の著作、過去から現在、そして未来を見据え人類について考察している。色々と考えさせられる本である。
    本書の中では、単一の明確な筋書きが描かれているが、あくまで未来は予測できないという見地に立ち、未来を予測して視野を狭めるのではなく、幅広い選択肢に気付いてもらうことが目的だとしている。

    人類が次に目指すのは、幸福の追求と不死を技術的に乗り越えることではないか。幸福を感じるのは、脳内の生化学的な反応によるものであることがわかってきた以上、その操作は技術的な問題になっている。しかしその追求の過程で人間はアルゴリズムに支配されるようになるかもしれない。

    人類3:家畜6:野生動物1、これほどの質量割合に至るほど人類が他の動物の追従を許さないほどの成長を遂げてきた。これは虚構(宗教)により秩序をもたらし、ネットワークを形成してきたからだ。科学の発展は神の存在を否定し、信じる宗教は人間の意思を信ずる人間至上主義になった。

    科学の進化により、人間の自由意志だと思っていたものは単なる生化学的な反応に過ぎないことがわかり、欲望自体もが操作可能な未来が迫っている。意識と切り離され、データにより生まれた知能が自分以上に自分を知ることになり、意思決定がデータに委ねられていく、そこには人間の自由はない。人間はネットワークにデータを供給存在となり、アルゴリズムの奴隷となる。

    この未来の洞察は知能と分離された意識には価値がなく、人間は単なる生化学的なアルゴリズムに過ぎないという前提になっているが、本当にそうだろうか。もしそうだとすると我々の社会や日常生活はどうなるのだろうか、最後にこんな問を残している。


    感想
    AIには意識がない、だからこそ最適化により人間の指示のもと専門作業を代行していくことになるという未来を想像し、判断を伴う部分は人間が担い続けると考えていた。しかし判断自体を人間がデータに頼り始めると、もはや人間に意思や自由は存在しない、ということになる。これは機械に仕事を奪われるというレベルの話ではない。

    人類のタスクは次の世代へのバトンを渡していくということであり、そういう意味では、アルゴリズムの奴隷になろうが目的は果たせているのかもしれない。感覚的に許容しがたいが、否定する理由が思いつかない。



    各章まとめ

    ◯1章 人類が新たに取り組むこと
    ・何千年と飢餓、疫病、戦争が常に取り組むべきことだった。平和で健全な世界となった今何に注意と創意工夫を向けるのか。
    ☆不死
    ・前例にない水準の繁栄と健康と平和を確保した人類は新たな渇望を満たすため次なる標的として不死と幸福と神性を標的とする可能性が高い
    ・死は長らく宗教上では不可欠で好ましい部分と見ていたが、現代人にとって解決すべき技術的な問題
    ☆幸福
    ・生産は手段、一人当たりのGDPからGDHへ置き換えることも求められている。
    ・エピクロス: 人は簡単には幸せになれない。快感を経験していて不快感がないときが幸福。
    ・現実が期待に沿うものであるか、客観的な境遇よりも。
    ・あくまで身体の感覚でしかなく、一瞬で過ぎ去る。幸福は生存戦略上人を駆り立てるのプロセス。
    ・永続的な満足を確保するにはこの快楽系(生化学的作用)を操作する他に道はない。
    ・国家は良い操作(政治の安定や社会秩序、経済成長増進)は許され、悪い操作(麻薬等)は禁じることで幸福の追求の統制を試みる
    ・快楽の追求は常に一からやり直し続ける必要があり、渇望が高まるほどストレスになる。永続的ではない。
     ブッダ:真の幸福の獲得にはこれにブレーキをかける必要がある
    ☆ホモデウスへの進化
    ・至福と不死を求めることで神へのアップグレードをしようとしている。その道は生物工学(DNAを書き換える)、サイボーグ工学(人工物を足す、離れていてもいい)、非有機的生き物を生み出す工学
    ・人間至上主義の夢を実現しようとすると、その崩壊を招く可能性がある。


