犯罪小説集 (角川文庫) [Kindle]

  • KADOKAWA (2018年11月22日発売)
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感想・レビュー・書評

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  • 罪を犯してしまう人って、別に特別な人ってわけじゃないのよね。日常の暮らしのつながりの中でそうなってしまう。自分は大丈夫かしらと、ふと怖くなる。
    短編集だから余計にそう感じたのかもしれないけど、週刊誌の実録犯罪記事みたいと思った。

  • 世間で発生した事件をモチーフに、その事件の容疑者に関係する人たちの心の中を描く。少女失踪で疑われた若者、スナックママの保険金殺人、バカラに嵌る経営者の横領、集落の村八分殺人、プロ野球投手の凋落。話題になった事件を題材にしているということが連想出来る。自分の周囲の人間が犯罪者となる…。吉田修一の作品は、そういった雰囲気に溢れている。犯罪者と隣の人に、どういった違いがあるのだろう?向こう側に落ちた人とこちらにいる人との境目は紙一重。昨日隣にいた人が、今日は犯罪者として報道される。まさか自分に起こるとは思わないことが、明日現実になる怖さがある。

  • "百家楽餓鬼"と"万屋善次郎"が好みでございました~。

  • 『青田Y字路』
    10年前の少女失踪事件。犯人は一体誰だったのか。舞台は田舎の村。ムラ社会特有の住民の団結力、異分子を受け入れぬ風潮、そして噂の広まる速度などがリアルに描かれている。序盤の町内会の屋台で偽のブランド品を売っている外国籍の母(洋子)と子(豪士)にスポットが当たり続ける。主人公の五郎は村人から排斥される母子を何度か助けるが、排斥の意識は他の村人と同じだった。そして事件が起こる。五郎の孫娘にあたる愛華が帰ってこない。最後に彼女に会ったのは友達の紡で場所は青田Y字路。ストーリー構成は①事件当時の村人による捜索→②高校生になった紡→③今の五郎→④二度目の事件→⑤豪士の記憶の順で描かれる。
    ①では紡の父親が愛華との記憶を愛華の甘い匂いとともに思い出す描写があり、父親の闇が描写される。②では、事件当日に愛華と別れた際に、愛華の誘いを断ったこと、愛華が作った花の冠を『いらない』と断った紡の罪悪感が描写される。③では愛華に向けて毎日狂ったようにお経を唱える妻の朝子にうんざりする五郎が描かれ④の事件が起こる。二度目の少女失踪。犯人は誰だ?豪士に疑いがかかり彼の部屋には誰かを監禁していたような跡が。豪士は油そば屋を放火する。村人が発見したが豪士はすでに死んでいた。そして青田Y字路付近で犯人と少女が確保される。犯人が誰だったかの描写は無し。⑤では小さい頃から同級生に迫害されていた豪志の記憶が描かれる。そしてひとりで泣く豪士に花の冠を渡す少女。豪士はその少女を追いかけるところで物語が終了。
    おそらく1回目の事件の犯人は豪士で間違いない。2回目は読者の想像に任せる形になっている。紡の父親もそうだが、誰もが罪を犯しうること、紡のように事件の当事者に誰もがなり得たこと、朝子のように事件は人の心を蝕むこと、そしてムラ社会の噂と排斥の恐ろしさを、「犯人」の存在を曖昧にすることで描き切った作品であると感じた。
    『曼珠姫午睡』
    夫と性生活が無く愛情が尽きてきている英里子が、事件を起こした旧友のゆう子のことを思い出す物語。経営していたスナックで殺人事件を起こして捕まったゆう子がニュースで取り上げられることで、高校生以降のゆう子が自分が知っている彼女のイメージとかけ離れていることに驚く英里子。英里子が唯一持っているゆう子との記憶は、中学の体育の授業でテニスの試合の際に、見た目も地味でどんくさい彼女が英里子の球に必死に喰らい付いてくる姿のみ。その姿が当時気持ち悪いと感じた英里子。反対にニュースがとりあげるゆう子は見た目も派手でスナックにきた男と手当たり次第に寝る人物、自分に気のある男に保険金目当ての殺人をさせたというもの。甘い匂いのする寝室以外は全てゴミ屋敷だったという友人の証言があり、中学の同級生の洋介は同じクラスのゆう子に唐突に筆箱を渡され、その後話したことはないが文集の中で一番仲の良い友達の欄に自分の名前が書かれていた記憶を語った。
    物語の転換が、英里子が友人から紹介されたアロマエステに行く場面。エステで英里子を担当した佐野の手の感触に魅了され、自分を求める佐野に体を預けそうになる英里子。ゆう子は男を落とす時に「気持ちは平気でも、私は体が寂しがりやもん」と言っていたという。そして英里子がゆう子の過去を調べるうちに彼女がスナックでは「英里子」と名乗っていたことも明らかになる。この辺りで物語の主題がゆう子の執着心の強さとそれが英里子に伝染する様子を描いたものだと検討がついた。
    物語の最後、英理子はついに佐野に応えそうになるが、思い留まる。その時に英里子は曼珠沙華の幻影を見た。英里子が持つゆう子とのもう一つの記憶が小学校の頃の記憶。ゆう子の母親が教えてくれたこと、「曼珠沙華には毒がある」。幻影の中で曼珠沙華に手を伸ばした英里子より先にそれを摘んだのはゆう子だった。英理子はゆうこにはなれないし、その逆もまた然り。そしてそれは「毒を持たない」英里子にとって幸せなことだということが示唆されている。
    『百家楽餓鬼』
    金持ちの家に生まれた永尾。心に余裕のある永尾は家の仕事を継いで仕事も好調、NGO活動で妻と共に年に一度のアフリカでの支援活動を楽しみにするような男だった。しかし経営者が招かれるバカラにのめり込むようになり会社のお金を不正利用。お金にも心にも余裕が無くなっていく永尾の変貌っぷりが描かれている。バカラで借金まみれになったが誰にも言えない。そのタイミングでの親友との地元での飲み。親友になら、と借金を打ち明けようとしたタイミングで、その親友から「金を貸してほしい」と相談を受け承諾してしまう。自分の唯一の救いの場所だった友人との関係が壊れた瞬間だった。その後も借金をバカラで返そうと躍起になり、妻には仕事と言い残してマカオに入り浸るようになる。最後のアフリカへの訪問のシーンは印象的。アフリカに発つギリギリまで飲まず食わず寝ずでバカラに打ち込み、さらに借金を増やしてアフリカに帰ってきた永尾の様子がおかしい。足取りは重く頭も働いていない。永尾には大量の蝿が群がっているがそれにも気付かない。それでも永尾は「ちゃんと現実を見ろよ!俺たちの手でこの子たちの未来を変えてやるんだよ!」と頭の中で繰り返す。彼はアフリカの少女が持つスープを奪い取って飲み干す。その間も彼の頭には同じ言葉が響き続ける‥‥

