むらさきのスカートの女 [Kindle]

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  • 朝日新聞出版
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感想・レビュー・書評

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  • 芥川賞受賞作。
    芥川賞受賞作は何年か、読むことにしていましたが、最近はほぼ諦めてました。私にはあまりピンと来ないかな…?と。
    これなら読めそうかな~と。

    町で知らないものはいない?「むらさきのスカートの女」を興味を持って見守り続けている主人公。
    変わり者の孤独な女性を見て、友達になれるのではないかという漠然とした期待から、なんとか自分の職場へと誘導。
    その職場で、「むらさきのスカートの女」は次第に変わっていく…

    淡々とした書きぶりで、読みやすいけれど、ええ?どういうこと?という内容。
    主人公の存在感が異常に薄く、それは語り手だからなのかと思っていたらどうも様子がおかしい。職場で嫌われている描写はないものの、まったく頭数に入ってないような状態。
    「むらさきのスカートの女」が危機に瀕した時に、助け船を出すのだが…?!

    見ている相手のけっこう普通?な人生と、見守っている方がもっと常識外れ?という。
    町に噂の女性がいるのは、ありえないことではないけれど、奇妙な感覚がつきまとい、どこかシュール。
    どちらも悪意型ではないんだけど。
    飽きることなく理解できないこともなく読み切れたので、なるほど程がいいのかな…
    結末をもっと重苦しく描くことも、脱力するように描くことも出来るけど、この寓話的な味わい、絶妙なバランスと感じました。

  • スマホの速報で芥川賞受賞のニュースを見て、帰りの電車の中で電子書籍購入。

    「あひる」の今村夏子さん。3作目のノミネートでようやく受賞。おめでとうございます。

    期待どおりの不気味さ。
    歪んだ感じが非常におもしろい。読み進めるうちに、何を読んでいるんだか方向感覚が捻れていく。そして、そこはかとないショックに包まれる不思議な読後感。

    それにしても...黄色いカーディガンの女のストーカーぶりがあまりに非生産的でいたたまれない。むらさきのスカートの女への感情は、一つの愛の形と呼べるのかな?

  • 過去のアルバイト体験を題材にした作品のような気がした。

    2019年、『むらさきのスカートの女』で第161回芥川賞作品のため、気になって読んだ。
    芥川賞作品は長編でないので、気軽に読める。

    主人公は「むらさきのスカートの女」を自分と同じような性格・存在と思い、友人になりたいと願望をもちながら、静観する表現がいいのかも知れない。

    己の友人関係を振り返ると、声をかけてもらい、友人となったほうが、長く続くということが分かった。
    さらに驚くことに色々、深い話をするうちに同じような境遇だったことを知り、益々、驚いた。
    所謂、類ともだった。同じような環境下で育つと、同じような性格になってしまう。今でいう、親ガチャだった。・・・・
    反面教師として、生きている。

    本にもあるが、ちっとだけ、くすねてもいいという考えを持っている人達が立派な大人なのかと常々思う。
    間違った素振りをするが、明らかに故意、行っているので、見ているとそそくさと逃げる。
    子供たちはよく見ているので、同調せず、反面教師として、生きてほしいを願うばかり。

    あと、所長みたいな人がリアルにいるので、そこも評価ポイントかもしれない。また「むらさきのスカートの女」に間違った指導を重ねたことにより、ダメな清掃員になってしまうところも、評価されたのかもしれない。ちょっと、闇の感じがいいのか?

    主人公はこの後、更生したのかは読者に委ねられている点が本として、成立している。

    全体的イメージは「ちびまる子」調な作品で終わっている。「どらえもん」にも通じている感じ。

    読書好きな愛菜ちゃんで映画化された作品も読んでみようかと思った。おしまい。ピンピンピン(擬音)

  • すき。

    むらさきのスカートの女は明らかに様子がおかしい。
    やばいやつ。
    しかし読み進めると権藤さんもなかなかサイコ。
    だけど嫌な気がしない。
    権藤さんむらさきスカートに夢中になりすぎ。
    家なくなってまったやん。
    全部もってかれて一文無しになっちゃったじゃん。
    でもそこに怒りがない不思議。
    ふしぎふしぎ
    ふわふわしてて読み手によりどうとでも想像できる余韻と余白。