    第一部 ホモサピエンスが世界を征服する
    ◯2章 人新世
    ・農業革命の始まりとともに、動物の大量絶滅と家畜が誕生した。今やその数は野生動物よりも圧倒的に多い。人3:家畜6:野生動物1
    ・生存と繁殖に必要がなくなっても、主観的欲求を家畜は感じ続ける。それを無視して生存と繁殖を確保する力を人間は得た。
    ・擬人化ではなく、情動はあらゆる哺乳動物が持つ。なぜならそれ自体が生存のためのアルゴリズム(問題解決のための秩序だったステップ)だから(恐れや空腹、母子の絆など)
    ・狩猟採集民族は膨大な数の野生動物に取り囲まれ、彼らの欲求を理解することが生存上不可欠で、自分が優越した存在だと考えていなかった。
    ・農業革命は経済革命であると同時に宗教革命でもあり、家畜化して動物への影響力を自覚し、かつそれが神の意思を反映していると信じるのは容易で魅力的だった。
    ・科学革命は人間至上主義の宗教を生み、人間が神にとって変わった。

    ◯3章 人間の輝き
    ・人の命は他の動物よりもはるかに価値があると考えたがる。それはなぜ正しいと言えるのか。
    ・ダーウィンの進化論は魂の存在を否定し、多くの人にとって受け入れ難い。真の自己は分割できない不変で不滅な本質という考えを退けるから。
    ・意識について科学的にわかっていることは少ない、脳内の生化学できない反応と電流の寄せ集めがどのように感情を伴う主観的経験を生み出すのか想像がつかない。
    ・科学の素晴らしい点の一つは、科学者が何か知らないときには、最後には自分の無知をあっさり認められること。
    ・対人関係では150人が限度、それでも膨大な人が連帯できるのは、サピエンスが論理だけでなく温かい社会的倫理に従って行動し、情動に支配されているから。
    ・平等観念がポイントに見えるが、実際には長い歴史の中で不平等が蔓延しつつ成立してきた事実がある。そこには脅しと約束といった想像上の秩序を信じる気持ちがある。
    ・自分たちの神や価値観は受け入れられにくいが虚構で、信じる人のループにより意味が生まれる。この意味のウェブは時が経つと解けて失われる。
    ・この世界に意味を与えている虚構を読み解くことは必要。


    第2部 ホモサピエンスが世界に意味を与える
    ◯4章 物語の語り手
    ・虚構のウェブがサピエンスが協力する術
    ・5000年前、シュメール人が書字と貨幣を発明、人間のデータ処理の限界を打ち破り、巨大な王国を打ち立てることが可能になった。
    ・筆を振るうだけで現実を変えようとすることの魅力に抗える支配者はいなかった。毛沢東は農業生産量を2倍にせよと命令し、役人が書類を捏造したため、実際の倍書類上の生産量ができ、大きく輸出したために何千万もの餓死者が出た。文書と現実が衝突したときは、現実が道を譲る。
    ・人間の協力ネットワークの力は、真実と虚構の絶妙なバランスにかかっている。現実を歪めすぎるとその人の力は弱まるが、虚構の神話に頼らなければ大勢の人を効果的に組織できない。

    ◯5章 科学と宗教
    ・科学特にコンピューターと生物工学により虚構と現実の違いがあやふやになっていく。
    ・人間の法や規範や価値観に超人的な正当性を与える網羅的な物語(人が考えたわけではないが従わないといけない道徳律の体系)なら、そのどれもが宗教。迷信や超自然的な力ではない。
    ・宗教は取り決め。宗教と科学は対立ではない。科学が方法を導くことはできても、何を正しいと判断するかの部分では宗教的な見識を拠り所にする。
    ・宗教の教義で重要なのは倫理的な部分ではなく事実で、この部分が科学との衝突、宗教論争を生んでいる。
    ・科学が解き明かしたところによれば、聖書は記述していると称する出来事が起こってから何世紀もの後に、それぞれ異なる書き手に書かれたおびただしい文書の集成で、単一書物にまとめられたのは聖書時代のずっと後
    ・宗教は何においても秩序に関心があり、社会構造を創り維持することを目指す。科学は何をおいても力に関心があり、病気を治したり戦争したり食を得たりする力を研究により獲得することを目指す。

