新潮 2019年 06 月号 [雑誌]

  • 新潮社
3.40
  • (0)
  • (2)
  • (3)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 19
レビュー : 3
  • Amazon.co.jp ・雑誌
  • / ISBN・EAN: 4910049010693

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 古市憲寿著「百の夜は跳ねて」読了。芥川賞候補作。前回の候補作と違って、窓清掃する青年が主人公。でもいつも死が身近にあるのだね。この作品は好き。なんだか好きだった。

  • 古市憲寿「百の夜は跳ねて」を読んだ。芥川賞候補作品。
    主人公のは、高層ビルの窓ガラスを拭く(かっぱぐ)仕事をしている。ビルの窓をかっぱぎ続けていたある日、高級マンションの住人である老婆と目が合い、呼ばれるまま訪ねてみると、仕事で行く先の窓の中の写真を撮ってきてくれないか、と依頼される。…という話。
    窓の外の景色なんて誰もみないのに、ほんの数日でどうせ汚れてしまうものをきれいにする仕事なんて、と主人公は思っている。なくてもいいかもしれない仕事、という風に。でもなくならない仕事。窓の中と外。こんな都会の真ん中で、すぐ側で、いのちをかけた仕事。その観点はおもしろくて、読ませられた。老婆の俗世離れした語りもよかった。
    一方で、箱がたくさんある部屋で、それを街にたとえていくとか、死ぬことが許されない島の話とか、選挙出馬を決めた母の写真をとるとか、特に最後の数ページあたりは無理やりに収束させた感じがあった。気持ちもついていかなかった。特に、母親の写真を撮ったというところは、いつのまに主人公の中のわだかまりが解決していたのか分からず、なんでねん、と思ってしまった。

    あと、本筋とは関係ないことだけど、主人公は老婆と違ってお金持ちではないのに、やたらとブランド名やUber eatsとかに詳しくて、最近の若者って自分にかかわりがなくてもそういうのはふつうに分かるのかい?と、不安になった。

  • 古市憲寿『百の夜は跳ねて』。
    描写や表現の仕方には違和感がなく、すらすら読めた。高層ビルの窓を拭く仕事の青年。ある時、ある部屋のガラスに描かれたメッセージにより、その部屋の老婆の依頼を受け、老婆に仕事中に撮影した写真を持っていくことを約束する。
    主人公の語りに時折地の文で、かつて事故で亡くなったと思しき先輩社員が語りかける。遠い北の島に、終末に備え種子を保存する装置。この先輩については特に最後まで詳細はわからない。ほかに主人公はかつて就活で失敗したことなどが徐々に明らかになっていく。意味があるのかないのかわからない仕事と、写真を撮ること。老婆は写真を箱に貼り、仮想の街をつくる…
    終わり方もきれいで、鮮やかな印象だった。ただ、頭の良い人が、見本やお手本のように書いた小説という印象もある。最後も盗撮の代わりに、箱に明かりを入れるところ。何となく美しいが、きれいすぎるような気もする。『ニムロッド』にも似ている気がするが、ニムロッドに多層的に展開されていたモチーフに比べると力がないようにも思う。

全3件中 1 - 3件を表示
ツイートする
×