コンビニ人間 (文春文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • エンタメとしても、
    ホラーとしてもコメディとしても読める。
    現代人の生き辛さの話と読むことも、
    逸脱したサイコパスの話と読むこともできる。
    この作品は紛れもなく傑作だ。

    小説が他の芸術作品よりも優る数少ない強みは、個人のバイアスを再現できるという点にあると考えている。
    言い換えると、映像作品や絵画は取り込む情報についての自由度が高すぎるため、消費者自身のバイアスが作品の消費を歪めるが、小説は作品がもつ情報量が少ないため、消費者のバイアスにあまり影響されず作品を消費できる。
    つまり小説は、他人のバイアス(見る風景)を楽しむ芸術ということもできる。
    ただ実は、小説を読んでもその強みを活かした作品にはなかなか出会えない。そんな中で、この作品は小説ならではのよさが十分に楽しめる作品だと言える。

    それでいて、この作品は楽しいだけでなく、何度となく読者の「人格」を根底から揺さぶる。みんながそうではないだろう、ただ、おそらく作者と同じような多様化が許容される時代に溺れて、疲れ切った我々のような世代には大いに効く。なんなら悪酔いする。

    コンビニ人間が妹に放った叫びは、私の叫びでもある。

    賞味期限のない小説というのもあるのかもしれないが、この小説をこのタイミングで読むことができてよかったと思っている。この小説は正に今、コンビニ人間と同世代の人間が読むべきものだと感じているからだ。

  • 「普通」とは何かを考えさせられる小説。同調圧力の強い日本で生きてきて、自分はそれに慣れてしまっているが、生まれつき「普通の感覚」が理解できない主人公の目線から見ると、この社会は激しく歪んでいると言わざるを得ない。

    大多数の日本人はこの「普通の感覚」を共通言語として関係構築を進めるが、これが通じない相手が現れると、その人の人格に配慮することもなく、土足で踏み入り、無理やりにでも「普通の感覚」に当てはめ、理解できたことにしようとする。この描写が鋭く鮮明で、当たり前だった日常が途端に気持ち悪く見えてくる。

    多様性を認めようというスローガンばかりが流れる一方で、日本社会の現実はその逆に突き進んでいるように思える。皆が他者との共通性ばかりを求め、理解できないものは厳しく排除しようとしている。
    「理解できなくても、そばに居られる」そんな緩くて優しい社会になっていってほしい。

  • 私は死んだ小鳥を見て「焼き鳥にしようよ」って提案したり、ケンカしてる男子をスコップで殴って止めたりしたこともないですが。(どちらも主人公のエピソード)
    この本を読んで、「まともじゃない主人公が理解不能」って感想を抱く人の方が怖い。
    そういう人はレペゼン「まともな人間」を自負しているのでしょうね。

  • 変わった人も、結婚してない人も、今の世の中には沢山いる。どう接していくか本人次第、、なんて偉そうな事を言う自分も、どんな人間なのだろうか。

  • 文体は淡々としていて軽く読みやすい。

    それでいてほんのりとした違和感を抱えながら進み、ぎょっとする異常性に帰結する。

    そこから、どこかで見たことのあるような景色でありながら全く知らない町を眺めるように、この物語を乗せた列車は進んでいく。目的地がわからないまま。好奇心と恐怖心をくすぐりながら。真っ暗なトンネルに突入し、そして。

    先の見えない物語というのは多くあるが、
    これは今までにない、先の見えなさだ。

  • 学生時代にコンビニバイトをしていたので
    リアルすぎた。
    コンビニやファストフードは正しいことがわかりやすいので、主人公と紙一重な人は多いと思う。宗教と同じ。
    これは、ナカナカきてるな、と思いつつ、読みやすいので1日で読んだ。
    いい人が出てこないように感じるのは自分がどの立場にでもありうるだからだろーな。

  • 最近難しめの本が続いたので箸休めというか本休め。人気のある本のようなので、読みやすいだけで内容薄いんだろうなーと読んでみたら意外と面白い。この本がよく読まれているということは、同じように思っている日本人が多いということでしょうか。
    ムラ社会にうまく適応して生きていくことができない主人公。ただし本人としては、それを苦にしているわけでもなく、むしろ周りの反応に疑問を持っている様子。
    日本人に限らずですが、異質なものは主流なものに統一される傾向があるように思います。宗教でも異教徒よりも異端者のほうが嫌われるように、変な外国人には寛容な日本人も、変な日本人を見る目は明らかに先のそれよりも差別的な気持ちがこもっているように思います。同じ文化を共有してきた民族だけに、その主流に沿った考えが出来ない人は淘汰されるべきということでしょうか。
    かといって近年の日本のように、異質な日本人がどんどん増えていくのも、趣やら風情といったものがなくなりそうで怖いですが。なかなかそのバランスは難しいと思います。

