- Amazon.co.jp ・電子書籍 (449ページ)
感想・レビュー・書評
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この小説は私に刺さるものが多すぎたので、感想が長くなる。
ざっくり言えば、新聞記者が30年以上前の未解決事件を再び調べていく物語。月日が経っていることも作用して、少しずつ事件の全容が新聞記者の阿久津の手によって明かされていく。ミステリーのように答えが1つにまとまっていく読み味が心地よかった。
この小説が私の心を捉えた理由は、やはり、私が記者の道に踏み込もうとしているからだろう。著者が元神戸新聞の記者ということもあり、新聞記者の取材姿勢がとても忠実だったのではないかと思う。
記者阿久津の心情描写は実際に、現場の記者が抱えている葛藤なのではないかと思った。取材を進める阿久津は取材で相手を損ねると知りながらも、「突き詰めれば「いい人」で終われる仕事などない。」と自らを正当化する。真実を探ろうとすることが、時に人を傷つけてしまう。記者の業の深さを感じざるを得ない場面だった。
それでも、阿久津は未解決事件の真相を追い求めるうちに自分が伝えなければいけないメッセージについて考えだす。そして、この事件に、知らないうちに加害者として巻き込まれた家族のことを取りあげようと決める。
「未来にギン萬事件と同様の、家族こどもを巻き込んだ犯罪を起こさせない。」
記事にする切り口から、阿久津の強い意志が読み取れた。阿久津のこのような意志から、物語は好転したように感じた。
正直、読んでいて、私にこのような仕事が務まるのか不安に思ってしまった。
「記者という仕事は必ずしも人から感謝される仕事ではない。」
現役の記者から言われた言葉が、頭の中で何度も想起された。
それでも、阿久津がこの事件の総括を決めたように、私も自身の正義感に従って、報道していきたいと強く思った。
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この物語は、フィクションだが真実を読んでいるような感じになる。久しぶりに小説家の凄さを感じた読み応えのある本。事実と上手くフィクションを絡ませながら進んで行くパズルの様な構成は流石!!
「グリコ森永事件」をよくもここまでフィクションとして書き上げたものだと共に、この事件の内容も理解しなが読んでいくと、よくもまーこんな日本中を騒がせた大事件が、未解決のまま時効になったものだと思う。
本当の犯人達が出て来て真相を打ち明けたならどんな感じなんだろうと思う… -
読み応えのある量と内容。そして、映画を絶対に観る。モチーフとなった事件を知らないが、それでも楽しめた。
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リアリティがすごい。まるで登場人物が現実に存在し、どこかで今も生きているかのような錯覚を覚えるほど。過去の事件をもとに、ここまでの物語を作り上げる著者に、ただただ感嘆した。
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映画化を知り読んでみた。グリコ森永事件をベースに、ニュースになっている断片的な情報をつなぎあわせてよくこんな物語をつくれるよな~とひたすら感心した。あやしい人がたくさん出てくるし、話の舞台の場所も時代もころころと切り替わるので、ついていくのに必死。昭和的な胡散臭い話や物悲しいエピソードがちょいちょい出てきて苦しくなったが、読み応えあり。
(駄)ドラマ化するならテーラーの息子役は風間俊介、おじさん役をブラザートムに、記者役は井浦新にやってほしい。 -
はじめて塩田さんの本を読んだけどおもしろい!おもしろい!おもしろい!止まらなかった!これは映画になるわ。映画も見たけど断然本!!!実際のハイネケン事件と絡めてるからなのか、、、どんどんハマっていってしまった。罪を犯した人が裁かれなくてもこんなにイライラしないのは珍しい。終わりも納得。