あひる (角川文庫) [Kindle]

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  • KADOKAWA
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感想・レビュー・書評

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  • 「あひる」、「おばあちゃんの家」、「森の兄弟」の3つの短編を収録。「おばあちゃんの家」と「森の兄弟」は連作になっている。

    著者の作品、初めて読んだ。いずれも平明な読みやすい文章、"ど" がつくほどの田舎の設定、そして日常のちょっとした出来事の中に孕む怖さ、が印象的だった。

    「あひる」では、連れてこられたあひるが何故か毎回死んでしまうことや、誕生日をすっぽかす子供達、夜に突然家を訪ねてくる少年、暴力的な弟への隷従、等々。「おばあちゃんの家」では、足が悪く認知症の筈のおばあちゃんが何故かどんどん元気になっていくこと(仮病なのか?)。「森の兄弟」では、母子家庭の極貧の兄妹におばあちゃんが「おかねも、なあんにも、いらないの」、「ぼくちゃんに、みんなにあげる」言った意味、そして母親からの突然の豪華なプレゼント。この家は極貧じゃなかったのか?

  • 平成28年上半期 芥川賞候補。村田沙耶香さんの「コンビニ人間」と賞を争う。僕はこちらの方が好きかも。

    短編集。達観というか、ある種の感情が欠落しているというか、奇妙な語り口で物語が進んでいく。
    僕のような感性の鈍い人間には、読んでいる最中はあまりピンと来なくて、読後にじわじわと様々な感慨が込み上げてくる。いろいろ空想が広がっていく。

    あひる
    あひるを飼ってからの家の変化を淡々を描く。
    あひるを弟の赤ちゃんのメタファーとするホラー的な読み方をしたくなるが、書かれたまま読んでも十分怖い内容。
    自らの望ましい生活を維持するために淡々と生命をすげ替えていく夫婦…

    おばあちゃんの家
    森の兄妹
    重要な要素で繋がっている2つの短編。表裏の関係と言えるかもしれない。
    おばあちゃんがどんどん元気になっていったのは、モリオが訪ねるようになったからか。とすると、物語後のおばあちゃんはどうなっちゃうのかな...

  • 不気味。違和感。ゾクゾクする。ミステリとは違うゾクゾク。前に0時の森で若林さんがこの作品の話してて、気になってた作品。
    アヒルが病気になるたびに戻ってくるけど、特徴が違う。でもみんなのりたまだと信じていて不気味。そして、寂しさから書い始めたアヒルののりたま。のりたまのおかげで子供たちが集まり、子供たちもだんだんアヒル目当てではなく家に入り浸るようになり、、、人もものも変えがきく。そんなことを表してるのかな。怖

    「おばあちゃんの家」と「森の兄弟」は繋がっていて視点が変わるんだけど、視点が変わるとよりおばあちゃんの不気味さが際立つ。

    今村夏子さんの作品はどれも、え?なんで?どういうこと?って思う瞬間が多いんだけど、日常にありふれてる人間の狂気な部分が不気味に書いている。疑問が残るし誰か教えて〜ってなるけど、読者に考えさせる感じ、いろんな意見、見解があっていい。インスタとかでいろんな人の見解読むのがまた楽しい。

  • 「あひる」すごく好き。児童文学かな?と感じられる程わかりやすい言葉で綴られているのに、この物語の抱えているメッセージたるや大人にとって刺さるものがあるのでは…。簡単な言葉を使って読み手をそこまで連れて行ってくれるのは凄いなと、この本を開く度に思う。読み始めから不穏な空気が流れているのに続きが気になって仕方がなかった。夢中でこの語り手はどんな人物か、父や母はどんな顔だろうか、想像しながら頁を進めた。そして最大のオチ…勘のいい人はだんだんと気づいてしまうかもしれないけれど、オチの描き方が…そういうところで、今村さんの作品にはいつも切なさが織り込まれているように感じてしまう。だけど、一筋の光も入れてくれる。だから今村夏子さんの書く物語が好き。

