両利きの経営―「二兎を追う」戦略が未来を切り拓く [Kindle]

制作 : 入山 章栄  冨山 和彦  渡部 典子 
  • 東洋経済新報社
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感想・レビュー・書評

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  • 少し前に流行った経営書。いわゆるクリステンセンのイノベーションのジレンマの系譜にあたる本書は、両利きの経営という表現で、そのジレンマを打破すべく、実際にどうするかを経営事例を紐解きながら見ていくものである。

    両利きはすなわち、「既存事業の漸進的改善による進化」と「新領域における探索的な実験、学習」というのがざっくりとしたまとめであるが、これを両立するのはいかに難しいか、それを経営組織構造や実務実行面などの面から解説している。結論から言えば、経営者の腕次第という元も子もない結論なのだが、過去の事例や歴史などからの結論なので、まあそうなのかなというお気持ち。

    まあ、本当に言うは易し、行うは難しの権化のような内容なので、こういう方向性を頭に持ちながら俯瞰して現況などを見つめて何に注力していくかなどを考えていきたいものだ。

    ◆目次
    解説 なぜ「両利きの経営」が何よりも重要か(入山章栄)

    第1部 基礎編:破壊にさらされる中でリードする
     第1章 イノベーションという難題
     第2章 探索と深化
     第3章 イノベーションストリームとのバランスを実現させる
    第2部 両利きの実践:イノベーションのジレンマを解決する
     第4章 6つのイノベーションストーリー
     第5章 「正しい」対「ほぼ正しい」
    第3部 飛躍する:両利きの経営を徹底させる
     第6章 両利きの要件とは?
     第7章 要としてのリーダー(および幹部チーム)
     第8章 変革と戦略的刷新をリードする

    解説 イノベーションの時代の経営に関する卓越した指南書(冨山和彦)

  • 中核事業と新規事業との両輪で回していくために必要な組織や手法。
    過去に新規の探索を行わず、失敗した例をわかりやすく説明している。
    中小企業も含めて参考になる一冊。

  • 成熟事業の成功要因は漸進型の改善、顧客への細心の注意、厳密な実行だが、新興事業の成功要因はスピード、柔軟性、ミスへの耐性だ。その両方ができる組織能力を「両利きの経営」と私たちは呼んでいる。
    (引用)両利きの経営 「二兎を追う」戦略が未来を切り拓く、著者:チャールズ・A・オライリー/マイケル・L・タッシュマン、監訳・解説者:入山章栄、解説者:冨山和彦、訳者:渡部典子、発行所:東洋経済新報社、2019年、29
     
    20年ほど前、私は、フィルムで写真を撮るのが好きだった。フィルムには、ネガとポジがあり、私は、お気に入りのコンタックス一眼レフに富士フィルムのベルビアというポジフィルムを突っ込み、プロカメラマン気分でよく風景写真を撮影した。
    しかし、時代の変遷とともに、写真の世界では、フィルムからデジタルへと大きく移行し、フィルム写真は忘れられつつある。この写真が本業であったコダックと富士フィルムは、急速に襲ってきたデジタル化という大きな波に対し、明暗を分けることとなった。なぜ、本業である写真事業に固執したコダックは破綻し、富士フィルムは、今まで培った技術資源や経営資源を武器に、新しい製品・サービスに応用する新たなビジョンを打ち出せることができたのだろうか。その解は、この「両利きの経営」に書かれている。

    両利きの経営とは、知の「探索」と「深化」によって成り立つ。知の深化とは、自身・自社の持つ一定分野の知を継続して深堀りし、磨き込んでいく行為だ。先ほどのコダックにもあったとおり、一定の成果を収め、技術や経営資源が充実してくると、企業は、さらなる知の深化を求めるようになる。一方、知の探索とは、自身・自社の既存の認知の範囲を超えて、遠くに認知を広げていこうとする行為である。これは、富士フィルムのように、時代の流れを察知し、新たなイノベーションを創出し、企業を発展的に存続させることを意味する。現在、富士フィルムでは、医薬品、化粧品、半導体材料、再生医療等の分野まで展開している。写真フィルム市場の縮小という逆風の中、従来の科学技術や人的資源を生かし、富士フィルムは、古森重隆氏の采配下で見事に息を吹き返した。本書では、チャールズ・ダーウィンの有名な言葉、「生き残るのは、最も強い種でも、最も賢い種でもない。最も敏感に変化に対応する種である」を掲載している。まさに、富士フィルムは、イノベーションを創出し、変化することで、新たな活路を開いた。

