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感想・レビュー・書評
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沖縄の独立問題を、フィクションで物語化する。
本土の人間の書く沖縄の物語は、腫れ物に触るようなことがあり、遠慮があるが、その遠慮がないところが、こぎみよい。現実に起こりうる事件の想定を積み上げて、フィクションとして沖縄独立を組み立てていく。現実と非現実の間の中に、物語が生まれる。沖縄に対して、無関心であってはならないという意味では、よく考え抜かれた作品である。琉球王国のつながりの中で、尖閣諸島問題につなげるために、冊封史録を持ってくるのが、ユニークでもある。
警察官の姉が、沖縄の海の訓練で行方不明になり、主人公の妹がその真相を突き止めようとする。
その物語の時期には、アメリカ兵の女子高生強姦殺人事件が起こり、県民が怒りの集会を開いていた。警察が、女子高生を貶めるようなニュースを意識的にリークした。警察への反発も生まれる。
オスプレイが、街に墜落して、死亡者がでた。墜落と不時着の言葉にも言及する。
連続的な沖縄を揺るがす事件が起こり、沖縄県民は、怒りが臨界点近くになる。
県民集会に、沖縄県警の本部長が、不適切なリークの謝罪のために参加していたら、狙撃されて死亡する。アメリカの沖縄基地の司令官が、沖縄の基地内で狙撃され、死亡する。
一体誰が?そして、何が起こっているのか?という話は、かなり複雑で際どい状況である。
妹は、沖縄新聞の記者。姉の行方不明の原因が、「冊封史録・羅漢」にあるという。
冊封史録は、1534年から1866年に書かれた記録で、全部で12巻ある。
そこには、尖閣諸島が、誰の領地であるのかが書かれているが、羅漢は謎の文書である。その羅漢を巡って、物語は進展していく。
沖縄は、琉球王国だった。そして、琉球処分などの歴史的な経緯の中で、沖縄は抑圧され続けていたのである。アメリカ兵が4名殺されることで、自衛隊が治安部隊として派遣される。
アメリカ兵を守るためという。沖縄県知事は、自衛隊の派遣を要請せず、首相が派遣を命令する。
そこから、混乱が始まるのだが、一体誰がそのようなことをしているのか?アメリカ、中国の反応も、敏感である。沖縄独立の県民投票も行われ、賛成が過半数を超える。ここが、ちょっとあっさりしているのが、個人的に残念だなぁ。もっと、県民投票に関して突っ込んで欲しかった。
沖縄独立は、可能なのか?その物語のシナリオが良くできている。
沖縄は、改めて、琉球王国として、長い間 成立していたということに、今後の沖縄を考える上で重要な意味を持っている。あまりにも、盛りだくさんな事件が起こるが、もう少しシンプルにしても
この物語は、成立するかもしれない。少なくとも、沖縄の心象風景を代表する人が存在しないのも弱いのかな。でも、スリリングで、楽しく読めた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
現代の沖縄を舞台に、琉球王国時代の冊封使にまで遡り、尖閣問題での中国との対立、米軍基地問題などの沖縄県民の反米(さらには反日本政府)の感情も露わに、琉球王国の再興(日本国からの独立)へと繋がる話を描く。その中心にあるのが、消された文書(というか失われた文書?)である「冊封使録・羅漢」。主人公は、姉の死が、この文書に関連する作戦のためだったと知った妹。謎解きとサスペンスと、現実の沖縄の複雑な問題を顧みた時に、それがフィクションで終わらない可能性に慄く。いっき読み。
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沖縄独立?なんかピンと来なかった。沖縄のことをあまり知らないからだろうか?
独立したらいいこともあり、でも悪いこともある。それを天秤にかけてやっぱり独立したいのか?治安部隊の人たちも人間であり、そんなに命令されたことに対して従えるものなのか?そういう人たちが治安部隊になりうるのか?1人の人間としてそれでいいのか?それでいいからなるんだろうな。その組織を心から信じていないとできない、と私は思う。