父権制の崩壊 あるいは指導者はもう来ない (朝日新書) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 橋本治の本にしては珍しく星3つ。
    その理由は話題が広がりすぎて回収し切れていないと思うからだが、「小説トリッパー」に連載していたものをまとめたのが本書であり、しかも橋本治の最後の文章であることを思えば納得もいく。
    本書のテーマは「無条件に『偉い』はもはや成立しない」である。
    父権制=家父長制は「無条件に偉い」を認めるものであった。すでに廃止されてはいるが、「無条件に偉い」と思っているオッサンはたくさんいて、説明する気がないから説明能力が育たない。よって、国会は不明瞭な言葉が飛び交う言語空間となる。
    しかし、「無条件に偉い」が成立するのは簡単で、その延長にパワハラやセクハラが横行する。
    「無条件に偉い」に反発する風潮は確かにあって、「権威への反発」が支持されて当選したのが小池百合子であった。にも関わらず、偉いと勘違いをして「希望の党」を設立してしまう。
    1960年代に世界的に学生運動が起きた理由は「無条件に偉い」に反発できるくらいに豊かになったからで、日本では大学という権威に対する学生運動が盛んになった。
    さらに、「無条件に偉い」への反発は「無条件な決めつけ」への反発に拡大し、「女は女らしくあれ」への反発も生まれるが、「女らしさ」の物差しがなくなれば、あるべき姿は分からなくなる。
    「無条件に偉い」が成立しないのであれば、突出したリーダーは生まれにくい。「指導者はもう来ない」のかもしれない。
    男だから偉い時代は過ぎ去った。『男はつらいよ』のテレビ放映は1968年、映画版の一作目は1969年である。

  • p.2021/7/2

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著者プロフィール

1948年東京生まれ。東京大学文学部国文科卒。小説、戯曲、舞台演出、評論、古典の現代語訳ほか、ジャンルを越えて活躍。著書に『桃尻娘』(小説現代新人賞佳作)、『宗教なんかこわくない!』(新潮学芸賞)、『「三島由紀夫」とはなにものだったのか』(小林秀雄賞)、『蝶のゆくえ』(柴田錬三郎賞)、『双調平家物語』(毎日出版文化賞)、『窯変源氏物語』、『巡礼』、『リア家の人々』、『BAcBAHその他』『あなたの苦手な彼女について』『人はなぜ「美しい」がわかるのか』『ちゃんと話すための敬語の本』他多数。

「2019年 『思いつきで世界は進む』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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