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本 ・電子書籍 (327ページ)
感想・レビュー・書評
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(実際には紙の本で読んだがブクログではなぜか見当たらないため、電子版で登録しておく。)
シベリア鉄道に興味があり、図書館で手に取った本。
時代順にそのハードとソフトの変遷を描いていく。
著名な文化人や政治家たちの移動の記録も興味深く読んだ。
随分昔から、政治家や事務官やその家族など、けっこうな数の日本人が、モスクワやベルリン、パリ、ロンドンなどのヨーロッパ都市に住んでいたんだな、というのが率直な驚きだった。
日本の《革命家》が、ソビエト共産党大会みたいなイベントに呼ばれていくのも時代の空気を感じた。
旅行記も面白かった。
とくに、山田耕筰、林芙美子あたりのバイタリティはやはり凄い。三等車はみんな字が読めないのだ。その代わり、演奏は喝采を浴びるし、地元の人との繋がりは心強い。うん、なるほど。楽しむもの勝ちなのは間違いない。
あまり言葉の通じない、かつ時間的に長い長い列車の旅にひたすら荒涼とした車窓風景に接したときのひとの行動はみんな似たようなもので、俳人政治家の旅も味わい深いし、俳人ではないのに俳句を突然詠むようになったひとのエピソードにも感心した。
海外旅行で緊張していたのは日本人が少数派だから。団体旅行がまかり通る時代には、日本語でも渡れるようになり、日本食も手に入るからか、だんだん旅行者が横柄になるさまも面白い。いつでも数の論理こそ(表面では)強いのだ。満州でのあり方にも同じく。
対照的に、与謝野晶子の旅にはこちらもハラハラさせられた。ラストで在仏中の鉄幹が迎えに来たのは、《モスクワでもベルリンでもなく、終着パリ駅のプラットフォームだった》、で思わず声が出そうだった。あのやろー。
時代は下って、独ソ戦が始まり、あわてて関係者が引き揚げる列車も緊張が強い。飛行機も船もあるなか、鉄道の弱み強みもまた、時代に翻弄される。
第二次大戦後のシベリア抑留者たちの電車移動エピソードも重苦しく、印象深い。どこに輸送されるかを、捕虜みんなで息を詰めて列車の音や振動で分岐点でどこに曲がるかを測るエピソードには恐れ入った。
ラストに、著者もシベリア鉄道の旅を体験する。
やはり日本人には入浴は欠かせないよなあと思った。詳細をみるコメント0件をすべて表示
著者プロフィール
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