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感想・レビュー・書評
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18世紀のイギリスはまだ医学が発展しておらずガレノスの四体液説という、血は全身を巡っておらず悪い血が臓器に溜まる事でその臓器が病気になると考えられていた。
なので医者は悪い血が流れている臓器をメスで切りる瀉血治療を施していた。
でも体の血を半分抜く瀉血をすると死ぬ、つまり医者にかかると死ぬというのが民間人でも経験で気づき始めた時代だった。
なので、インチキ薬売りによる薬産業が発展した。
ドニゼッティの愛の妙薬の舞台、18世紀末もまさに薬産業の時代。ドゥルカマーラの様な口の達者な人が、町を渡り歩き、音楽などで人々を集めて、あのドゥルカマーラのアリアの様な”この薬はこんな病気に効く、これもそれもあれも何でもござれ”と貧しい人々を餌食にして売り歩いた。
勿論まだ薬学も発展していないので薬の効果もなく、毒薬を処方して死んでしまう客が大勢出た。だから、さっさと町を去るのが定石だった。
愛の妙薬の”Addio”は、Arrivederciと違い、もう二度と会わないであろう人に使う別れの言葉だが、町民としては”こんなに良い薬をこんなに小さな町にまで来て売ってくれてありがとう。”の意味だが、ドゥルカマーラとして、”薬を飲んだら本当に天に召されるかもしれないからもう二度と会えないかもね(←この意味もあるとは音大では習わなかった初知識)”尚且つ、”次に来た時にはもうインチキ薬売りだと知れてるからもう二度と来ないよ”というトリプルミーニングのaddioになっている。(今までダブルミーニングだと思っていた)
余談。前に話したかもしれないけれど、当時の外科医療は、床屋さんが兼任でやっていた。血を扱うのは下賤な仕事なので、髭剃りなどで刃物を扱い慣れている床屋さんが瀉血をしていた。まさにセビリアの理髪師もそう。今の床屋さんのクルクル回るポールがあの3色なのは、赤は”血”、青は”静脈”、白は”包帯”と言う瀉血の名残り。
時代が進むと床屋が権力を持つ様になり、ジョン・ハンターという解剖医の影響で医学が飛躍的に進歩し、床屋は床屋、外科医は外科医へと分岐していく。
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はじめは面白く読めたけど、そのうち笑っていられなくなった・・・
この治療法、現代でもあるじゃない?信じてたよ?
自分は正しい治療を選んでいると思ってたけどこの人たちと変わらないじゃん・・・痛い。
ただ、病気で苦しんでるところ更に火傷させられたり血を抜かれない時代に生まれてよかった、本当に。 -
凄く面白かったです。
前半が薬としてヒ素や水銀の話や
麻酔ができるまでの対象法など
大真面目に治療していた歴史の紹介で
後半はどちらかというとインチキ療法の紹介が多め。
あまりにもあまりな治療法に思わず笑った後に
現在ももしかしたらそうなのじゃないかと
背筋が寒くなる作品。