- Amazon.co.jp ・電子書籍 (105ページ)
感想・レビュー・書評
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女として生きることへの屈託を抱えた人の文章こそが、自分の胸を打つのだと最近気がついた。自己を語る没入感と、徹底して女を分析する観察眼。どちらかがある文章というのはたくさんあるのだけれど、両方を併せ持つ文章はそう多くない。そしてフェミニズムが私に与えてくれるようで与えてくれなかったものを、なぜか三浦瑠璃さんの文章は与えてくれる。日本のフェミニズムには優れた研究者や書き手がいっぱいいるのに、どうも全てが忘却の彼方で、一般のところまで何も降りていないところを見ると、純粋にこういう屈託の複雑さを描きうる書き手がいなかったのでは、とまで思えてくる。本作中に出てくるけれど、女性性を押し殺して壁を作り世界に対して不機嫌かつ攻撃的に接することも、女同士の世界に(多くは母と娘という関係だろうけど)自閉することも、自分の現実ではそうそううまくいかないということを大抵の女は経験的に知っている。女性について語る人で、そういう大抵の女の感覚を汲み、共感を当たり前のように示せる人はあまりいないように思う。母である人が、真剣に女であるということを観察すると、このような言葉になるのか。そして、私はその言葉に救われる自分に心底驚く。私たちは常に、譲ることを、与えることを弱さだと考えてしまい、それを警戒するあまり、いつも壁を作り他者を排除していたのだった。
女として生きることは、やはり枷を負うことだと思う。しかし同時に、生きる上での枷は、女であるということだけではないのだとも分かってきた。そういうことに向き合う時、人が行き着く先はきっと孤独なのだ。
祖母から母、自分、そして娘へといった女系の連続性には、ひやっとする。文章中には男性の影があるようで、ない。女として生きることへの屈託は、やはり母との関係なくして語れないのだと悟る。同時代に生きる女性で、その文章と、生き方を尊敬できる人がいるということは、素晴らしくて、心あたたまることだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
メディアにもよく出ている方らしいが、全く知らなかった。
そこそこ年代が近い女性の等身大の屈託のない文章に最初は引かれたけれど、
あまりにリアルで、特に、高校生の時に乱暴されるあたりで気分が
悪くなってそのパートを読み飛ばしたが、思ったよりも難しかった。
たぶん、この人と気が合わないのだろうと思う。
ただ、そこまで私が作者にある意味の親近感を持ってしまったということに
ついては作者の側へ引き込まれたということなのだろう。
こういう方のエッセイを読んでいると思うことがある。
最初は読みづらいのに途中から
どんどん筆がなめらかになっていっていくものだと。
最初はうまくまとまらなかった書きたいことが途中から泉のように
わいてくる感じ。ノッてくる感じが伝わってきたけれど。 -
「人に歴史あり」という言葉が浮かぶ。メディアで活躍する著者にもいろいろなことがあり、それを経て今の活躍があると思うとそれは素直に素晴らしいと思います。
程度の差はあれ、皆誰でも各々経験、体験を経てその人なりの人生の価値観を持つようになり、その価値観について他人がどうのこうの言えるものではない、と思っています。
多様性を受け入れる、その人の考え方をまずは受け入れる、そういうことが大事だなと改めて思った次第、 -
孤独になったことも、女であるということも客観的な視点で自己分析されていて、なるほどと思ったり、そんな考え方もあるのかと思いました。
幼少期のいじめで学級会が開催される場面は、私の時代にもあったと思いますが、あの形式は正しいのか疑問に思いました。
また子育て中の女性は、すべてを子に捧げてしまうことがあり、それを男性にも求め、それを正義とするという意の一文は、印象に残りました。
この方の考え方は、自分にとっていい刺激になりました。 -
I was wondering if this book could be read lighter, but it was difficult.
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「女性の悩みはたいてい自分は理解されていないということに帰着する。」
「私たちが恋愛を求めるのは…自分の人生になお残されているかもしれない、可能性や不確実性を求めるのだと言ってもいい。」
「支配欲を呼び起こす原因はあるが、だからといって責任はない」 -
前からなぜか気になる(ポジティブな意味で)女性であったため手に取った1冊。
良い意味で裏切られた感じです。すごく強い人ではなかった、でもとても強い人だということがわかり、さらに気になる人になりました。読み返すことで理解が深まる気がするので、また時を置いて読んでみようと思う本です。(kindle) -
女性としての生き方を考えさせられる。人の人生について読んでいるはずなのに、いつのまにか自分の人生を反芻しながら読んでいた。政治学者としての一面とは違い、女性らしく繊細で傷つきやすい部分がたくさん描かれていました。三浦さんの自己探究心と、その言語化する能力は卓越していて本当に素晴らしいと思いました。
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なんだかこの著者の見方が変わった。とても文学的に書かれているのはそうあることで自身を客観視しているようにも思える。そうがんがえると少し切なくなる