ミライの授業 [Kindle]

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  • 講談社
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感想・レビュー・書評

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  • 旅先で知った起業支援家 瀧本哲史さんの訃報。
    著書に感銘を受けたし、自分と同い年代の人と認識があったのでショックだった。働き盛り、まだこれからなのに。

    瀧本さんを偲んで、急遽電子書籍を購入。

    この本は、瀧本さんが全国の中学校を訪れて開講した特別講義「未来をつくる5つの法則」のエッセンスをまとめたもの。これから生きる14歳に向けたメッセージが詰まっている。

    人は未来をつくるために生きている。
    「思い込み」を排除して、知を蓄え、力をつけて「新しい世界をつくろう」と呼びかける。
    そして、未来をつくる5つの法則を変革者20人の人生から学んでいく。

    法則1 世界を変える旅は 「違和感 」からはじまる
    法則2 冒険には 「地図 」が必要だ
    法則3 一行の 「ル ール 」が世界を変える
    法則4 すべての冒険には 「影の主役 」がいる
    法則5 ミライは 「逆風 」の向こうにある

    「課題解決」できるかではなく「課題発見」できるかなんだよなぁ…いい歳こいて心に響いてる自分がしょうもない、とも思うが、また明日から少しでも未来をつくっていきたい、と決意を新たにした。

    瀧本さん、ありがとう。
    そして、おつかれさまでした。

  • 著者である瀧本氏の魂の言葉だ。
    どの著作にも共通しているのは「若者への叱咤激励」だ。
    未来は若者が創るのだ。
    だからこそ大人たちが決めた常識を疑え。
    壮大な目標を掲げるんだ。
    それは他者が目指さないものの方がいい。
    敢えて空白地帯を目指せ。それが冒険だ。
    冒険には仲間が必要だ。あなたは冒険についていくだけでいいかもしれない。
    その中であなたにしかできない事があるはずだ。
    必ずしも先頭に立ってリーダーとして突き進まなくてもいい。
    自分の役割で、自分の特長を活かせばいい。
    ただし単に流されるだけでは駄目だ。
    きちんと真実を見る事。
    もし今小さな違和感があるならば、その感覚はすごく大事だ。
    その感覚に蓋をして生きていくことが大人になること、なんて迷信だ。
    それは「くだらない大人になること」を示しているだけなんだ。
    世界を変えるために、きちんとした大人になれ。
    壮大な目的地に向かって、仲間とともに邁進しろ。
    くだらない大人になった今だからこそよく分かる。
    未来を創るのは、本当に若者なのだ。
    我々大人はそんな若者たちを全力でサポートしろってことだ。
    自分たちの常識を押し付けるんじゃない。
    偉ぶるんじゃない。本当に常に心に留めておきたい。
    本書では数々の偉人が出てくるが、個人的に好きなのはナイチンゲールの話。
    この本を読むまで、ただの「白衣の天使」というイメージしかなかった。
    しかし彼女の本当の姿は、「信念の人」であり、「真実を見た人」だ。
    「戦場での死者はほぼ感染症」ってことを、今まで誰も説明できなかったのか。
    いかに人は、常識の前では盲目になってしまうか、というエピソードだ。
    これらの常識は、ほとんど根拠がなかったりする。
    あくまでも誰かの噂話であったり、印象であったりということだ。
    その「違う」という根拠を示したのがナイチンゲールなのだ。
    単に大人たちを批判するだけでなく、明確なファクトで示した。
    APUの出口学長も言っている。
    「縦横など様々な角度で考察して、ファクトで示せ」
    この21世紀の会社内でも、これだけ数字に溢れているのに、経営判断が印象で行われるのはどういうことか。
    大人たちの慢心があるとしか思えない。
    「自分たちが今まで行ってきたやり方で正しいはずだ」
    前例主義を踏襲し、深く考えないままに判断をしてしまう。
    これこそ最も恐ろしいことだ。
    リーダーに限らず、大人なら誰でもこの点は注意すべきだ。
    前提を疑え。ファクトを見ろ。
    そして真実を見極めろ。
    大人になるとこれらが本当に出来なくなっていく。
    だからこそ意識して。
    心のそこから常に意識していることが重要なのだ。
    これが瀧本氏の魂の叫びなのだ。
    瀧本氏は病によって47歳の短い生涯を終えた。
    しかしこの魂は語り継がれる。
    私も一つの信念を貫き通したい。
    そんな人生を送りたい。
    くだらない大人と言われないように。
    そんな風に思っている。
    (2021/4/11)