  • 昨今、「多様性」という言葉がよく使われるようになった。
    結婚するか、しないか。
    子どもを産むか、産まないか。
    恋愛対象は同性か、異性か、または無しか。
    その中には当然「どんな働き方をするか(しないか)」というのもあり、その多様性も認められてしかるべきはずなのだが、「一生コンビニでアルバイトをして暮らす」という選択肢は「普通」ではなく、「治す」べき社会不適合であるとみなされる。
    主人公の生はコンビニ人間であってこそ輝くのに、最大の理解者かと見えていた妹にさえ気持ち悪がられるのだ。

    白羽は自分に都合のいい主張を繰り返すクソみたいな男だが、気持ちは分からなくもないし、自分を傷つけるのと同じ論理をかざして他人を傷つけようとするのはきっとよくあることだろうだな、と思う。

    この作品は、「多様性」ということばでキラキラに飾られた現代の欺瞞を、つるつると気持ちよく暴いてみせる。
    たぶん私も、小学校の同級生に主人公と同じような人がいたとしたら、何か事情があるからそうせざるを得ないのだろうと決めつけていたと思う。よもや自ら望んだ生き方だとは考えないだろう。
    ちょっと反省した。

    「普通の人」に擬態しようとする主人公の姿は、私にも身に覚えのある痛々しさだ。
    でも、「普通」であることをひけらかして主人公の人生を詮索する人たちも、多かれ少なかれ「普通」を懸命に演じているのだと思うのだが、主人公の視点ではそこに気づくことができないため、なんとなく一方的にヤな感じに描写されているのは少しアンフェアではないかとも思う。
    普通じゃない人を指さして笑うことは、自分が普通であることを最も手っ取り早くアピールできる手段だしね。

  • 面白かった。一気に読了。主人公の視点がすごく面白い。入ってくる情報をあまり感情を介せず処理していく様は人造人間っぽい。主体がないというわけではないのだけれど、明確な目的とか合理的な指示をその通りに遂行することのみが行動原理。周囲を緻密に観察しているのだけれど、それに対してあまり好き嫌いを感じるわけでもない。しかし彼女の描写する「普通の」人々が押し付けてくる価値観や同調圧力、そこからはみだしている人に対する距離感がだんだん異様に思えてくる筆致にやられた。

    人目を気にしているようでいて、その気にし方が独特であるが故に、世間的な「常識」とか規範からはみだしてしまう主人公の人生。コンビニに出会ったことによって、その中にある秩序に委ね同調していくことに安心感と満足感を得ている主人公の内面と、彼女に向けられる外部の視線の残酷さと理不尽さのコントラストも秀逸。

    前半は単純に知らなかったコンビニの舞台裏の描写だけでもかなり面白かった。身だしなみに関する規則は校則を思い起こさせる。没個性。役割に埋没することを仕草や身なりの繰り返しですりこまれていくのを、「部品になる」と表したのもうまい。そうだ、中学生の頃、そうやって社会という仕組みの部品として規格化されていくことにものすごく抵抗感があったことを思い出す。

    巻末の解説も素晴らしいです。

  • 芥川賞受賞作とのことだけど、自分には面白さがわからなかった。主人公の価値観は世の中の大勢とは違うってだけで、別に好きに生きてれば?だから何?という感じ。ただのバイト好きの日記を読んでる印象。そしてこの主人公の生き方は、僕の価値観では惹かれないので、読後の感想はふーん、で終わり。文章は大変読みやすいので星2つ。

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著者プロフィール

村田沙耶香(むらた さやか)
1979年、千葉県印西市生まれ。二松學舍大学附属柏高等学校、玉川大学文学部芸術学科芸術文化コース卒業。
2003年『授乳』で第46回群像新人文学賞優秀賞を受賞しデビュー作となる。2009年『ギンイロノウタ』で第22回三島由紀夫賞候補及び、第31回野間文芸新人賞受賞。2010年『星が吸う水』で第23回三島由紀夫賞候補。2012年『タダイマトビラ』で第25回三島由紀夫賞候補。2013年、しろいろの街の、その骨の体温の』で第26回三島由紀夫賞受賞。2014年『殺人出産』で第14回センス・オブ・ジェンダー賞少子化対策特別賞受賞。2016年『コンビニ人間』で第155回芥川龍之介賞受賞。
2018年8月末、『地球星人』を刊行。

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