ぼくたちが選べなかったことを、選びなおすために。 [Kindle]

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  • ポプラ社
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感想・レビュー・書評

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  • 2023年8月現在、著者はまだ生存されているようだ。
    岸田奈美氏の本からこの本に興味を持った。

    発病からそれをWeb公開するまでの理由、流れがとても納得のいく自然なものだった。
    公開前にも問い合わせが膨大だったのは著者の人徳によるものも大きかったのだろう。


    親世代の鬱陶しさは本当に共感した。
    それに関連してNASAの「直系家族」の定義がとてもいい。
    ロケット打ち上げ時に医療チームや支援スタッフがいる、管制塔にある特別室に入れるのはパイロットの
    ①配偶者
    ②子ども
    ③子どもの配偶者
    まで。父親、母親、兄、弟、姉、妹は含まれない。
    自分で選んだパートナーこそがファミリーの最小単位。

    いかに儒教的な価値観に日本が染まっているかを再認識させられた。
    延命治療をやりすぎなスパゲッティ症候群というワードは言葉のイメージも相まって痛烈な皮肉として日本人に刺さる。

    また、著者は当初看護師のことを医師のサポート役くらいしか思っていなかったそうだ。
    だが、親類や友人が「頑張って」という態度なのに対し、看護師は決してそうせず、どれだけの痛みに耐え、恐怖に震え、孤独や絶望と戦っているか理解し、こちらの話を聞いてくれ、病気を前提とした「これから」についてそっと背中を押してくれたそうだ。
    著者は命の恩人だと言っており、「医師とはまったく異なる専門性を持った存在」と断言している。

    肉体的にも精神的にも文字通り極限状態の人と多数かかわる職業だからこそ、そういう人の感情を理解する、寄り添えるのだろう。
    医師とは役割が違う。
    しかもその役割は医師にも負けないくらい果てしなく専門性が高いことが理解できた。


    <以下心に残った言葉を備忘録として>

    セデーション
    鎮静剤で意識レベルが下がったまま最期を迎える方法。

    人の命は、株式のようなものだ
    命は自分一人の持ち物ではない。無責任なことはできない。
    でも株式の過半数を持つのは自分

    生きるとは、「ありたい自分を選ぶこと」だ。

    がんを漢字で書くと「癌」になる。「やまいだれ」に「口が三つ」と「山」を書く。本当の意味は知らないけど周囲からたくさんの口が山ほど押し寄せる病気だとぼくは感じている。

    「心配のさきにあるのは自分が安心したいという利己的なもので、相手のことを考えているようで、考えていない」

    • shukawabestさん
      夜分遅くにすみません。shukawabestです。このエッセイ良かったですね。僕も岸田奈美さん経由で幡野さんとこの本を知りました。たぶん、ま...
      夜分遅くにすみません。shukawabestです。このエッセイ良かったですね。僕も岸田奈美さん経由で幡野さんとこの本を知りました。たぶん、また読み返すと思います。読後感も僕と同じような感じだったのでレビューを読んでいてとてもいい気持ちになりました。
      今後もよろしくお願いします。
      2023/08/15
    • W_Wさん
      コメントありがとうございます!
      共感できて嬉しいです。
      今後もよろしくお願いします!
      コメントありがとうございます!
      共感できて嬉しいです。
      今後もよろしくお願いします!
      2023/08/16
  • 真っ白の表紙が印象的です

    よくある「余命物語」ではない

    親を切る

    どうすればよかったではない

    今こそ選ぶ
    選びなおす

    大切なことが書かれていました

    電子書籍しか本棚に載せられないのは???です

    ≪ 選べ直す  家族のかたち 生きるため ≫

  • 生死にかかわる病にかかった人がどういう心境になるのか、勉強になりました。ありきたりな言葉を軽々に口にしてはいけないと感じました。
    家族は選べる、というメッセージはとても自分にはショッキングなものですが、否定はできないと思いました。自分の家族、親戚関係の今後の在り方を考えさせられました。

  • 若くしてガンになった写真家のエッセイ。
    自分の生き方、親、家族との関係色々考えさせられました。
    親と合わない部分があり、疲れを感じていたので読んで少し楽になりました。

  • がん患者周りの人間関係について話す本
    わりかしありきたりな感じになっている。

    結局人は自分の人生を生きるしかない。
    なんか知っちゃったからこその切れ味の悪さを感じる。
    3人目とか著者の別の本だとバッサリ切られているのではと思う。

