教養として学んでおきたい哲学 (マイナビ新書) [Kindle]

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  •  哲学とは何か?その質問に答える明確な答えはない。
    哲学という学問は、あらゆる分野に介入し、議論する学問。
    哲学とは、常識を疑う学問、「はたして、それは本当なのか?」を問う学問である。
    「何のために生きるのか?」という質問ではなく、「なぜ生きなくてはいけないのか?」「人生に何か意味はあるのか?」ということを問う学問であり、答えを出すことではない。
    ソクラテスは、人間にとって最も大切なのはよく生きることであり、正しい生き方をしているかどうか。あるいは、どういう形で生きていくかが問題であるとしている。その場合の「正しい」とは何かも問われる。つまり、正しい生き方という答えはない。
    哲学には、ものの見方、世界観、人生観だけではない、広い分野を包括し、限定がない学問である。
    フィロソフィーは、知や知識を愛するということである。

     「人を殺してはいけない」という社会的ルールがあるが、ニーチェは、「殺しに対する禁止というのは、結局のところ根拠づけが得られない」という。
    確かに、殺人者を、裁判で死刑宣告する場合、人を殺してはいけないから人を殺すという矛盾を孕んでいる。さらに、戦争とは明かな集団的殺人であり、それを支持するということは、人を殺すことを支持している。また、戦場に向かえば、自分を守るために人を殺すということが正当化される。

     哲学とは、さまざまな学問の連関、コミュニケーションを図る学問である。
    ドゥールズは「哲学者は、概念(コンセプト)を創造する人である」と言っている。
    プラトンはイデア、カントは、超越論的主観性、ヘーゲルは精神、マルクスは剰余価値といった概念をつくった。

     哲学が活発になるのは、時代の転換点であり、そういう時代に、哲学的論議が活発化する。
    時代の考え方が根本的に変わり始める動きがあると、それを察知して言語化する。
    1930年代には、フッサールやハイデカーが生まれた。
    1970年代には、サルトル、構造主義、構造主義が生まれた。
    コロナ禍、ウクライナ侵攻という時代に、改めて哲学の論議が始まるかもしれない。

     ルネサンスの時代に、神ではなく人間を中心に据える考え方で、人間中心主義ができた。
    デジタルテクノロジーやインターネットの発達とAIの進展が始まり、
    さらに、遺伝子レベルの解明によって、生物のげのむを編集することができるようになり、
    人間中心主義から、新たな価値や意味を持った思想が生まれてくるはずなのである。

     哲学とはどんなことをするのですか?には、カントの区分がある。「私は何を知りうるか?」;認識の問題。「私は何をなすべきなのか?」;道徳の問題。「私は何を望んでよいか?」;宗教と幸福の問題。そして、人間とは何か?につながっていく。

     ヘーゲルは、ひとつの時代が終わろうとする時に、その時代を俯瞰する形で、時代が抱えてきた問題の本質を捉えようとして登場するのが哲学であり、ミネルバのフクロウという。時代の転換点に哲学が生まれる。哲学は、プラトンから始まり、問題は基本的に共通で、2500年間の間、繰り返し考えたり、論じたりする。哲学は時代によって変化してきた。ギリシャ時代は、存在論的転回であり、中世の進学的転回、近代の16世紀以降は、意識論展開と認識論的転回で、現代の20世紀では、言語論的転回であった。その縦軸に、横軸として、プラトンが理性主義・合理主義であり、アリストテレスが経験主義という対立項となる。そして、カントは「すべての知識は経験から始まるが、経験によって認識が完成するわけではない」といい、合理主義と経験主義を統一させた。それまでは、ラテン語やフランス語が使われていたが、田舎言葉のドイツ語で書いた。それが、監督と、フィヒテ、シェリング、ヘーゲルと続いて、ドイツ観念論が生まれた。

     ポストヘーゲル哲学が、マルクス主義と実存主義のニーチェとなる。20世紀になって、ドイツを中心としたマルクス主義(1970年代から社会的後退)、デンマークのキルケゴールから始まり、サルトルに繋がれた実存主義(1960年代に流行が終わった)、イギリスとアメリカから分析哲学(別名、科学哲学)という3つの潮流があった。そして、フランスでは、実存主義から、構造主義、ポスト構造主義へと発展する。その中で、言語によって認識の仕方が違ってくるということをヘーゲルが「民族精神」という言葉で説明した。20世紀の言語論的転回が始まる。そのことで、文化人類学の発展に影響した。それは、相対主義となり、さらに多様性に発展した。ニーチェは、神が死んだといい、絶対的なものはなく、物事は見る角度や方向によって違ってくるとし、絶対的な正しさはなく、すべての知識は相対的だと言った。ニーチェは「道徳的事実はなく、道徳に関する解釈があるのみだ」と言った。ニーチェは、20世紀のポストモダニズムの相対主義を準備した。
     カレーが好きですか?と聞かれて、嫌いと答えても間違いではない。どのような感情を持つかは、正しいか、正しくないかを決定できるものではない。

