東京貧困女子。―彼女たちはなぜ躓いたのか [Kindle]

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  • 東洋経済新報社
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感想・レビュー・書評

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  • 単身女性とシングルマザーの貧困問題を考察するために、個人に取材した内容がまとまっている本です。
    見て見ぬふりをしていた貧困の問題を真っ正面から見た気がします。
    読んでいて辛く、1章の時点で目を背けたい気持ちになりましたが、最後まで読んで現実を知ることが今自分に出来ることだと思い、目を背けず読了。

    ・大学生が奨学金を借りるも、生活費・学費が足りず、風俗に流れたり、
    ・奨学金も給付型出ないので、卒業しても負債を背負って社会に出ることになったり、
    ・分からない間に奨学金を目一杯借りて、その奨学金は親が生活費に使っていたり、
    ・貧困のシングルマザーの子どもは塾に行けず、学力の差が広がり、不登校になったり、高校に進学しなかったりして貧困の連鎖になったり、
    ・地方自治体・公共施設の非常勤職員、介護職の低賃金の問題があったり、
    ・男性からの暴力で離婚したり、介護離職をしたりして、非常勤の職にしか就けず、貧困に陥ったり
    というような事例が次々と紹介されています。

    個別の事例を知ることで、貧困の原因が浮かび上がってきます。
    ・大学の奨学金の制度改正があったのは、2004年。
    年利は3%、奨学金とは名ばかりで利子で利益を上げる金融ビジネスになっている。
    給付型の奨学金の制度が必要。
    ・官製ワーキングプアとは、地方自治体で非常勤職員という形で雇用されている労働者。
    介護職や保育士なども賃金のおおよその制度設計を国が決めているのでこの範疇。
    小泉内閣時代の構造改革で地方自治体の交付金が削減され、地方自治体は人件費を抑えるために、今まで公務員がやっていた業務を非常勤職員に下ろしたために生まれた。
    官製ワーキングプアは、生活保護費と同じくらいの賃金しかもらえないように制度設計されている。
    それなのに、介護や保育職は夢や希望があると洗脳され、感謝して仕事をしている矛盾。
    ・離婚しても、父親の養育費は払われないことが多い。
    女性も男性並みに稼げる雇用を整備するか、父親の養育費の責任を厳格化するか、離婚して生活は別でも子どもは一緒に育てていくという状態にすべき。

    自分も一歩間違えたら貧困の状態になるなと身にしみました。
    この本に出てくる女性たちは特別でもなく、どちらかというと高学歴で優秀だったり、普通に結婚して子どもを産み専業主婦だったりするからです。
    そういった人たちに「自己責任」という一言で片付けるのは、社会問題から目を背けていることだなと感じました。

    自分自身としては、貧困の原因からできるだけ逃れるために、色々な制度を知っておいたり、時代の流れを感じるためにこういった本を読んだり、家族や周りの人と日頃からいい関係を築いておいたり、ということをしていきたいと思いました。

  • 私も年収低いし奨学金貧乏だしな〜、と軽い気持ちで読み始めたけど、現代社会、思ったより真っ黒で救いない……。派遣で先が見えない女性も、突然転がり落ちるように貧困に陥る女性もいる。無知により闇金に追われてしまうような女性も。そしてその子供にも起きる貧困の連鎖……。
    そして介護職の真っ黒な現状ね。そりゃぁ離職率高くなるわ。
    知らないは罪。「風俗やるくらいなら大学やめろ」とか心無いコメントも多いらしいけど、それは現状を知らないからだ。
    まずは知ること。福祉や行政の仕組みを学ぶこと。明日は我が身とまでは言いたくないけど、心の準備だけはしておかないとな……。

  • 大変丁寧な取材に基づいたルポだった。世の中は進歩してるのに、女性をとりまく環境は悪化の一途を辿ってるとはどういうことか。なぜ男女の収入格差は埋まらないのか、なぜ離婚後男性からの養育費を義務化しないのか。何もしてきてない(むしろ規制緩和の名の下に状況を改悪した)国と、厳しい現実について何も知らなかった自分に激しい怒りを覚えた。