    自分で選んだら忘れてしまえばいいのに色々書けるのは記憶力のいい人なんだろう。
    この本を深く読むには自分の環境が恵まれすぎているのかもしれない。

  •  病気の有無に関わらず、生きづらさを左右するものは「家族」が大きく影響している。それは、距離がとても近いからだ。家族だからといって干渉してほしくない部分はある。「親しき仲にも礼儀あり」を守ることで良好な関係が築けるものだと私は思う。家族であっても適度な距離感は大切だ。
     私も実際に経験がある。母親が過干渉で、父が寡黙。今はだいぶ柔らかくなった方だけれど、親の中に「こうでなければいけない」という理想の親像や子ども像があった印象。固定観念を多くかつ強く持っていて、かなり頭の硬い親だったと思う。
     親の価値観については、親が生きてきた生育環境や時代背景が大きく影響しているのだろう。正直、時代に沿って柔軟に考えてくれていたらとか、変化に柔軟に対応していてくれていたらとか、変化を受け入れる心の余裕を持ち合わせてくれていたら、私や姉は、もっと生きやすかったかもしれないと思う。けれど、もう二人ともすっかり大人になってしまった。後の祭りだ。
     育った環境や習慣を変えるのはなかなか難しい、もしかしたら今までの生き方を否定することになりかねない。それは誰にとっても怖いことだと思う。だから、親だけを責める気持ちにはなれない。彼らもきっとどうしたらいいのかわからなかったと思うから。自分たちが好きで作った家族、子どもだけれど、思うようにいかなくて困ったこともたくさんあっただろうから。だから私は、これからは自分で自分の人生を選んでいこうと思う。そして彼らにも、人生は自分で選んでいいのだということをわかってくれる日がきてくれたらいいなと思う。
     もう、私の中では、親は絶対的ではない。ここまで育ててくれたことには感謝している。でも親は神ではないし、絶対的でもない。今、気づけてよかったと思う。日本の家族観特有なのかわからないけれど、閉鎖的なのもよくないと思う。家族内で問題があったことを口外してはならないと教えられたことがあったけれど、じゃあこの悩みはどこに吐き出せばいいの?となる。今思うと、そういうのを素直に聞き入れる必要なんてなかったんだと思った。私は私の思うとおりに悩みを誰かに打ち明けたり、嫌だと思うことを素直に家族に告げればよかったんだと。
     家族は、何か問題が起きた時にそれまでの関係が一気に崩れる。今までなんだったんだろうという気になる。そこまでして保っていた家族とはなんなのだろうと思えてくる。本書でも言っていたけれど、人間は鏡だ。自分一人でも荒れてしまえば、そのうち家族も荒れていく。関係が近ければ近いほど影響が大きくなる。そういう性質があるということは知っておくべきなのだろう。
     通読は二回目になるが、今回は、いい距離感を保って読み進めることができたような気がする。それは自分の中で、親との関係に折り合いをつけられるようになってきたからだと思う。これは進歩だと言える。
     私の場合もそうだけれど、親が子ども以上に子どもの人生に関与しようとしてくる場合がある。その度に、私は親の人生を生きているような気になってくる。私の人生は私のもののはずなのに。私は親になったことがないし、親になるつもりもないけれど、親になるとそうなってしまうものなのかもしれない。かといって子どもの人生を自分のもののように捉えることは許されることではないと思う。
     周りを変えることはできない。ならば自分が変わるしかない。自分の人生を、自分の命を守る以外に、優先することがあるだろうか。
     本人以上に不幸に感じて、自分の不幸とすることは正しい反応じゃない。それは本人を思っての行為ではなく、自分のことしか考えていない証拠だ。本人の不幸を本当の意味で理解することは不可能だ。

  • 選びなおした家族のこと。安楽死と自殺のこと。
    今のゴタゴタが片付けたら、再読して感想書こう。

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著者プロフィール

1983年 東京生まれ。写真家。元狩猟家、血液がん患者。2004年日本写真芸術専門学校中退。2010年広告写真家高崎勉氏に師事。2011年独立、結婚。2012年狩猟免許取得。2016年息子誕生。2017年多発性骨髄腫を発病。著書に『ぼくたちが選べなかったことを、選びなおすために。』(ポプラ社)、『写真集』(ほぼ日)、『ぼくが子どものころ、ほしかった親になる。』(PHP)、『なんで僕に聞くんだろう。』『他人の悩みはひとごと、自分の悩みはおおごと。』(ともに幻冬舎)がある。

「2022年 『ラブレター』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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