  • この方の本が話題になっていたので、図書館で借りた。

    子ども向けの本であるが、中年以降、自分の夢を叶えたり、
    偉業を達成した人も掲載されていて、元気をもらう。
    人生をどうしたいか、そんなことを考えている人には向いている。

    ただ環境も整わず、気づきも得られず、ただ漫然と日々をすごしていたティーンの頃に私が読んだとて、どれほど響いたであろうか。
    逆に今、もっとも思考も落ち着き、環境も整っているで、響いている。

    この本に紹介された人の幾人かは、ままならない人生に直面して、そこに疑問を感じたり、脱出したくて、変転している。

    人生は、今もし、不本意なものであっても、嘆いたりしなくてもいいともいえる。
    時期がきたら、おのずと進みだすこともある。

    それまで辛抱強く生きていくことが大事なのかもしれない。
    この辛抱が、どこまで続くのか、どれだけのものなのか、そこも難しい所なのだが。

    そして、この本に紹介されている歴史に名を遺すような人物に必ずしもなるとか
    成功してお金持ちになるとかが全員のゴールにしなくてもいいと思っている。
    偉人の「陰の主役」ですらなくても。

    自分が「良い」「楽しい」と思える毎日を過ごせたらそれでいいと思う。
    世の中の一人一人が、そう感じて暮らせることができたら、一番いいのだけど。

  • 14歳向けに書かれていますが、大人が読んでも面白いし、むしろ大人も読むべき本です。

    学校で学んでいるものの正体は「魔法」。「魔法」を学んでいる。「魔法」の力で未来を変えるために学校に通い勉強しているという。なるほど、視点を変えれば、今現実に出来ている技術は過去の時代から見たら、まったくの魔法そのモノだろう。学校は未来と希望の工場なんだなあ。

    「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」って言われているのに大人になるととかく経験で意見したくなるものです。過去に成功を収めた方ほど経験に縛られるかもしれない。経験を否定して未来を語れるかどうかは、多くの人が賛同しない真実を見つけられるかどうか。それもうまく行った人の結果論かもしれないけど、それでもバットを振らないとボールには当たらないからね。

    それにしても、14歳のころの私にこの本は響いたかっていうと、いっぱい???です。それだけ凡人なんですね。その当時からこうしたことを意識できる人材こそ、未来の魔法を作るのかもしれません。でも、私も、箒にまたがって空を飛びたい!(笑)


  • 印象に残ったところ。
    - 歴史は、過去に何があったか、を知るためではなく、これからどうするか、を考えるために学ぶ
    - 人を疑うのではなくコトを疑え
    - 冒険とは、自分だけの仮説を証明する旅
    - 仮説は修正してよい
    - 論文を書く際、ある程度自分の考えが安定したら書き出してよい、完璧にまとまっていなくても

  • 筆者は、文末で、こう述べている。
    まずは自分を変えることからはじめるのだ、と。
    どうやって変えたらいいんだろうか?本書で、偉人たちが成した偉業について光を当てる角度を変えて紹介しているが、歴史に学ぶのも一つのやり方だと思う。また、ミライを変えるために勉強が必要だと述べているように、知識(魔法)をしっかり身につけることも一つのやり方だと思う。筆者は、何のために学ぶのかという問いに対して、魔法を使ってミライを変えるため、と言っている。もし私が、
    14歳の時にこの本を読んだとしたら、何かアクションを起こしていただろうか。ある程度長く生きてきた今だからこそ、心に響く部分もある。学びはいつからでもスタートできる、勇気をもらった。

