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感想・レビュー・書評
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「伝える力」を磨くにはどうするか?
アリストテレスが明らかにした説得の原理から、説得に関する神経科学の研究まで、幅広い視点から伝え方について考察し、具体的なスキルを提示した書籍。
ケネディは、アポロ計画についての演説で、次の4つのレトリックで人々に感銘を与え、行動に駆りたてた。
①目標を1つに絞る(宇宙技術の確立等いくつかあったものを月面着陸に絞った)
②達成期限と具体的な目標を掲げる(10年後に達成する)
③日々の業務と最終目標をつなぐ中間目標を設定する(宇宙飛行士を周回軌道に乗せるマーキュリー計画、宇宙船をドッキングするジェミニ計画、月面着陸のアポロ計画)
④レトリック、メタファーなどによって目標が壮大であることを強調する
アリストテレスは、レトリックを「書き言葉あるいは話し言葉により、よい人生が送れるように他人を説得すること」と定義している。成功を収めるには知恵と弁舌が必要。
説得の最終目標は「話し手と聞き手がともに幸せを見つける」こと。アリストテレスによると、その方法は2段階に分かれる。
①議論のテーマを明確にする:他の人にしてほしいと思うこと(目的)を明らかにし、議論の方向性を定める。
②議論が堅実で論理的だと証明する:以下の3つのレトリックで議論を支える。
・論理(ロゴス) :エートスの前提。だが、これだけでは足りない。
・信用(エートス):話者の信頼度。議論の組み立て、品行方正など。
・感情(パトス) :説得の大きな力。
アリストテレスは人間の心理を検討し、説得では感情(パトス)が大きな役割を果たすとした。
「感情の重要性」は、神経科学の研究でも証明されている。感情が動くと脳内で化学物質が放出され、その時の記憶は忘れにくくなるという。
感情を用いて「人を導く能力」はAI社会になっても必要な要素。逆に他の「作業処理能力」と「データ分析し考察する能力」はAIの得意分野。感情を磨く必要がある。
説得力のある伝え方をするためのスキルには、次のようなものがある。
・相手の感情を動かす、少し緊迫感のあるストーリーを語る。ハリウッド映画と同じストーリー展開が良い。
第一幕:設定
第二幕:苦闘
第三幕:解決
・5秒で全体像を伝える。複雑なストーリーは頭に残らない。
・比較(アナロジー)とたとえ(メタファー)を駆使する。「ジュリエットは太陽だ」といったメタファーを活用すると、わかりやすい。詳細をみるコメント0件をすべて表示