身体はトラウマを記録する――脳・心・体のつながりと回復のための手法 [Kindle]

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  • 一度購入し、内容がヘビーなのでちびちびと読んできた作品を読了。さまざまな事例や体験談が記載されていると同時に、効果的な回復方法などを網羅。
    大作の日本語訳に、感謝。


    ◆フレーズメモ 
    "責任の問題が浮上したとき、取り組むべき肝心の点は普通、自己避難の問題であり、トラウマは彼らのせいではなく、彼ら自身の欠点によるものでもなく、彼らのような目に遭って当然の人など誰もいないという事実を受け容れることに尽きる"

    "私たちは侮辱や不当な仕打ちを最も記憶しやすい。
    潜在的な脅威から身を守るために分泌されるアドレナリンは、それらの出来事を頭に刻みつけるのを助ける。具体的に何を言われたのかがあやふやになったとしても、その台詞を言った人に対する嫌悪感はたいてい残っている"

    "通常の記憶には適応性がある。私たちの記憶は柔軟で、状況にあうように改変できる。そして通常の記憶は本質的に社会的なもので、私たちが目的を持って語る物語。トラウマ記憶には社会的なところは何もない"

    "記憶は、語られ始めると(とくに繰り返し語られると)、変化する。話を語る行為自体が、その話を変えてしまうのだ。心は自らが知っていることに意味づけせずにはいられない。そして、私たちが自分の人生に与える意味は、何をどのように思い出すかを変えてしまう。"

    "通常の記憶は、起承転結のある話として想起される。トラウマ記憶は混乱している"

    "起こってしまったことを、なかったことにはできない。だが、対処できるものはある。""回復のための課題は、体と心ーすなわち自己ーの所有権を取り戻すことだ。"
    (1)落ち着いて意識を集中した状態になる方法をみつける
    (2)過去を思い出させる光景や思考、音、声、身体的に反応するときに、その落ち着きを保ち続けることを学ぶ。
    (3)今を思う存分生き、周囲の人々と十分にかかわる方法をみつける
    (4)どうにか生き延びてきた手段についての秘密も含めて、自分に隠し事をしないで済むようにする

    "自己を制御する能力を取り戻すためには、トラウマに立ち返る必要がある。自分に起こった出来事に遅かれ早かれ対峙しなければならないのだが、それは、自分が安全だと感じ、過去に立ち返ることによって再びトラウマを負わないようになったあとだ。最初にしなければならないのは、過去と結びついた感覚と情動に圧倒されていると感じる事態に対処する方法を見つけること”

    "理性脳は、情動や感覚や思考をなくすことはできない。なぜそう感じるのかを理解しても、どのように感じるのかは変わらない。だが、理解をすれば、思わず強烈な反応を見せてしまうのを防ぐことはできる。それでも私たちが疲弊すればするほど、理性脳は情動に主導権を奪われていく"

    "トラウマを負ってしばらくすると、過去への対処に多くの時間や労力を費やさなくなる。彼らは、その日その日をなんとか切り抜けるので精一杯なのだ。たとえ教育やビジネスや医学や芸術におおいに貢献していたり、立派に子供を育てたりしていても、通常の人と比べて日々の生活の課題にはるかに多くのエネルギーを費やす"

    "現代の神経科学から得られる明確な教訓の一つは、自己感覚は体との重要なつながりが拠り所となっているということ。自分を本当に知るには、身体的感覚を感じて解釈できなければならない。" "人は自分の体の欲求を自覚してなければ、体の面倒をみることはできない。不安と空腹を取り違えたら、食べすぎてしまうかもしれない。満腹のときに、そうとわからなければ、食べ続けることになる。だからこそ、感覚を自覚する力を養うことが、トラウマからの回復にとって重要"



    ◆事例や研究メモ
    ・グラント研究。記憶を書き直す。
    ・レイルウェイスパイン。
    ・認知行動療法(CBT) 談話療法
    ・シェルショック(砲弾ショック)
    ・NYDN(Not yet diagnosed, nervous)未診断、神経性
    ・interoception内受容 自分の内部で何が起こっているかに気づいて、自分が感じているものを感じる
    ・EMDR 眼球運動による脱感作と再処理法
    ・失感情症


    ◆観たい、読みたい関連作
    小説・映画『西部戦線異状なし』
    映像『Let there be light(光あれ)』John Huston
    https://www.youtube.com/watch?v=KKSAGjceSKs
    映画『ダンケルク』
    小説『ヨーガと真の自己の探求』 Yoga and the Quest for the True Self  スティーブン・コープ
    詩集 RUMI イスラム詩人
    映画『ハートロッカー』

  •  

  • トラウマとはなにか。原因は。治療法は。いろいろな疑問が氷塊する。2016年という古い本。最新の脳科学の知見は入っていない様子。内容としてはアップデートがいるかもしれない。
    本書はトラウマおよびその周辺の症状について詳しく述べている。ゆえに厚い。情報量も多い。知識があればそれほどの内容ではない。むしろわからないひとのために丁寧に説明するために長くなってしまった。ということだろう。この分野を知りたいと思っている初学者であれば、何度も繰り返し読むことをオススメする。そして知識、言葉を実際の人とあうなどして経験も深める。遠回りのようだが最も効率敵なやり方だと思う。現に私もかなりの時間を費やしている。
    DSMというものがある。アメリカ精神医学会が作成する、精神疾患の判断基準・診断分類のことだ。筆者はこれに懐疑的である。理由は明白。当人が当事者であり、その直感から外れる部分が多いのだ。
    権威が作ったから正しいとは限らない。DSMも治療というよりは医療制度とそれを欲する企業の経営者のためのものである。このような複雑な背景も理解を妨げる要因なのだろう。

  • あとで書く

  • 質実共に重厚な内容で読むのにとても時間がかかりました。

    トラウマと言う概念の創生から研究の始まり進捗が記してあります。有効な治療法と社会に対する訴えも記してあり、万人が読んでためになる本でした。

    大事なのは身体感覚、愛着。

    私はトラウマと言う認識は無いが、トラウマサバイバーの様な症状が有ると感じています。


    自分の子供を愛そうと深く思いました。

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著者プロフィール

【著者】ベッセル・ヴァン・デア・コーク (Bessel van der Kolk,M.D.)
米国マサチューセッツ州ブルックラインのトラウマセンターの創立者・メディカルディレクター。ボストン大学医学部精神科教授。国立複雑性トラウマトリートメントネットワークのディレクター。ボストン在住。世界各地で教鞭を執っている。邦訳された著書に、『サイコロジカル・トラウマ』(金剛出版)、『トラウマティック・ストレス』(共著、誠信書房)がある。

「2016年 『身体はトラウマを記録する--脳・心・体のつながりと回復のための手法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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