  • 積読解消。
    14歳に向けて書かれた本。親戚の子に薦めたくなると同時に、自分が14歳の時に素直に読めたかは疑問。

    本当に惜しい人を亡くしたと思いますが、こうやって後世のために残してもらえたことに感謝。

  • ミライの授業 2016

    2019年5月1日発行
    著者 瀧本哲史
    本作品は、2016年6月、小社より単行本として刊行されたものを電子書籍化したものです。

    授業に協力していただいた学校
    福島県飯舘村立飯舘中学校
    東京都文京区立音羽中学校
    田園調布雙葉中学校
    灘中学校
    佐賀県武雄市立山内中学校

    瀧本哲史氏の本。
    中学生向けの講演を書籍化したものなので、読みやすくわかりやすい。
    もちろん既刊の「君に友達はいらない」(2013)や「僕は君たちに武器を配りたい」(2011)も十分に読みやすいけれども。
    授業の冒頭で20人の物語を紹介すると書いてあり、ニュートンから緒方貞子さんまで、その数は19人。20人目は「きみ」だという。
    なるほど、設定としてはうまい。
    また当事者意識を持ってもらう意味でも良い。
    この最後の辺りまで読んでこの構成はうまいと思わず頷いてしまった。
    ただ現実には人間一人一人の能力は大きく異なる。
    資質や才能の無い分野で力を発揮することはできない。
    若者には無限の可能性が・・なんて話は嘘っぱちなのである。残念ながら。
    その残酷な事実が指摘されていないのが本書の足りない部分であると思う。
    まあ、未来に投資したいとする瀧本哲史氏の熱い思いが伝わってくるのでその辺りは野暮というものだろうか。

    本書を読み通して既視感を受けたのは司馬遼太郎氏の書いた「21世紀を生きる君たちへ」という文章だ。晩年の司馬が未来を子どもたちに託した文だ。もしかすると残り時間があまりないということを本書(2016年発行)を出した時に瀧本哲史氏は感じていたのだろうか。偶然なのか。

    ベアテ・シロタ・ゴードンさんの紹介するところで、日本国憲法第24条の話が出てくる。
    日本国憲法第24条に婚姻は両性の合意のみに基づいて成立し・・とある。1946年当時は先進的だったのだろうけれども、昨今の同性結婚を認める認めないという話が出るまで世界は変わった。ただこの24条の条文がある限り、日本において同性婚が認められることはないだろう。今でも選択的夫婦別姓すら成立しない。
    日本国憲法も第9条や第89条のように実質的に死文化している箇所もある。しかし大部分はやはり生きていてその他の法律の土台になっている。
    ミライを変えたいのなら、やはり日本国憲法改正は避けては通れないと知るべきだろう。
    もちろん自民党の提案している大日本帝国憲法の劣化版のような憲法改正は論外ではあるが。



    印象に残った点

    誰もがかつては14歳だった。自分の可能性をあきらめ、愚痴や不満ばかりこぼしている大人たちも、かつては14歳だった。わたしはきみに、そしてすべての「かつて14歳だった大人たち」にこの本を贈りたい。たとえ何歳であろうと、未来をあきらめることは許されないし、わたし自身が未来を信じているからだ。
    14歳のきみたちには、未来がある。可能性がある。
    そしてかつて14歳だった大人たちには、知識がある。経験がある。もう一度人生を選び直す時間も残されている。50歳を過ぎて天空を見上げた伊能忠敬を、60歳を過ぎて国際問題の最前線に身を置いた緒方貞子さんを、思い出してほしい。
    たった一度しかない人生を、今日という日を境に変えることができるのだ。きみが「20人目の変革者」になれるかどうかは、今日の選択にかかっている。


    そして今回、わたしは14歳のきみに、いちばん若くて可能性に満ち溢れたきみに、投資をすることを決意した。

    どんな変革者も、いきなり世界を変革するのではない。
    世界を変える旅は「自分を変えること」からはじまるのだ。

    5時限目まとめ
    1世界を変えるのは、いつの時代も「新人」である
    2大人たちは変わらない。「世代交代」が時代を変える
    3ハリー・ポッターの価値を見抜いたのは8歳の女の子だった。
    4シロウトだからこそ「常識」に振り回されなかった緒方貞子さん
    5迷ったときは「基本原則」に立ち返れ
    6大人たちが反対するとき、きみは「大切な真実」を語っている