  • 不気味な腫物はどこにでもいる。相手を身体ではなく服の特徴で捉え「紫女は私の知っている誰誰に似ている」と羅列する入り方、巧い。語り手のお膳立てを機に紫女は普通の女になる。ともすれば語り手が変…影が薄すぎる。職場、女の嫌な団結力ある環境なのに、語り手はハブられるでもなく最初から数に入っていない。至近距離で紫女をずっとストーカーしているのに最後まで気付かれない。そんな語り手が、人から「黄色い〜の女」と呼ばれるのを予感する場面にはゾクッとした。最後には実際紫女の位置に語り手がいる。紫女を追い回す女は紫女になった。

    この作品では、ミイラ取りがミイラになった。だが、本の中で描かれているように、不気味な腫物はどこにでもいるし誰でもなり得る。あちら側を、遠巻きに見てネタにしているこちら側の人間も、いつの間にかあちら側にいるかもしれない。これを描くとなると、おどろおどろしい物語になりそうなものなのに。この本では、語り手の目線で淡々と日常が綴られる。なのに、読み手は不穏を、予感を禁じ得ない。私は作者の他の作品の方が好きだが、むらさきのスカートの女にしても、いったい他の誰にこんな物語が描けるだろうかと思う。すごい。

    • きよさん
      考察をぐぐると、”透明な存在である「わたし」が「むらさきのスカートの女」に知人の要素を重ね、さらに変わった存在として認識し、ストーキングして...
      考察をぐぐると、”透明な存在である「わたし」が「むらさきのスカートの女」に知人の要素を重ね、さらに変わった存在として認識し、ストーキングしていく姿は、自分も個性的になりたいと言っているようにも思えます。(https://tartom7997.net/bookreview-purple-skirt/#toc5 )”って。個性的で異常に目立つ存在に憧れる、影の薄い女の話、と読むこともできるのか。面白い。
      2020/03/30
  • 二度おいしい。
    芥川賞受賞作品。だから、純文学かと思ったら、ミステリーでもある。朴訥な語り口でどんどんと読み進めるとむらさきのスカートの女が主人公なのか、それを観察し続けるわたしが主人公なのか、なんだかわからなくなったときにある事が起きてあっという間に結末に至る。そして、二度目読み返すとあちこちに伏線が張られていたことに気づく。メチャクチャな人物像にこんな人いるの?そのメチャクチャな人物が案外マトモなことをちょいちょい思ったり、でも、的はずれな予測をしたり、つかみどころがない。よくそんなに見られているのに気づかない方もどうなんだろうとさえ思う。極悪人ではないが市井の人がやってしまう少しのズルの延長線上にいるもうちょっと濃いグレーゾーンを歩く人間の描写が上手い。

  • なんか、すごい小説。。呆気にとられつつ、あっという間に読み終わった。
    むらさきのスカートの女を、自分に近い人間(世間からはつまはじきにされた女)と思って、唯一、友達になれるのではないか、と夢を見る黄色いカーディガンの女。

    彼女の匿名性が、なくなる瞬間がクライマックスなのだけど、結局バザーに備品を売った犯人については、相変わらず匿名性を保っているのだ。
    不気味なお話。

  • 今村夏子さんの本を初めて読みましたが、何でしょう。この異質というか異様というか。
    最初、むらさきのスカートの女が町で噂の怪しい女。と思っていたら本当に怪しいのは主人公。主人公目線で書いているので最初、それに気づかない気持ち悪さ。
    嫌いじゃないです笑
    今村夏子さんの本をまた読んでみたいです。

  • じわじわくる、後を引くようなおもしろさ

  • 後味が悪い!!寝に落ちるまでずっと考えてた

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著者プロフィール

1980年広島県生まれ。2010年『あたらしい娘』で「太宰治賞」を受賞。『こちらあみ子』と改題し、同作と新作中短編「ピクニック」を収めた『こちらあみ子』で、11年に「三島由紀夫賞」受賞する。17年『あひる』で「河合隼雄物語賞」、『星の子』で「野間文芸新人賞」、19年『むらさきのスカートの女』で「芥川賞」を受賞する。

今村夏子の作品

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