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感想・レビュー・書評
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橋本治の本にしては珍しく星3つ。
その理由は話題が広がりすぎて回収し切れていないと思うからだが、「小説トリッパー」に連載していたものをまとめたのが本書であり、しかも橋本治の最後の文章であることを思えば納得もいく。
本書のテーマは「無条件に『偉い』はもはや成立しない」である。
父権制=家父長制は「無条件に偉い」を認めるものであった。すでに廃止されてはいるが、「無条件に偉い」と思っているオッサンはたくさんいて、説明する気がないから説明能力が育たない。よって、国会は不明瞭な言葉が飛び交う言語空間となる。
しかし、「無条件に偉い」が成立するのは簡単で、その延長にパワハラやセクハラが横行する。
「無条件に偉い」に反発する風潮は確かにあって、「権威への反発」が支持されて当選したのが小池百合子であった。にも関わらず、偉いと勘違いをして「希望の党」を設立してしまう。
1960年代に世界的に学生運動が起きた理由は「無条件に偉い」に反発できるくらいに豊かになったからで、日本では大学という権威に対する学生運動が盛んになった。
さらに、「無条件に偉い」への反発は「無条件な決めつけ」への反発に拡大し、「女は女らしくあれ」への反発も生まれるが、「女らしさ」の物差しがなくなれば、あるべき姿は分からなくなる。
「無条件に偉い」が成立しないのであれば、突出したリーダーは生まれにくい。「指導者はもう来ない」のかもしれない。
男だから偉い時代は過ぎ去った。『男はつらいよ』のテレビ放映は1968年、映画版の一作目は1969年である。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
p.2021/7/2