    「賛成する人がほとんどいない、大切な真実とはなんだろう?」
    ペイパル共同創業者、ピーター・ティール

    みなさんが世界を変えようとするとき、自分の夢をかなえようとするとき、周囲の大人たちが応援してくれると思ったら大間違いです。大人たちが応援するのは、自分の地位を脅かさない若者だけ。つまり「世界を変えない若者」だけです。
    大人たちからすれば、みなさんの手で世界を変えられることは、大迷惑なのです。

    たいていのあたらしいパラダイムは、はじめの段階ではぎこちないものである
    トーマス・クーン

    パラダイムとは、簡単にいうと「ある時代に共有された常識」といった意味の言葉です。

    古い世代の人たちに世界を変える力はない。世界を変えるのは、いつも「新人」なのだ。

    「世代交代」だけが、世の中を変えるのだ

    4時限目まとめ
    1個性豊かな仲間たちは「パーティ」をつくろう
    2自分の個性を知って自分の人生の主人公になろう
    3変革者の背後には「影の主役」たちがいる
    4伊能忠敬の夢を支えたのは、病床の天文学者だった
    5「鉄の女」サッチャーを支えるため「情けない夫」を演じたデニス
    6自分の才能におぼれ「仲間」を得られず失敗したメンデル

    結局、メンデルは誰に認められることもないまま遺伝の研究をやめ、その生涯を閉じました。彼の研究成果が再評価されるのは、死後16年が経ってからのことです。
    メンデルが「早すぎた天才」だったのかというと、そうではないでしょう。
    彼はシャイな性格で、あまり人との交流を好みませんでした。数学的な正しささえ証明すれば、いつか認められるはずだと考えていました。パートナーを求めず、「仲間」をつくろうとせず、孤独に研究を続けていたのです。
    もしメンデルに、彼の研究をサポートする仲間がいて、学会での発表にアドバイスをくれたり、本の出版に協力するパートナーがいれば、きっと生前から高い評価を受けていたでしょう。

    メンデルには「伝える力」がまったく足りなかったこと。彼の論文はあまりにも短く、言葉よりも数式ばかりで説明しようとするものでした。数学の力を信じ、遺伝の謎を数式で解き明かすことに、夢中になりすぎたのです。
    当時の生物学者たちは、メンデルほど高等数学を理解できませんでした。
    そして当時の数学者たちは、生物学には関心がありませんでした。
    生物学者には理解できない、けれども数学者にとっては関心の湧かない話を、メンデルは続けていたのです。もう少し、彼が生物学者たちの心を理解し、言葉で説明する努力を払っていれば、結果は違ったものになったかもしれません。

    未来をつくる物語の主人公は、ひとりではない。影のヒーロー、影のヒロインという道があることを覚えておきましょう。

    みなさんが世界を変える冒険に出るときも、敵は前方にいるとは限りません。ときには後ろから矢が飛んでくることもある。

    いいかい、マーガレット。「他の人がやっているから」というだけの理由で、何かを決めてはならない。何をするかは自分で決めなさい。そして、自分の決断についてきてくれるよう、まわりの人間を説得しなさい
    サッチャーの父アルフレッド

    伊能忠敬にとって、本来の「目的」は地球の大きさを知ることでした。そして地球の大きさを知る「手段」として、彼は高橋至時のサポートを取り付け、蝦夷地の測量と地図づくりを申し出ました。

    過去の変革者たちの背後には、いつも彼らを支えてきた「影の主役」というべき仲間たちの存在がありました。

    仲間たちとパーティを組むときには、それぞれの個性をうまく組み合わせる必要がある。勇者から僧侶まで、さまざまな特徴を持った仲間が集まってこそ、冒険の旅はうまくいく。

    3時限目まとめ
    1柔道は「スポーツ化」によって国際競技として普及した
    2新しい考え方は「ルール」をつくって伝えよう
    3男女平等の原則は、ひとりの女性がルール化させた
    4あたらしい女性像そのものをデザインしたココ・シャネル
    5自分の思いを、目に見える「かたち」にしよう