  • 過激な物語にそれぞれ個性があって面白い。映画版に2つの短編が使われているが、他の短編も面白いと思う。

  • 短編集ではなかなか味わえない読み応え。濃い。こういう言い方するとアレだけど、吉田修一作品は追い詰められていく人間の心理描写が毎回最高たまらん。各話は格好のついた題を冠してるのに、本のタイトルもうちょっとどうにかならんかったんか

  • 初の吉田修一。有名な長編の方が面白いかも?という印象。解説にあったけど、中上健次の「千年の愉楽」というのがもしかしてモチーフ?という以前にこの本を読んだことがないのでわからずw。

  • Kindle Unlimitedにて、推理物かと思って読み始めたので1つ目のお話で「なにこれなんにも解決してないじゃん!」と思ってしまった。読了後調べてみると、どれも実際の事件をモチーフにしているようで、気になるので事件の方も調べてみようと思う。

  • 映画「楽園」の原作。あぁ、やっぱり吉田修一さんだと思いました。ただ、短編なので「悪人」や「怒り」のような厚みのようなもの感じなかったのだけど、楽園の原作でもある「青田Y字路」かな。人から信じてもらえない人間が、何かをきっかけに犯罪を犯してしまう。その人間の追い詰められ方、追い詰める側の気持ち、そういうのが吉田修一さんらしさなんだなと思いました。同じ意味で、「万屋善次郎」も同じといえば同じなのだけど、原因が「それっ」っていうところが何だか余計やりきれないものを感じました。

  • 実際の犯罪がもとになっていると思われる5編の犯罪小説集。いつの間にか引き返すことができないところまで行ってしまった「犯罪者」たち本人の、あるいは関係する人々の思いの描写にぐいっと引き込まれた。

  • 映画「楽園」で描ききれていない細部が分かる。

  • 様々な犯罪行為にまつわる短編集。犯行にいたる過程や心境が描かれているが、その内容に意外性はなく、淡々と語られていくのみ。全体的に暗くて陰気だし、読んでて辛かった。

  • 2019/10/31 Amazonより映画「楽園」公開記念映像化作品フェアにて349円にてDL購入。

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著者プロフィール

1968年長崎県生まれ。法政大学経営学部卒業。1997年『最後の息子』で「文學界新人賞」を受賞し、デビュー。2002年『パーク・ライフ』で「芥川賞」を受賞。07年『悪人』で「毎日出版文化賞」、10年『横道世之介』で「柴田錬三郎」、19年『国宝』で「芸術選奨文部科学大臣賞」「中央公論文芸賞」を受賞する。その他著書に、『パレード』『悪人』『さよなら渓谷』『路』『怒り』『森は知っている』『太陽は動かない』『湖の女たち』等がある。

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