    ◯6章 現代の契約
    ・人類は長いこと成長を信じていなかった。パイが同じままでは、人口が増えた場合はその分一人ひとりが貧しくなる。
    ・現代では主義宗教が異なれど、経済成長こそ良いことの源泉という点では一致している。これは宗教。
    ・あらたなエネルギーと材料を見つける知識の獲得により成長してきたが、生態環境の悪化が問題となりうる。そしてどこまでも終わりはなくプレッシャーとなる。

    ◯7章 人間至上主義革命
    ・近代以降の政治、芸術、宗教は何らかの宇宙の構想に根差していない人生に意味を与えることだった。神の死は社会の崩壊につながらなかった。それは人間が神羅万象の意味も引き出す人間至上主義が代替となったから。
    ・神がどういうかではなく、誰かが嫌な思いをするかという判断軸。人間の経験こそ権威と意味の至高の源泉とする。
    ・教育の目的は服従を教え込み聖書を暗記すふことから、自分で考えることに変わっていった。
    ・神を信じるかどうかは個人に委ねられるが、信じるということ自体も内なる声に傾けた結果と言う点では変わりない。
    ・人間至上主義も主な宗教と同じく対立により宗派が分かれた。自由主義、社会主義、ヒトラー的進化論的主義
    ・20世期はこの3つの戦いで、WW2では不利と思われたドイツに西側諸国が当初支配され、これを打開したのは圧倒的犠牲を払ったソ連の参戦によってだった。その後はソ連の勢いが強まり70年代には未来は社会主義のものに見えた。なんとか対抗できたのは核兵器という抑止力があったからこそ。そして自由主義だけが生き残った。
    ・新しい宗教がとって変わるのは、新しいテクノロジーに対する説明ができることが重要な条件になる。21世期はバイオテクノロジーとコンピュータアルゴリズムが力となり、その主要製品は体と脳と心だ。中身を知っている人といない人の差は雲泥の差となる。


    第3部 ホモサピエンスによる制御が不能になる
    ◯8章 研究室の時限爆弾
    ・自由意志だと考えていた意思決定は先行する出来事により決まる生化学的連鎖反応が生み出したもの。自由は存在しない。欲望は選べない
    ・脳に電極を刺すことで、ラットの報酬系を操作して行動を操ったり、電磁波を与えるヘルメットを被ることで人の集中力を高められる。
    ・自己は一つではない
    ・人は時間軸を記憶せず、ピークと最後の平均で記憶する。出産後数日間コルチゾールとベータエンドルフィンを分泌し痛みを和らげ安堵感を生み出すことで喜びさえも引き起こす。これにより出産をトラウマから好ましい経験に変える。
    ・神や国家といった想像上の存在を人々に信じさせたかったら、彼らに何か価値のあるものを犠牲にさせればよい、その犠牲に伴う苦痛が大きいほど犠牲の想像上の受取手の存在を強く確信する。過去の苦しみに意味がなかったと認めなくて済むように将来も苦しみ続けることを選ぶ。
    ・脳は生化学的に瞬間的な経験を創り出すが、たちまち消えて無くなる。その経験の積み重ねが永続的な本質になることはない。物語る自己は果てしない物語を紡いでこの混乱状態に秩序をもたらそうとする、即ち虚構の人生の意味を与えようとする。
    ・自由主義は具体的なテクノロジーにより脅かされている。

    ◯9章 知能と意識の大いなる分離
    ・自由主義の勝利は人手が必要な政治、経済、軍事すべてにとって合理的だった。しかし21世紀はロボットとコンピュータに人手が置き換わる。
    ・コンピュータは依然意識を持たないが、パターン認識で意識なくとも知能の獲得ができるようになっている。
    ・企業や軍は知能は必要としても意識は必要としない。
    ・人の仕事がなくなるか?人には身体的労働と認知的労働があり、前者は機械に置き換わってきた。コンピュータが後者を置き換えられるようになった場合は、今まで1次→2次→3次産業の職の移り変わりがあったからといった同じことが起こるかは分からない。
    ・神、国家と人は共同主観的なものに所有されてきたものが、次はアルゴリズムになるかもしれない
    ・自由主義はシステムが私自身よりも私のことをよく知るようになった日に崩壊する。人々はキャリアやパートナーの選定ときむた重要な決断を下す時、心理的判断を放棄してデータに頼るようになるかもしれない。