    なぜ、コダックと富士フィルムは、明暗を分けたのだろう。成功している企業ほど知の深化に偏って、つまるところイノベーションが起こらなくなるとする。これを本書では、「サクセストラップ」としている。では、このサクセストラップから抜け出すためには、どのようにしたら良いのだろうか。本書の後半では、富士フィルムの古森氏のようなリーダーシップにおける5つの原則について触れている。
    そのリーダーシップの5原則の中で、私は第4原則「『一貫して矛盾する』リーダーシップ行動を実践する」が気に入った。詳細は、本書に譲るが、両利きの経営のリーダーは、あるユニットでは利益と規律を求め、別のユニットではベンチャー的な要素を求める。言い方を変えれば、「安定」と「挑戦」の二面性を有していることがリーダーには求められるということだと理解した。
    この第4原則に触れたとき、私は、P.F. ドラッカーの次の言葉を思い出す。「集中するための第一の原則は、もはや生産的でなくなった過去のものを捨てることである」1)
    ドラッカーの書籍を読むたび、「廃棄」という言葉を多く目にする。事業は立ち上がった瞬間に陳腐化する。そして、企業は事業の陳腐化に気づかず、その事業にしがみついたり過去の成功にとらわれたりして、そこから抜け出せなってしまう。そのため、各企業は、現在行っている事業に「価値はあるのか」を問い、常に「廃棄」を念頭において置かなければならない。これは、何も企業に限ったものではない。公的機関にも言えることだろう。そのうえで、次の「挑戦」に集中し、イノベーションを創出する。まさに、両利きの経営は、ドラッカーの考えにも通づるものだと思った。

    本書には、触れていないが、現在、あのトヨタも変わろうとしている。「自動車メーカーからモビリティカンパニーへ」ということで、従来のモノづくり企業からの脱却を試みる。一例として、静岡県裾野市で展開しようとするウーブンシティの取り組みがあげられる。このウーブンシティでは、ロボットやAI、自動運転、MaaSなど、先端技術を駆使し、人々のリアルな生活環境の中に導入、検証できる実験都市を立ち上げることを目的とする。まさに、これは、「両利きの経営」ではないかと感じた。トヨタの豊田章男社長は、近年、「100年に一度の大変革期」ということを口にすると言う。これは、アマゾンやグーグル、アップルといったデータ産業が自動車メーカーを飲み込むかもしれないという危機感があるからだと言われている。車は誕生して日が浅いため、100年に一度というのは、自動車が誕生して初めての大きな危機が到来していることを意味する。

    「両利きの経営」は、危機に立ち向かう経営手法である。「二兎を追うものは一兎も得ず」ということわざがある。しかし、「二兎追わなければ」未来を切り拓くことはできない。本書を読んで、二兎を追いつづけるリーダー、そしてイノベーションを創出しつづける組織が求められていることを理解した。

    1)プロフェッショナルの条件 ーいかに成果をあげ、成長するかー、著者:P.F.ドラッカー、編訳者:上田惇生、発行所:ダイヤモンド社、2000年、139

  • 著者はイノベーション研究の第一人者のアメリカの教授。
    ここでいう両利きとは探索と深化。言い換えれば、既存のビジネスにとらわれない領域への進出とこれまで培ってきたビジネスの領域を深めること。この両車輪でビジネスを手掛けるプレーヤーが強いということを、具体的な企業を挙げながら解説する。
    成功事例に共通する4つの構成要素は
    ①探索と深化が必要であることを正当化する明確な戦略的意図
    ②新事業の育成と資金供給に経営陣が関与し、その芽を摘もうとする人から守る
    ③ベンチャーの独自性を保つよう、探索型事業を深化型事業から十分な距離をとる。その一方で探索ユニットの打ち切り/再編入を決める判断基準を持つ
    ④深化型、探索型双方にまたがって共通のアイデンティティをともたらすビジョン、価値観、文化
    特に危機的状況な時ほど、両利きの経営が功を奏すという。だから、今この書籍がよく売れているのかも。

  • 今まで自社が取り組んできた事。

    精緻に実行していきたい。

  • 良本!

  • 素晴らしかった。感覚としては少し感じているイノベーションの必要性も実践するのはすごく難しい。「イノベーターのジレンマ」には知らずにどんどん陥っている組織が多い。それに対して色々な例を見ながらフレームワークを与えてくれるのはとてもありがたい。自分の会社での組織・文化作りから色々手をつけられる事が感じられた。

  • 楽しみにしてた本をじっくり読んだ。
    「両利きの経営」とは、「不確実性の高い探索を行いながらも、深化によって安定した収益を確保しつつ、そのバランスを取って二兎を追いながら両者を高いレベルで行う(p7)」こと。
    本書は「両利きの経営」の要件や具体的な組織行動を膨大な企業事例から明らかにしている(⇒2400円+税は安い!)
    解説で冨山和彦さんは「これをチャンスにできるか否かは、経営にかかわる皆さんの腕次第」と結んでいる(p395)。大学で、それも地方国立大学で「両利きの経営」は可能なんだろうか!?

  • 解説―なぜ「両利きの経営」が何よりも重要か 入山章栄


    はじめに
    第1部 基礎編
      第1章  イノベーションという難題
      第2章  探索と深化
      第3章  イノベーションストリームとのバランスを実現させる
    第2部 両利きの実践
      第4章  六つのイノベーションストーリー
      第5章  「正しい」対「ほぼ正しい」
    第3部 飛躍する
      第6章  両利きの要件とは
      第7章  要としてのリーダー
      第8章  変革と戦略的刷新をリードする


    解説 イノベーションの時代の経営に関する卓越した指南書 冨山知彦
     

  • 最終的に鍵を握るのはリーダーシップ?

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著者プロフィール

スタンフォード大学経営大学院教授(The Frank E. Buck Professor of Management)。チェンジ・ロジックの共同創業者。主な著書に『両利きの経営』(東洋経済新報社)などがある。論文も数多く執筆し、『カリフォルニア・マネジメント・レビュー』誌の年間最優秀論文に三度選ばれた。

「2023年 『コーポレート・エクスプローラー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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