  • 【心がある人として読んでも良いし、心無い人として無視しても良いです】

    『怒り』

    貧困
    精神疾患
    最低賃金
    家庭崩壊
    生活保護
    売春
    子育て
    養育費
    家賃
    スラム街
    ホームレス
    派遣
    介護業界

    No Futureを受けとめよう。

  • たまにこう言ったルポを読む。自分とかけ離れてしまっている現状を知るため。制度なんだろう、救う仕組みがないし、自分の身近な人が、ここに陥ってしまう可能性だってある。

    知っただけ、知っただけだけど、いろいろ考えてしまう。

  • 読むことを無理に勧めない。
    正直読んでいるとくらーい気持ちになるかもしれない。

    この本の題材となった東洋経済オンラインの連載は時々見ていた。
    単行本になったことも知っていたけど、正直買って読もうという気はなかったのでスルーしていたら図書館で見つけたので手に取った。

    思うところはいろいろある。
    総じていえば、人間の人生ってほんの些細なところで歯車が狂うよなぁと改めて思った。

    根本的な解決は難しい。
    だけど、自分がそうならないようにすることはできるかなとも思う。
    たとえば
    「人生や生活において、人間関係が極端に少ない人は判断基準がズレる。自分のことを著しく高く相手に伝えがちだ。」
    ならば、適度な人間関係を保つことは大事だよなとか。

    読んでよかったというようなすっきり感はない。
    それでも、手に取ったことは無駄ではないと思う。

  • 私は、新卒で保健師として働いて、すぐにこの問題を目の当たりにしました。

    書かれている内容は紛れもない真実で、しかも、東京だけではなく、地方にもたくさんあります。

    当事者の方へ生活保護や障害年金の制度を紹介して、利用できるように支援をしても、問題の根源には何もできず、ずっと無力感を抱えていました。

    そのことを職場の人や親など、目上の人に話しても、「どうしようもない」という諦観や、にわかに信じがたいということも言われ、結局は当事者の責任…という論調になっていくことも、何度も経験しました。

    今は14年間勤めた保健師職から離れていますが、女の子をもつ母として、どうしたら、このような方々のような辛い思いを、未来の子ども達がしなくて済むかを考えて、少しずつ行動していきたいと思います。

    そのきっかけをくれた一冊でした。
    出会えてよかったです。

  • Prime readingで拝読。

    たいへん、重たい内容だった。みんなに読んでほしい。

    目を背けたくなる現実、とはまさにこのことで、自分の普段の生活について再考させられた。

    著者が貧困女子に話を聴く際の信条である、
    「どんな話が返ってきても否定はしない。」
    は、しようと思ってもできることじゃない。

    普通なら、何かしらアドバイスをしたり、安易に責めたりする。

    しかし、本人はもうそんなことはとっくの前から何度も自問自答して分かっていることで、ウンザリしているだろう。特に、今回取り上げられている女性たちは、皆壮絶な人生を歩んでいるから余計に。

    「お金」「家族」「知識・教育」
    この三つは強固に結びついていて、どれかが欠ければたちどころに崩れてしまうのかもしれない。
    つまり、三つ全部持っているか、一つも持っていないか、どちらかに二極化するのではないだろうか。

    だとすれば、この悪循環は本当に恐ろしい。

    自己責任論は、貧困問題には通用しないし、適応してはならない。誰かが何かをすれば解決なんてスケールの小さい話ではない。

    富の再分配とセーフティネットの整備が福祉の役目であるはずだ。しかし、どうもどちらの役割も果たせていないように見えてしまう。

    とことん救いもなく、画期的な解決策もない。それでも、この本と出会えて良かった。

    普通に生活していては、絶対に知り得なかった現実を、知ることができたから。

  • 最初から最後まで読むのがしんどい話。
    最初の風俗で足りない生活費を稼がなければならない
    女子大生もしんどいが、読めば読むほど
    明日には死ぬかもしれない程度が重くなっていく。