    ◯10章 意識の大海
    ・テクノ人間至上主義: 意識を持たないアルゴリズムに対抗しうるアップデートされたホモデウスをテクノロジーで生み出し、人間至上主義を固持する。
    ・人間至上主義によれば、欲望だけがこの世界に意味を持たせるという。しかしもしテクノロジーにより、欲望を選べるとしたら、何に基づいて選択ができるのか?
    ・こうなってしまうと、欲望と経験に代わりうる候補は情報だ。

    ◯11章 データ教
    ・森羅万象はデータの流れからできている。データが膨大になるとヒトは情報を得て知識とすることができなくなる。よってコンピュータアルゴリズムに信頼をおく。
    ・生き物さアルゴリズムでデータ処理でできているというのが科学界の定説、政治や経済もデータ処理、独裁制は集中処理で民主主義は分散処理。
    ・今日の政治はビジョンを失い視野の狭い単なる管理者になった。良し悪しは別としてファシストは壮大なビジョンがあった。
    ・今日は市場原理に任せれば良いと考えられているが、これは市場にとってはよくても地球の破壊が進む懸念が生まれている。
    ・次たる政治体制は人類ではなく別の者(データとアルゴリズム)になるかもしれない。
    ・もし人類が単一のデータ処理システムだとすると、その出力はすべてのモノのインターネットという、更に効率的な情報処理システムの創造であり、この任務が達成されるとホモサピエンスは消滅する。人はデータ処理システムを構築するプロセッサーに過ぎない。
    ・情報が流れない状態が死となる
    ・人間の経験それ自体の価値は他の動物と変わらなくても、ネットに投稿することでグローバルなデータ処理システムを豊かにできる。だからそこ人間のデータは価値を持つ。

  • 人間至上主義からデータ至上主義に移行するだろう。データ至上主義は「すべてのモノのインターネット」という実装につながる。

    しかし、人間がなぜ意識(心)を持つかは解明されていない。だから、以下のようなことをこれから考えていかないといけない。

    「1 生き物は本当にアルゴリズムにすぎないのか?そして、生命は本当にデータ処理にすぎないのか?
    2 知能と意識のどちらのほうが価値があるのか?
    3 意識は持たないものの高度な知能を備えたアルゴリズムが、私たちが自分自身を知るよりもよく私たちのことを知るようになったとき、社会や政治や日常生活はどうなるのか?」

  • 人類が科学で何を変えてきてこれから変えうるのかを書いた本

    飢饉、疫病、戦争でなくなる人は現在僅かになっている
    次は不死と幸福と神性を求めるだろう
    歴史を学ぶ目的は私たちを抑える過去の手から逃げることにある

    狩猟時代はアミニズム、農耕革命によって有神論、科学革命により人間至上主義の宗教が生まれた
    主観的現実、客観的現実の他に共同主観的なものがある

    宗教的とは人間が考案したものではないが従わなければならない何らかの道徳律
    宗教も科学も全体では真理を深くは求めない。宗教は秩序、科学は力を求める
    人間至上主義では内なる経験から人生及び森羅万象の意味を見つけ出す

    経験の持続時間を無視してピークとエンドの平均で評価する
    専門性を高めてきた分aiに置き換えやすい
    雇用不能の無用者階級が生まれる
    科学とテクノロジが人類を大量の無用な人間と少数のアップグレードされた超人エリート層に分割する
    テクノ人間至上主義とデータ至上主義がある
    データ至上主義では意思決定はアルゴリズムが行う

  • 「ホモ・デウス 上下合本版 テクノロジーとサピエンスの未来」(ユヴァル ノア ハラリ:柴田裕之 訳)を読んだ。
    「サピエンス全史」は面白かったが、こっちは衝撃的だな。
    『今度は人間を神にアップグレードし、ホモ・サピエンスをホモ・デウスに変えることを目指すだろう。』(本文より)

  • 昔、友人にすべては01(ゼロイチ)で表現できると言われ、進路変更したことがある。でも、その後、転回することになる。現在の友人には、霊の話を聞かされているが、今の私には、その道に行くモチヴェーションもない。結局、科学主義が私の現状である。今、統計の勉強をしているのも、そのためだ。以前、『統計学が最強の学問である』というシリーズ本で、人工知能は人間には理解されないが、統計は人間に理解されやすいようになっている、という利点が書かれていた。

