- Amazon.co.jp ・電子書籍 (269ページ)
感想・レビュー・書評
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この本自体は2018年に出版されたもの。それなのに今の時代にぴったりな感じがする。
専門書っぽい風貌と文字の小ささだが、内容は一般向け。
ウイルス研究の歴史、生物学的トピックス、かなり具体的で面白い。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
無味乾燥なタイトルだけど思っていたのとは違った、面白かったむちゃくちゃ興味深い話が一章に何カ所も出てきて、それが11章もある。
天然痘ワクチンの話で「400kgの牛と格闘した」なんとも時代がかった逸話があったが、著者ご存命御年90歳。そう昔の話ではなかった。体張って菌と格闘してるのに90歳とはぜひともその秘策をご教示いただきたい。
それにしても牛も気の毒。病気でしんどいのに連れてこられて、人間に植える菌をお肌からコリコリ採取され、看病もされず、はい、おおきにさようならとは。
命をツール視する話はたくさん。 -
人は、ウイルスに囲まれ、ウイルスと共に生きている。数十億年にわたり、生物と共に進化してきたウイルスの不思議な生態について、ウイルス学の第一人者が解説した書籍。
ウイルスと細菌は、まったく別の存在である。
・細菌:
細胞の中に遺伝情報(DNA)とタンパク質合成装置(酵素)を備え、独力で分裂し増殖できる。
・ウイルス:
タンパク質合成装置がなく、独力で増殖できない。だが、生物の細胞に侵入すると、細胞のタンパク質合成装置を乗っ取り、大量に増殖する。
人類は、1980年に天然痘ウイルスを根絶した。しかし、天然痘ウイルスは米国とロシアの研究所で保管されており、流出が懸念されている。また、天然痘ウイルスのゲノムの塩基配列は公開されており、人工合成される恐れがある。
多くのウイルスは、宿主に感染すると、すぐに増殖して病気を起こす。そして、大部分は体外に追いやられ死に絶える。その一方で、体内に潜伏し続けるウイルスもいる。これらは、時折、体内で増殖してヘルペス、ガンなどの病気を起こす。
第2次世界大戦後、世界の都市化や人口増加により、ヒト、そして家畜やペットの環境が激変した。この変化に伴い、ウイルスも巧妙な生存戦略で新しい増殖の場を作り上げている。
・米国では人口増加による食糧の需要に対応するため、養豚産業が大規模化した。その結果、「豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)ウイルス」が世界各国に広がっている。
・急成長した中国では食肉需要が増加し、アヒルやニワトリの飼育数が急増した。このため「高病原性トリインフルエンザウイルス」が野生のカモからアヒル、ニワトリに感染、そしてヒトの新型インフルエンザに姿を変えつつある。 -
2018年に書かれた物だが、今のコロナ禍でウィルスとはどんな存在なのか、
というのを知りたくて読む。
ウィルスの意味論、という難しそうなタイトルで
内容も専門的ではあるものの、著者の文章センスなのか
多少の専門用語はあるものの専門家でなくても
わかりやすい言葉で書かれてあるためとても読みやすいし理解しやすい。
死に至る症状を引き起こす怖いイメージしかないが、
はるか数千万年前からウィルスは人類(と含めたあらゆる生命)と共にあり、
その進化やDNA情報にまでウィルスが関わってくるというのは
壮大で感動した。
中でも、母親が胎内で子供を育てられるのもウィルスが関わっている、
というのは本当に神秘的だなぁ、と思う。