    もちろん、貧困…明日の命の行方もわからないような
    貧困は昔からあったと思う。
    いつ転落するかわからない人生で、毎日を紙一重で
    生きているのはたぶん男も女も一緒だと思う。
    (今まで見てきたホームレスの人って男の人が多いし)

    最後の寿町の話もそうだが、
    何か重大なことが起こった場合
    女性は真面目に受け止めてしまい
    男性は割と日々生きられれば…と思えるんだろうか。
    そう思うと、姉の介護を引き受けてしまった女性じゃないけど
    頑張りすぎない方が楽に生きられるのかもしれない。


    ただ、それとは別に思うのは
    個人としてできることは
    人生がどうなっても良いように
    絶対仕事はやめない方が良いし
    本やニュースなどをコンスタントに読んで
    世の中のことを勉強して危機管理を怠らない方が良い。

    国は…どうなんだろう?
    手厚くすれば結局その手の「頭の良い人」が
    不正受給する額が増えるだけで
    日々の暮らしで手一杯で調べることができない人は
    やっぱり取り残されることになるんじゃないだろうか。

    シングルマザー版寿町を作るとか?
    (目の届かないところで親同士だけでなく
    子供同士の(性の問題を含めた)トラブルが起こる可能性あり)

    なんにしろ、どこも閉塞感ばかりで
    他人を労るどころか放っておく優しさもない人ばかりで
    絶望する…けれど、
    これまた昔のことを思うと、村八分とか他人の粗探しとか
    結局やっぱり何も変わってないのかもしれないし
    人間というのは
    どうも変わらないのかもしれないなぁ、と思う。


    介護業界について、著者の話は興味深い。
    精神疾患を患った人たちの話も。
    読みながら、少し違うかもしれないけれど
    先日起こったALS患者の嘱託殺人を思い出した。
    「それでも生きているという意味を見つけるために
    生きている」という人もいるかもしれないが
    生きる意味を探す余裕もないほど
    真綿で首を絞められるような生活をしている場合
    どうしたらいいんだろう。


    何より、この本に出てきた人たちが
    その後希望の持てる日々を送れるようになることを
    祈りたい。

  • Kindle Unlimitedのリコメンドに出て来た
    作品を本当になんとなく。東洋経済オンラインで1億2千万
    PVを稼いだ人気連載に加筆・修正を施し、一冊にまとめた
    ドキュメンタリー。そのボリュームは相当なモノ。サブタ
    イトルは『彼女たちはなぜ躓いたのか』。

    いわゆる『貧困層』に落ちてしまった女性たちのケースス
    タディ集。昔の常識で考えると「どうしてこんな人が?」
    と疑問に思ってしまうくらい、高学歴でキャリアのある人
    たちが墜ちて行く、という事実に呆然としてしまった。

    もちろんドキュメンタリーなので、どのケースにもラスト
    シーンが無い。何が辛いかと言うと、ハッピーエンドで終
    われそうなトピックが一切存在しないことで、一章を読む
    毎に思わず考え込んでしまう。そういう意味で、読むのが
    本当に辛い作品である。

    タイトルは『東京貧困「女子」。』だが、果たしてコレに
    当てはまるのは女性だけなのだろうか? 正直、どのケース
    も自分に当てはめる事が出来てしまう上に、思い当たる状
    況も経験している。故に、どうしても他人事と思えなくな
    っている自分が居る。

    ・・・守るべきモノが少なくて本当に良かった、と思う。
    僕にはまだ奥の手が、ある。

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著者プロフィール

1972年生まれ。ノンフィクションライター。AV女優や風俗、介護などの現場をフィールドワークとして取材・執筆を続ける。貧困化する日本の現実を可視化するために、さまざまな過酷な現場の話にひたすら耳を傾け続けている。『東京貧困女子。』(東洋経済新報社)はニュース本屋大賞ノンフィクション本大賞ノミネートされた。著書に『新型コロナと貧困女子』(宝島新書)、『日本の貧困女子』(SB新書)、『職業としてのAV女優』『ルポ中年童貞』(幻冬舎新書)など多数がある。また『名前のない女たち』シリーズは劇場映画化もされている。

「2020年 『日本が壊れる前に』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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