    でも、サピエンス(人間)に理解されるかどうかがもっとも重要なことなのかと問われると、困ってしまう。自分がサピエンスであるから、その視点でしか物事を見えないような気がする。それが現状である。

    知能と意識を区別していたところに感銘を受けた。確かに、人工知能は時代の申し子であるが、人工意識はあまり聞いたことがない。私は昔から、自己意識は必要ないという路線で生きてきた。意識もまたどこまで必要なのか不思議に思ってきた。本当のところを言うと、知能も必要ないのではないかとさえ思っているのだが、とにかく、万事が万事、うまく動けばいいという発想だった。それが、知能で動くのか、意識で動くのか、それはどうでもいい、そう考えてきた。しかし、結局、何かで動くと考えなければならない気もする。意識の価値を少しでも知りたい。

    そういえば、チャーマーズの『意識する心』という本もあった。仮に、すべてをコピーすることができるとするならば、意識の価値はなくなってくる。なぜなら、全く同じ意識なら、もうここにあるのだから、さらにもう一つは必要ない。また、他のすべてはコピーされるけど、意識だけコピーされないのであれば、そして、まともに動くなら、意識なんか必要なかったということになる。

    つまり、要約すれば、「意識は共有されず、知能ばかり共有される」:そこがポイントかも知れない。

    霊を信じている友人は、きっと、意識も共有されると信じているだろう。テレパシーの話もよく話した。だが、どういう要件を満たせば、テレパシーが成功したと言えるだろう。

    だがしかし、神を絶対視していた時代があったとすれば、これからの時代も変わりつつあるはずだし、価値をどこにおくかも変わってくるだろう。そのとき、何がいちばん大事なのかを深く心に刻んでおきたい。

    その変化というのも、カタストロフィのようにやってくるのでなく、徐々にやってくるというのがこの本を読んでの読後感である。

  • 本書は知の巨人が書いた、化物じみた本であり、あまりに学んだことが多くノートにまとめた要点は16ページに及んだ。

    近年はAIの出現により人間の仕事が奪われるという観点で書かれた書籍が多い。しかし、本書によれば、AIを含めたテクノロジーの進歩により奪われるのは人間そのものの存在価値である。正確には、本書では遺伝子操作、生化学操作、サイボーグ工学などを含めた総合的な視点での科学の進歩について言及している。私達は自らが信じるイデオロギーや宗教観が根本から崩されかねない危機に瀕している。

    しかも、「幸せの追求」という大義名分のもと、私達はそれらのテクノロジーの進歩を称賛し切望している。

    非死で能力を強化された超人を「医療」という体で生み出し、その技術による恩恵に預かれない「人間」という下等カーストが生まれる。

    また、膨大なデータから瞬時に答えを導き出すコンピュータにもはや人間は太刀打ちできないことを本書は事実に基づいて名言している。想像性と芸術の領域は安泰だと思っている方は是非本書を読んで欲しい。

    感情というものが空想の産物であることもまた、私達が今まさに自ら暴こうとしているのだ。もし人間がアルゴリズムでしかないのであれば、もはや生き物ですらないもの以下の存在となる。そして、データに所属すること、つまり自らの生体情報や知識をデータベースに提供することが生きる価値となると著者は言う。嘘だと思うなら、ウェアラブル端末に身を包み、必死にSNSに情報を発信している現代人を想像すれば良い。

    著者が本書に込めたメッセージは、これらの未来を防ぐために「私達はどう生きたいのか」選択する必要があるということだ。

    私は著者という知の巨人と比べてまったくの無知ではあるが、これから生きる上でこの人間の自己矛盾に注意して行動を選択していきたい。

    最後に、本書は哲学書ではなく、科学書であると述べて結びとする。

著者プロフィール

歴史学者、哲学者。1976年イスラエル生まれ。オックスフォード大学で中世史、軍事史を専攻し博士号を取得。現在、ヘブライ大学で歴史学を教授。『サピエンス全史』『ホモ・デウス』『21 Lessons』。

「2020年 『「サピエンス全史」「ホモ・デウス」期間限定特装セット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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