  • 今村さんは初読です。何だこのお話は……??
    ありそうで、かなり不気味で、結末もなんか不思議。世界観が独特すぎる。
    国語の教科書に載っていそうというか、文学科の授業で取り上げられそうというか、センター試験で出て来そうというか、とにかく深く深く読みといて解読しなきゃ分からないような、そんな作品群。
    独特すぎて私にはまだ早かったかな……^^;

  • 薄い本で読みやすく、難解な言葉もないのですいすい読み進められました。
    児童文学といってもいいようなわかりやすい内容ではありますが、この中の「あひる」が、もし夏休みの読書感想文の指定図書になったとしたら、本当になんと書けばいいのか頭を悩ませるに違いありません。

    難解な言葉もなく
    内容もわかりやすく
    でも感想が思いつかない
    つまらない話ではなく、かと言って面白いかと言われるとそうでもない。
    でも何度でも読める気がする(薄いし)
    少なくとも何度でも読む気になる。
    なんとなく根底に怖さを感じる

    という、ある種魅力のある本でした。

  • 不穏な雰囲気があり、何か起こるのかと思いきや、何も起こらない。でも、何か起こったのかもしれない。ぼんやりとした怖さはあるものの、よく分からない。難しかった。

  • ◎あらすじ◎
    "わたし"の家にあひるがやってくる。のりたま と名付けられたあひるは近所の学生たちから人気ものになり、"わたし"の家にはいつからか、子供たちが集まるようになる。ある日、具合の悪くなったのりたまは父に連れられて病院へいく。しばらくののち帰ってきたのりたまは、"わたし"の目には以前と違って見えたが…。(表題作「あひる」) 他、書き下ろしの2作品も収録。

    ◎感想◎
    TVでずっと前に又吉直樹さんが「こちらあみ子」を絶賛しているのを見て以来ずっと気になっていた今村夏子さん。「こちらあみ子」は図書館でも人気のようだったので、こちらの本から読んでみた。

    3つの話どれも、読みながら胸がザワザワした。
    人間の、あまり表立って見せないような面に焦点が当てられている気がした。そして、その欲求を満たすために、ある対象物がぞんざいに扱われているのがなんとも言えない。

    表題作の「あひる」では、あひるを見に近所の子供たちが集まるようになる。"わたし"の父母は子供たちが集まってくれることが生き甲斐となり、そのためにあひるを利用するようになっていく。そこに潜む嘘も怖いけれど、あひるの存在が必要なくなった途端にあっさり他に乗り換えていく様子も怖い。

    「おばあちゃんの家」「森の兄妹」は解釈が難しい話だなと思いながら読んだ。おばあちゃんは家族に虐げられているようにも見えるが、実は一番力を持っているのはおばあちゃんであるようにも見える。少し人間離れしているようにも感じた。
    「森の兄妹」は途中までモリオとおばあちゃんの絆が描かれる雰囲気だったけれど、もちろんそう単純には行かず…。モリオの中でおばあちゃんの存在はあっさりと漫画にとって変わる。ちょっと悲しくなった。。

    淡々と書かれているので、なんとなく狂気を感じるけれど、きっと私たちの中にも彼らのような一面はあるような気がする。

    今村夏子さんの作品を他にも読んでみたら、また他の解釈も生まれそうだなと思った。

  • どこにでもありそうな日常風景の中に、毒を盛り込んだような作品。

  • 短編3本、合わせて1時間くらいで読めてしまった。さらさらと流れる小川のように読みやすく、でも、ところどころで顔を出す得体のしれない怖さがいい感じ。『星の子』も面白かったけど、もしかしたら今村さんらしさがより味わえるのはこちらなのかな。そしてもしかしたら『こちらあみ子』のほうがさらに凄いのかな。こうなったらあみ子も読むか。

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著者プロフィール

1980年広島県生まれ。2010年『あたらしい娘』で「太宰治賞」を受賞。『こちらあみ子』と改題し、同作と新作中短編「ピクニック」を収めた『こちらあみ子』で、11年に「三島由紀夫賞」受賞する。17年『あひる』で「河合隼雄物語賞」、『星の子』で「野間文芸新人賞」、19年『むらさきのスカートの女』で「芥川賞」を受賞する。

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