罪の声 (講談社文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 「きょうとへむかって、いちごうせんを…にきろ、ばーすーてーい、じょーなんぐーの、べんちの、こしかけの、うち」
    未解決事件であるギン萬事件、この事件では、脅迫の道具として録音された子供の声が使われていた。
    京都でテーラーを営む曽根俊也は、父の遺品整理の際、幼き自分の声が昭和の大事件に使われていたと知る。
    ちょうど同じ頃、大日新聞大阪本社で文化部記者を務める阿久津はギン萬事件の企画記事に駆り出され、二人はそれぞれ別角度から事件の真相を追うことになる。
    そして、両者の見つけ出した事件の欠片は、ある一点から一筋の糸となって繋がっていた。
    本作は一部フィクションながら、実際の未解決事件を題材にしていることからどの部分がフィクションであるのか前提知識なしにはわからないほどのリアリティに溢れており、一読した後には(あるいはその前に)事件の詳細について調べてしまうに違いないだろう。

    事件の真相は必ずしもドラマチックなものとは限らない。だからこそ、真実は残酷でやるせないのだ。
    事件に図らずも巻き込まれた者はその後一生にかけてその呪縛にとらわれてしまう。
    記者の役割とは何なのか、真実を全て暴き出すことが正義なのか。そういった観点から読んでみても本作はとても興味深い作品となっている。

  • この小説は私に刺さるものが多すぎたので、感想が長くなる。

    ざっくり言えば、新聞記者が30年以上前の未解決事件を再び調べていく物語。月日が経っていることも作用して、少しずつ事件の全容が新聞記者の阿久津の手によって明かされていく。ミステリーのように答えが1つにまとまっていく読み味が心地よかった。


    この小説が私の心を捉えた理由は、やはり、私が記者の道に踏み込もうとしているからだろう。著者が元神戸新聞の記者ということもあり、新聞記者の取材姿勢がとても忠実だったのではないかと思う。

    記者阿久津の心情描写は実際に、現場の記者が抱えている葛藤なのではないかと思った。取材を進める阿久津は取材で相手を損ねると知りながらも、「突き詰めれば「いい人」で終われる仕事などない。」と自らを正当化する。真実を探ろうとすることが、時に人を傷つけてしまう。記者の業の深さを感じざるを得ない場面だった。

    それでも、阿久津は未解決事件の真相を追い求めるうちに自分が伝えなければいけないメッセージについて考えだす。そして、この事件に、知らないうちに加害者として巻き込まれた家族のことを取りあげようと決める。
    「未来にギン萬事件と同様の、家族こどもを巻き込んだ犯罪を起こさせない。」
    記事にする切り口から、阿久津の強い意志が読み取れた。阿久津のこのような意志から、物語は好転したように感じた。


    正直、読んでいて、私にこのような仕事が務まるのか不安に思ってしまった。
    「記者という仕事は必ずしも人から感謝される仕事ではない。」
    現役の記者から言われた言葉が、頭の中で何度も想起された。

    それでも、阿久津がこの事件の総括を決めたように、私も自身の正義感に従って、報道していきたいと強く思った。

  • この物語は、フィクションだが真実を読んでいるような感じになる。久しぶりに小説家の凄さを感じた読み応えのある本。事実と上手くフィクションを絡ませながら進んで行くパズルの様な構成は流石!!
    「グリコ森永事件」をよくもここまでフィクションとして書き上げたものだと共に、この事件の内容も理解しなが読んでいくと、よくもまーこんな日本中を騒がせた大事件が、未解決のまま時効になったものだと思う。
    本当の犯人達が出て来て真相を打ち明けたならどんな感じなんだろうと思う…

  • 昨年読み終わっていましたが、なかなかレビューを書けず…
    PC環境が整ったので書き始めました。

    グリコ・森永事件はテレビの特番等でちらっと見たことはありましたが、詳細は全く知りませんでした。
    この本を読んで、時代も味方した事件だったのでは、と思います。

