文學界2019年6月号

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  • / ISBN・EAN: 4910077070690

感想・レビュー・書評

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  • 李琴峰「五つ数えれば三日月が」を読む。芥川賞候補作。
    台湾に生まれ育ち、日本の企業に就職したリンと、日本に生まれ育ち、台湾の日本語学校に就職、台湾で家庭も築いた実桜。日本と台湾の近いような遠いような距離感、文化の違い、花火、食べ物、アクセントになっている漢詩の使い方。
    これはどこを面白がって読むのがいいのかな、と考えてしまったのは、芥川賞候補作と知っているからで、単純に読んだだけでは、面白さがわからなかった。
    なんでここにいるんだろう、これでいいのかな、という不安が必ずしも異国の地にいる不安感だけではないように思ったし、リンの実桜への気持ちがいまいち分からなくて、しっくりしなかったのもある。恋愛感情?なのかな。そう読ませようとしてるような気がするけど、恋愛感情ではなくない?(少なくともわたしがこれまでに恋愛感情、と認識しているものとは)と、思った。恋愛感情だとしたらなんで?というところがうすすぎるかなと。同性だからとかじゃなくて、大学院の2年間以降つながりもなく、久しぶりに会った相手に対してそんなに気持ちって続くだろうか?続くのだとしたら背景がほしかった。
    恋愛感情ではなくて、お互いが、お互いに、あったかもしれない未来の自分で、それが友情とないまぜになった感情…という風にも読めたけど、それでも、うーん、という感じ。2人は同世代の女性のはずなのに、その気持ちが読み取れなかったのがもどかしい。

  • 芥川賞候補作、李琴峰著「五つ数えれば三日月が」読了。地震のあった年に知り合った主人公と実桜。その後就職して住む国も生き方も別々の二人が再会する。冒頭から訳文ぽさが気になるけど、まぁ結末はこうなるよねーと。

  • 李琴峰「五つ数えれば三日月が」
    台湾出身で大学院入学以降、日本在住である女性の語り手、林(リン)。彼女と日本の大学院で知り合い、現在は台湾で結婚した日本人の女性、実桜とが、池袋で数年ぶりに再会する、その一日を描いた作品。主に二人の会話と、それぞれの過去への回想で構成されている。最初、リンは男性かとも思ったが、リンの過去に女の子と口づけをしていて両親に咎められた回想があり、同性愛者である女性ということが明らかになる。ここの部分の流れはくどくない内容で、自然と女性を愛する女性ということが表現されていたので巧みだと感じた。ただ反対に、実桜が台湾で連れ子のいる男性と結婚し、異国での生活に苦悩する回想は、やや直線的で、既視感のある箇所のようにも感じてしまった。おそらく実桜については日本と台湾、母国(語)と異国(語)、後妻であることによって誰とも血の繋がりのない家族との苦悩とか、そういうことを描き、リンについても同様に台湾と日本(または田舎と都会生活)、自身の同性愛やそれをめぐる肉親たちとの関係性についての苦悩や葛藤を描きたかったのだろう。その試みが特に実桜についてはややステレオタイプ的になってしまったようにも感じたが、それでも全体として、月や花火の彩りのイメージが鮮やかな印象を残す良作と思った。リンにとっての台湾がただの異国としてではなくむしろ日本の古い時代の家父長制的な風習の土地として描かれているのも興味深かった。ただ、いい意味ですっきりとし過ぎていて、芥川賞の受賞作となるには、他の作品との相対評価になるかもしれないが、インパクトは十分だろうか、と思うところ。

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