与楽の飯~東大寺造仏所炊屋私記~ (光文社文庫) [Kindle]

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  • (2021/218)東大寺の大仏像建立のために全国から3年間の夫役で集められた者たち。主人公の真楯もそんな一人として造仏所に回された。そこで出会う、集められた仕丁たちのために旨い飯を出し続ける造仏所の炊屋である宮麻呂を軸に描かれる、仕丁として大仏建立に携わることになった下々の者たちの話。辛いに決まっているのだが、真楯の性根故か、全体としてはハートウォーミングにまとまっていると思う。長らく訪れていない東大寺の大仏像を観に行きたくなったな。

  • 近江の国から徴発された真楯は国家鎮護の大仏鋳造のために地方に割り当てられた労役を担う仕丁である。三年の期間勤めれば故郷に帰ることができる。しかし経験の無い仕事につくことに大きな不安がある。大仏造営に多くの人が集まってくる。そのな中で人々が心待ちにするのが食事時だ。真楯が割り振られた場所の炊屋はどこよりも旨いとの評判だった。この小説は、この炊屋の周りで繰り広げられる物語である。

  • なんとなく、続きが読みたい気になる。
    せめて、大仏開眼まで書いてほしかったぁ。

  • 仏像への興味を皮切りに、神社仏閣巡りをするようになりました。
    各地の寺社を参拝しているうちに、日本の歴史、特に古代への関心が高まってきました。
     
    そこで出会ったのが小説家、澤田瞳子の作品。
    これまでに、平安時代の仏師定朝を題材にした、『満つる月の如し』などの作品を読んできました。
    https://booklog.jp/users/makabe38/archives/1/B00OICW23O

    文庫化されている作品を探していたところ、奈良の大仏建立に関する作品があると知り、電子書籍版で読むことにしました。
     
    西暦700年代の中ごろの、奈良が舞台になっています。
    仏教により国を治めようとした、聖武天皇。
    その意思により建立されようとしている、奈良東大寺の大仏。
    その仕丁として、近江から上京してきた若者が、役務に取り掛かる場面から物語が始まります。
     
    数ある仕事の中でも、特に負担の重い作業を担当することになった、若者。
    しかし彼の配属された班には、飛び抜けて美味しい食事が出されています。
     
    作業をする人を思いやり、食事を作る炊男(炊事係)。
    そんな彼をしたって、さまざまな人が集まって・・・という展開。
     
    皆に慕われながらも、どこか影のある炊男。
    彼にはどのような過去があるのか、なぜ作業をする人たちに、ここまで心を込めて食事を作るのか。
    その謎をめぐる展開が、本作品の大きな流れになっています。
     
    大きな仏像、それも国の平安という、天皇の祈りをこめた一大事業。
    作業する人たちは、どのような日々を送っていたのか。
    そして彼らにとって、仏とはどういう存在なのか。

    大仏建立に関しては先に、『国銅』を読みました。
    https://booklog.jp/users/makabe38/archives/1/B00PA6KP2C
     
    『国銅』が、巨大建造物を造る仕丁の作業に光をあて、その困難を描いているのに対し、こちらの作品ではその造り手たちの内面を掘り下げた作品なのだと、受け取りました。
     
    古代を舞台に、このような小説も書けるものなのですね。
    この作家さんの作品は今後も、チェックしていきたいと思います。
     
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著者プロフィール

1977年京都府生まれ。2011年デビュー作『孤鷹の天』で中山義秀文学賞、’13年『満つる月の如し 仏師・定朝』で本屋が選ぶ時代小説大賞、新田次郎文学賞、’16年『若冲』で親鸞賞、歴史時代作家クラブ賞作品賞、’20年『駆け入りの寺』で舟橋聖一文学賞、’21年『星落ちて、なお』で直木賞を受賞。近著に『漆花ひとつ』『恋ふらむ鳥は』『吼えろ道真 大宰府の詩』がある。

澤田瞳子の作品

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