    読み始めて中盤当たりで心が折れかけました。苦笑
    とにかく長いし、なかなか小栗旬と星野源が出会わない。苦笑
    犯人は複数名いるため、誰が誰だかわからなくなり、相関図をネットで調べたり。苦笑
    通勤途中の合間に読んでいて、疲れて読めない日もあって、とにかく我慢の中盤でした。笑

    序盤と後半はかなり面白く、読み進めるスピードも速まりました。

    犯罪に巻き込まれた二つの家族がどんな人生を歩むことになるのか。
    実際の事件がベースになっていることもあるため、フィクションと思えず、とにかく家族がかなしくかわいそうでした。
    何も悪いことをしていないのに、真っ暗な毎日を過ごして未来を奪われた人達がいるんだと思うと胸がいっぱいになりました。

    最後は、運命を手繰り寄せて、少しだけ救われた気がする終わりです。
    映画もぜひ見たいと思います。

  • 読み応えのある量と内容。そして、映画を絶対に観る。モチーフとなった事件を知らないが、それでも楽しめた。

  • 映画を観ました。個人の備忘録として書きます。
    この映画のモチーフであるあの事件は私の地元で起きた事であるので個人的にとくべつな思い出のある事件。
    あの事件を、脅迫の声に使われた子供の視点から辿って行くこの話は、今まで考えたことの無い切り口で驚いた。更に小栗旬と星野源をはじめとした俳優陣の演技が素晴らしく見入ってしまった。最高(ここ最近、日本映画は当たりが多いけど)の一作でした。もう一度観に行きたい。

  • リアリティがすごい。まるで登場人物が現実に存在し、どこかで今も生きているかのような錯覚を覚えるほど。過去の事件をもとに、ここまでの物語を作り上げる著者に、ただただ感嘆した。

  • 1回、それも限られた時間のなかで、出来得る限りの情報を聞き出すために新聞記者は、切り込み口を考えたり、どれをズバッと質問するか、それとも敢えて伏せるかなど頭をフル回転させているのだと知りました。

    精神的にタフでなければ出来ない仕事だと感じました。

    「グリコ森永事件」が起こった頃、私は小学3年生でした。

    今思うと不謹慎ですが、「毒入り!毒入り!青酸カリ!青酸カリ!」と面白がって言っては遊んでいました。

    また、それまで剝き出しだったお菓子の箱が、毒物を混入されるのを防ぐため、透明フィルムで包まれるようになり、開けにくくなったなぁと思ったのを覚えています。

    ですので、事の重大さを今ひとつ分かっていなかったのではないかと思います。

    こんなに世間に恐怖を与えた重大事件だったのかと改めて感じました。

  • 映画化を知り読んでみた。グリコ森永事件をベースに、ニュースになっている断片的な情報をつなぎあわせてよくこんな物語をつくれるよな~とひたすら感心した。あやしい人がたくさん出てくるし、話の舞台の場所も時代もころころと切り替わるので、ついていくのに必死。昭和的な胡散臭い話や物悲しいエピソードがちょいちょい出てきて苦しくなったが、読み応えあり。

    (駄)ドラマ化するならテーラーの息子役は風間俊介、おじさん役をブラザートムに、記者役は井浦新にやってほしい。

  • はじめて塩田さんの本を読んだけどおもしろい!おもしろい!おもしろい!止まらなかった!これは映画になるわ。映画も見たけど断然本!!!実際のハイネケン事件と絡めてるからなのか、、、どんどんハマっていってしまった。罪を犯した人が裁かれなくてもこんなにイライラしないのは珍しい。終わりも納得。

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著者プロフィール

1979年、兵庫県生まれ。神戸新聞社在職中の2011年、『盤上のアルファ』でデビュー。2016年『罪の声』で第7回山田風太郎賞を受賞し、“「週刊文春」ミステリーベスト10 2016”国内部門第1位、2017年本屋大賞3位に輝く。2018年には俳優・大泉洋をあてがきした小説『騙し絵の牙』が話題となり、本屋大賞6位と2年連続本屋大賞ランクイン。2019年、『歪んだ波紋』で第40回吉川英治文学新人賞受賞。2020年、21年には『罪の声』『騙し絵の牙』がそれぞれ映画化された。

「2022年 『朱色の化身』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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