文藝 2018年冬季号

  • 河出書房新社
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本棚登録 : 20
感想 : 4
  • Amazon.co.jp ・雑誌 (680ページ)
  • / ISBN・EAN: 4910078211184

感想・レビュー・書評

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  • 芥川賞候補作、高山羽根子著「居た場所」読了。亡母のいまいちな煮物の味まで似た小翠との、以前一人暮らしをしていた場所への旅。黄緑色の液体の無味。小さいサイズの島。タッタ。不思議世界に迷い込んでいるのにずっと淡々としていて好感。

  • 木下古栗「メルカリ」収録。

    五十代も後半に差しかかり子育ても終わった城ヶ崎美智代と目黒俊子は、ランチのあと街歩きをしているうちに住宅街で見つけたギャラリーに立ち寄る。観光客の数に応じて色を変えて地図上にグラデーションを配置したもの、各都市で自分のたどったルートを描いたもの、バックパックやスーツケースの質感を拡大して描写したものなど、旅をテーマにした作品を女性スタッフの解説を聞きながら観覧していく。変形キャンバスにチベットの聖地・カイラス山を立体的に描いた作品が頭上に展示されていた。カイラス山はインド神話に出てくる聖なる山・メルと同一視されていて、男根の象徴でもある、と女性スタッフは説明する。その作品名は『メルカリ』と言う。作品を見終わったあとも、俊子はメルカリに見惚れるのだった。

    「平衡世界」同様、新連載ということになっているが、続きは書かれていない模様。

  • 高山羽根子「居た場所」★★★
    木下古栗「メルカリ」★★★★

  • 語り手の妻である異国の女性が、かつて初めて一人暮らしをした土地を訪ねたいと願い、語り手とともに数日間旅行するという物語。
    一人暮らししたところを再訪するのであって生まれた場所ではない。また異国は、中国名の女性なので中国かと思っていると、そうでもない。
    全体的に、特に異国での出来事はとらえどころがなくふわふわしている。
    微生物の話。語り手はおそらく酒屋で、酒造りにも人間の中にも微生物がいると妻に語る。妻はいまいちその概念が理解できず小さな虫みたいなものだと思っている。
    黄緑色の液体の話。女性の故郷で遺跡の発掘調査があり、そこで見つけた液体を飲むと、有害ではないが耳から黄緑色の液体が出てくる。これは訪ねた先の街で、かつてのアパート?でも再登場する。女性の体内から出てきて、語り手もそれを舐め昏倒した。
    他、異国の地では移転する市場、市場での腐敗した魚のガスによる爆発、真偽の程は分からないがその国の入植者のミイラなどが出てくるが、全て、現実としてはあまりに不可思議なことも、同じ調子であくまで淡々とかかれているし、語り手も疑問を挟まない。そういうものとして受け入れられている。そしてそういえばタッタ、という動物も実在しない。
    本書のテーマは何であろうか?
    居た場所の共有、歴史の共有、微生物の共有?

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