    時代が変わればモードも変わる。どんなモードもいつか遅れたものになる。だけど、スタイルだけは変わらない。ココ・シャネル

    こうしたシャネルの斬新なファッションは、時代の追い風を受けて瞬く間に世界を席巻していきます。この当時、ちょうど第一次世界大戦が勃発し、働き盛りの男たちはみんな戦争に行ってしまいました。そのため、女性たちも働く必要が出てきて、動きやすくてファッショナブルな服が求められるようになったのです。
    結果的に、ファッション業界は「シャネル以前」と「シャネル以後」で完全にニ分されてしまいます。伝記作家のポール・モランは、19世紀までのファッションを葬り去ってしまったシャネルを「皆殺しの天使」と呼びました。かなり過激な言葉に聞こえますが、それくらいの大革命が起こったのだと考えてください。

    シャネルはファッションを通じて何を訴えようとしたのか?
    彼女は「女性の自立」を、そして「自由」をファッションに落とし込んでいったのです。


    日本国憲法 第24条
    1婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
    2配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。
    起草者ベアテ・シロタ・ゴードン(Beate Sirota Gordon, 1923年10月25日 - 2012年12月30日)

    1946年の時点で、男女平等が憲法に明記されたことは、世界的に見てもかなり異例のことでした。

    そんな22歳の民間人女性が、「たった一行のルール」によって、日本を変え、日本女性の未来を変えたのです。
    もしも彼女が「男女平等」を訴える市民活動家としてアクションを起こしても、無視されて終わりだったでしょう。不平不満を訴え、自分の信じる正義を訴えるだけでなく、それを「ルール」としてかたちにすることが大切なのです。

    「この条文は、日本で育って、日本のことをよく知っている、このシロタさんが日本女性の立場や気持ちを考えながら、一心不乱に書いたものです。日本にとって悪いことが書かれているはずなどありません。彼女のためにも、これを通してもらえませんか?」
    GHQ側の実施的リーダーだったケーディス大佐

    嘉納治五郎は、腕っぷしの強さで柔道を認めさせていったのではありません。
    彼は「ルール」をつくることで、マイナーな格闘技に過ぎなかった柔術を柔道に変え、世界に認めさせたのです。

    嘉納治五郎の柔道は、それまで「見て学べ」「からだで覚えろ」ばかりだった柔術の稽古に、さまざまな改革をもたらします。

    2時限目まとめ
    1冒険は、仮説という名の「地図」がなければはじまらない
    2まだ誰も手を付けていない「空白地帯」に仮説の旗を立てよう
    3競争の少ない動物用医薬に目をつけ、2億人を救った大村智さん
    4パソコン用ソフトに「旗」を立てたビル・ゲイツ
    5エジソンは蓄音機の「仮説」を間違えていた
    6自分の仮説を修正する勇気を持とう

    仮説は「空白地帯」に狙って立てる
    そして仮説は、時代や状況の変化に応じて柔軟に修正していく。

    エジソンほどの才能をもってしても、そして蓄音機ほどの大発明があったとしても、そこで掲げた「仮説」が間違っていれば、何の意味もない。

    アメリカで充実した研究生活を送った大村さんは、シンプルな結論にたどり着きました。
    日本の研究者も、決してレベルが低いわけじゃない。それでもアメリカに太刀打ちできない最大の理由は、研究費だ。日本の大学は研究に使えるお金があまりにも乏しい。

    1時限目まとめ
    1日常にある「小さな違和感」を掘り下げ、冒険の扉を開けよう
    2課題をこなす人より、課題を見つける人になる
    3ナイチンゲールは旧世代の男たちを「データ」で動かした
    4エリートほど「思い込み」の罠にはまりやすい
    5未知の課題には「論より証拠」で取り組もう
    6人を疑うのではなく「コト」を疑う

