ものすごく面白かった。1巻で「典型的な俺TUEEEEだな」と判断して読むのをやめようとしている人に3巻までは読んでくれと頼んで回りたい。
ミスリードに見事に引っかかりました。アノス視点だからこそさらっと流された描写が後々意味を持っていたとわかると、気にするべき時ではないから流していただけで、実際はその時点で違和感に気付いていたのだなとアノスの頭の良さが感じられます。
ただ、ずっとアノス視点なので死んだかのような展開をされてもピンピン周りを観察しているようにしか見えなくて(実際ピンピン周りを観察していたのでしょうけど)、他のキャラの戦闘シーンや会話もですが、もう少し地の文はなんとかならなかったのかというのは登場人物が増えてきた二巻から思います。場面転換後にアノスしかいないのかミーシャ達もいるのかという判断ができなかったり、誰がしゃべっているのかわからず読み直しが必要な場面があったりと気になる点がないわけではないのですが、総合的には読みやすくて先の展開が気になって面白い。描写の甘さも今後改善されることに期待しています。
ボクっ娘が大好きなのでエレオノールが今後も出てきてくれるととても嬉しい。初登場時にいきなりアノスが巨乳をガン見し出したのでセクハラをする魔王は解釈違いと思いきや、栄養状態が良い証拠、平和の証、と下心皆無で一安心。下心がなさすぎてサーシャとのやり取りがアンジャッシュのコントと化していたのはさすがにサーシャが可哀想ではありましたが……。
サーシャの「わたしの魔王様」発言連発や、アノスを愚弄されたことを密かに根に持っていたような言動が可愛すぎる。仲間の前ではただのツンデレチョロインなのに、戦う姿は強くて優雅なお嬢様然としていてかっこいい。アノスもサーシャも、じわじわと絶望を味わわせるような戦い方をするところが魔族っぽくてとても好きです。
アノスのファンサが段々手厚くなっている。2巻の件でファンユニオンメンバーの名前を完璧に憶えただけでなく、手を差し伸べたり、妄想の内容を聞いて再現したりと、ファンからすれば寿命が縮むんだか伸びるんだかわからないような行動を素でやってのけるなんて恐ろしい……。
いつの間にかファンユニオンの戦闘方法はすっかり歌になったのですね。4番の歌詞はいったいどうやって作ったのかわかりませんが、オタクの深読みはすごいということでしょうか。
2巻の感想で怖い魔王様を1回は見たいと書きましたが、今巻でも見せてくれて大満足です。「勝手に死ぬな」という台詞は感動シーンとして使われる作品が多い中、痛めつけてる途中で死んで楽になるのは許さないという意味で使われ、実際に死んだら強制的に生き返らせて続行で痛めつけるというアノスの『暴虐』の部分がけっこうなページ数で見られて最高でした。
アノスをそこまで怒らせた理由としてミーシャを傷付けたというのはわかるのですが、勇者カノンを騙ったことにもかなり怒っている様子だったのは驚きでした。2千年前の約束を果たそうとカノンを探していたり、魔王を騙られることよりも勇者を騙られることの方に怒ったり、心の中でも言葉でもカノンを褒めちぎっていたりと、アノスのカノン大好きっぷりが凄まじい。一方カノンはカノンで、2千年かけてアノスを守る準備をしていた程度にはアノス大好きで、魔王と勇者の友情がたいへん熱い。勇者にとっての勇者は魔王、ここだけで星5です。
勇者カノンと偽魔王の正体が判明し、人間と魔族、勇者と魔王が力を合わせて強大な敵に打ち勝つというどう見ても最終回な展開に、あと3冊買っているはず?と他に何をするのかと最後のページに近付くほど疑問が募りましたが、一応謎は残っていたのですね。殺した程度では死なないし絶対に負けることもないまさに俺ツエーなのにまったく嫌味に感じないアノスが巻を追う毎に好きになっていくので、末永く続いてほしいです。