     アメリカは、プラグマティズムが19世紀末に生まれた。それは分析哲学の中に含まれるものであり、数学や論理学を駆使する。リチャードローティから、プラグラティズム系の分析哲学者が生まれた。プラグマティズムは経験主義であり、何が正しいかを論じるのではなく、議論そのものが役に立つかどうかで価値を決定する。極論は、役に立たないことはどうでもいい。役にたつならば、正しいか、正しくないかは決定できなくてもいいという立場となる。

     サルトルの自由という言葉に対して、1960年代から1970年代にレヴィ=ストロースは「ほんとに自由に行動できるのか?」と問いかけ、人間の自由なんてものは幻想であり、むしろ社会構造の中で決まっているといった。それに対して、デリダが、西洋中心主義と言って批判した。
     実存主義は、個人の主体的な自由を原則とした。ポスト構造主義者は、個人にはいろいろな要素があって、いろいろな組み合わせがあるとした。そのことによって、個人のあり方が変わっていく。

     AIの技術のディープラーニングが経験主義で成り立っている。そして、考えるという行為は人間のみの特権であったが、データが集められることで、考える行為ができるようになった。それが、人間の判断よりも優れたものであるというのは、将棋や囲碁で証明されている。

     マルクス主義が、ベルリンの壁が崩れ、ソビエト連邦が崩壊したことで、終わったと言われている。フランシスフクヤマは、社会主義が崩壊して、資本主義が勝ち残ったと言っている。イタリアのグラムシは、ロシア革命は資本論に反する革命であると言っている。ロシア正教をベースにしたプーチンロシアは明らかに異形の国となっている。中国においても、明らかに社会主義ではなく、社会の仕組み的には国家資本主義となっている。それ中国のトップは「新時代の中国の特色のある社会主義」と言っている。今後に、資本主義がこのまま存続するか?斉藤公平のようにマルクス主義者と言い、マルクスは環境論者だったと新しい形を提起している。シュンペーターは、資本主義は終わると言っている。しかし、どのような社会になるかが明らかではない。どういう社会を作っていくかの中で、格差、環境問題、人間の尊厳などにどう対応できる哲学が作れるかが重要なのかもしれない。しかし、哲学は役に立たないと言われていることに、きちんと回答できるか?結局は、役に立たないから哲学はいいのかもしれない。この本は、哲学のアウトラインをつかむにはいい本ですね。

  • 「この哲学者はこういうことを言っている」というような哲学史的な部分よりも、哲学を学ぶ意味などを有名な哲学者や考え方を用いて解説しているため、哲学そのものに興味がある人にとっては丁度いい入門書だと感じた。

  • これまで哲学書を読んだことがなかったが、とても読みやすかった。
    ただこの本だけでは全ては学べないので、この本で学んだ知識をもとに新しい本を読みたいと思う。

  • 哲学を学びたいが、どこから手を着ければいいか分からない、という時に読むと良い本。
    巻末のブックガイドも参考になります。

  • 哲学に関して、何から手を出していいかわからなかった自分にとっては良かったと思う。それに、アリストテレスとプラトンについて、その後の哲学者達の中でどのように2人が影響しているかが分かってよかった。
    そして、次の哲学書に手を出そうと思わせる不思議な原動力が芽生えた。

  • 自分には合わず途中で読むのをやめた。個人的には哲学入門では飲茶さんの著書が楽しく読めると思った。

  • 哲学の潮流、主要人物を時系列で学ぶにはいい。ただ、何を哲学してきたか、回りくどく書かれているのが難儀。この一冊より、こちらのYou Tubeをお勧めする。「小学生でもわかる哲学の歴史・前編」 https://youtu.be/KcuCD6vpnt0

  • 哲学入門書は何冊か読んだ。基本的に哲学とはなんぞやから始まりプラトン、アルストテレスト続く、本書も基本的にはその流れ。神学についての解説があったのが自分的には新しかった。

  • 殆ど知っている内容で退屈した。
    しかし、著者もいう通り入門書の入門であるなら。

    ただカントが相対主義のはしりだったとは。

    各コラムも楽しめた。

  • 図も年表も無く、たくさん出てくる○○○的展開が一体なんなのか、他のものとどんな違いがあるのか、一度で理解するには初心者には難しいです。巻末の初心者向け書籍リストは役に立ちそうです。

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著者プロフィール

玉川大学文学部名誉教授。九州大学大学院文学研究科単位取得退学、博士(文学)九州大学。専門分野:哲学・倫理学。主要業績:『異議あり!生命・環境倫理学』(単著、ナカニシヤ出版、2002年)、『ネオ・プラグマティズムとは何か』(単著、ナカニシヤ出版、2012年)

「2019年 『哲学は環境問題に使えるのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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