    権威や常識を疑うことができるかどうか

    事実をベースにしてものごとを考えられるか

    全く新しい課題に取り組むとき、考えても考えても答えが見つからないとき、そんなときには、目の前にある「事実」を拾っていきましょう。たくさんの事実を積み重ねていった先に答えは見えてくるはずです。


    こうして、(高木兼寛らが)海軍がパンや麦飯でめざましい効果を上げているにも関わらず、森鴎外ら陸軍の軍医たちは「脚気は伝染病で、食事なんて関係ない」と言い張りました。相変わらずの白米中心の食事を与え、世界的に有名なドイツの細菌学者コッホ(結核菌やコレラ菌の発見者)に、ありもしない「脚気菌」についてアドバイスを求めるなどしていました。
    そして迎えた、日清戦争と日露戦争。日本軍は悲劇的な事態に見舞われます。
    日清戦争では、戦闘による負傷が原因で亡くなった人が453人だったのに対し、脚気にかかた人が4万8000人。このうち2410人が脚気によって亡くなりました。つまり、戦傷による死者の5倍以上もの人が脚気で亡くなったのです。
    そして日露戦争では、戦傷死した人が4万7000人だったのに対し、脚気にかかった人はなんと21万2000人。そして2万8000人もの兵士が脚気で命を落とします。
    もしも日本軍全体で、パンや麦飯を中心とした食事に切り換えていれば、彼ら何万何十万という兵士たちは脚気にかかることも無かったはずです。失われずにすんだはずの命が、軍医たちの誤りによってあまりにも多く失われてしまいました。

    現在、脚気の原因はビタミンB1の不足であることがわかっています。


    戦場の兵士たちを救い、不衛生な環境に暮らす人々を救い、イギリスはもとより世界の医療・福祉制度を大きく変えていったのは、看護師としてのナイチンゲールではなく、統計学者としてのナイチンゲールだったのです。

    戦場の兵士たちは、戦闘によって亡くなるのではなく、劣悪な環境での感染症によって亡くなっていくのだ。それがナイチンゲールの結論でした。

    そこでナイチンゲールの使った武器が、看護師の道に進む以前、ずっと学んできた数学であり、統計学だったのです。

    愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ
    オットー・フォン・ビスマルク

    ベーコンの考える4つの思い込み
    人間のからだや脳のしくみなどからくる「人間の思い込み」
    自分の考えは全て正しいと勘違いしてしまう「個人の思い込み」
    まわりの評判やうわさ話を鵜呑みにする「言葉の思い込み」
    そして、偉い人や有名な人の言うことを信じてしまう「権威の思い込み」

    そうした思い込みの鎖を断ち切るにはどうすればいいのか?
    ベーコンの答えは「観察と実験」でした。

    学問の目標は、地位や名声を得ることでも、いばることでも、誰かを言い負かすことでもない。本当の目標は、人類の未来を変えるような、発明と発見にあるのだ。それが「力」だ。
    →「知は力なり」

    学校は、未来と希望の工場である。

    2023/02/05(日)記述

  • なんかすごい感動した。14歳からは遠に離れてしまったけれど、あの時思ったことを忘れずに、そして思った以上に難しいことだと思うので、自戒を込めて、今の若い人たちを応援できる大人でありたい。

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著者プロフィール

京都大学客員准教授、エンジェル投資家、教育者。1972年生まれ。麻布高等学校、東京大学法学部を卒業後、大学院をスキップして直ちに助手に採用。専攻は民法。任期終了後は学界に残らず、マッキンゼーへ入社。3年で独立し、多額の債務を抱えていた日本交通の経営再建などを手がけながら、エンジェル投資家として極めて初期段階の企業を15年以上にわたって支援し続ける。京都大学では教育、研究、産官学連携活動に従事。「意思決定論」「起業論」「交渉論」の授業を担当し、人気NO.1若手教官として「4共30」講義室を立ち見に。各界において意思決定を先導するリーダーを育てることを目標に、選抜制の「瀧本ゼミ」を主宰。著作物やディベートの普及活動を通して、次世代への教育に力を入れていた。2019年8月10日永眠。

「2022年 『瀧本哲史クーリエ・ジャポン連載集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

瀧本哲史の作品

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